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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
序章:村人Aは学園に通う
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8.放送の後

ふと思い立った俺はまだ食事が残っていた二人を残して食堂を後にした。

そしてひとり売店に寄ってから教室に戻ると、普段あまり話さない奴が数人何故か俺の近くにやってきた。


「よお、村人A。放送聞いたよな」

「心優しい姫様に感謝しろよ。普通なら虫けらのように見られて終わりなところをわざわざ面倒みてくれてんだからな」

「色々勘違いしてたのかもしれないけど、残念だったな」

「ん?ん~、あぁ」


一瞬彼らが何を言いたかったのかイマイチ分からなかったけど、よく朝に俺が藤白と話をしてたのが気に食わなかったんだな。

別に本当に世間話程度しかしたことなかったんだけど。

まあそれでもこいつらよりは話をしていたんだから仕方ないか。

で、それが今回の放送で脈なしなのがはっきりしたから喜んでるんだ。

俺からしてみればあの放送の内容は妥当も良いところだと思ってたんだが。

なにせ良くも悪くもただのご近所さんだしな。


「まあ俺としても変な誤解で睨まれなくなったのならお姫様には感謝してるよ。

じゃあぼちぼち予鈴もなるし席に戻るよ」


そう言いながら机の上に今しがた売店で買って来たものを置いて自分の席に座った。

そのすぐ後にぱたぱたといつもより急ぎ目の足音を立てながら藤白が教室に戻って来た。

ただ、いまや藤白は時の人だ。あ、いや。放送の前から時の人か。

教室に入るなりクラスメイトに囲まれて称賛の嵐を受けていた。

やっと解放されたのはバッチリ予鈴が鳴り終わった後だ。

流石の藤白もちょっと疲れた感じで自分の席に座り、机の上に置いてあるものを見て首を傾げた。


「えっと、なにこれ」


思わずそんな言葉が出てくるって事は相当疲れてるんだな。

ならやっぱり午後の授業の前に少しでも腹に何かを入れておいた方が良いと思って買って来たのは正解だったか。

でもここで俺が買って来た事がばれたらまた面倒な噂が立つし白を切るか。


「ん、ゼリー飲料じゃないか?」

「いえ、それは分かるんですけど」

「お前の机の上に置いてあるんだからお前への差し入れだろ?

おおかた放送で時間を取られて飯食う時間が無いんじゃないかと思った誰かが気を利かせたんだろうな。

それくらいだったら授業が始まる前に飲み干せるだろうし」

「そうなんですね。ありがとうございます」

「いや、俺にお礼を言ってどうする」

「え、村基くんが差し入れてくれたんじゃないんですか?」

「俺が席に座る前には置いてあったし」

「そうなんですか?」


嘘は言ってない。

なにせ席に座る前に藤白の机の上に置いたんだからな。

藤白はどこか腑に落ちない様子だったけど、正解を探す時間は無い。


「それよりさっさと飲まないと授業始まるぞ」

「そうですね。では頂きます」


蓋を開けてちゅうちゅうとゼリーを飲み干す藤白。

その顔は教室に入ってきた時よりも幾分元気になっていた。


(はぁ。いつものお節介な妖精の仕業ってやつね。はいはい。どうもありがとう)


妖精ってのは頑張ってる奴のところに遊びに来るものだからな。

あ、俺は妖精じゃあないぞ。



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