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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第6章:さあ夏休みです!
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79.足の治療

訳が分からない状況が続いてますが、ひとまずは助かったと見て良さそうです。

それでも説明は欲しいところですが。


「えっと、聞きたい事は色々あるんだけど、その犬は村基くんの飼い犬なの?」

「いや。飼ってはいないな。

以前怪我してるところに出くわしてちょっと治療して食べ物を与えてたら懐かれたんだ」

「そ、そう」


何というか行き当たりばったりで怪我人(犬)を助けてしまうのは村基くんらしいなと思います。

そのせいで私が襲われたとも言えるし、今は助かっても居るので複雑な心境です。


「まあそれはともかく、藤白は足怪我してるんだろ?

山を下りる前に軽く応急処置だけ済ませてしまおう。

それが済んだら家まで送るよ」

「うん、ありがとう。あ、でも私、荷物を置いて来ちゃってて」

「どの辺りに?」

「えっと、向こうの崖を登ってあっちに行ったところにある子結草が生えてる広場なんだけど」


指を差しながら伝えてみたけどこれで分かるかな。

と思ったら無事に伝わったみたいです。

村基くんが何か犬たちに指示を出すと犬たちは元気よく山の中へと駆けて行ってしまいました。

多分荷物を取りに行かせたんだと思うんだけど、そんなことまで仕込むとか絶対ちょっと助けたどころじゃないですよね。


「よし、じゃあその岩に腰掛けて。怪我してるのは左足か」

「う、うん」


村基くんはその場にしゃがみ込んで私が差し出した左足にそっと手を添えたかと思ったら、素早く靴と靴下を脱がせてズボンを捲り上げてって。


「ちょ、村基くん!?」

「はいはい、患者は大人しくしてる」

「ちょっと恥ずかしいんですけど」


男子の前に素足を差し出す、いや曝け出されるのは乙女としては赤面ものです。

今は非常事態だという事は頭では分かってるんですけどね。

というか村基くんなんか手馴れてません?


「すぐ終わるから我慢してて。あとちょっと沁みるぞ」

「うん。……うぐっ」


腰にぶら下げていた水筒で足の傷口付近を洗い流した後、更に軟膏のようなものを取り出して塗る村基くんって、くぅ~~沁みる沁みる!

かと思えば今度は湿布を貼ったみたいに熱くなってきました。


「むむ、村基くん。その軟膏っぽいのは何ですか?」

「これか?この山で採れる傷に良く効く草を練って作った薬だ」

「それってもしかして快癒草ですか?」

「お、知ってるのか」


なんと快癒草で通じてしまいました。意外と有名なのかもしれません。

それにしても我が家では普通にお浸しなどにして食べてましたが、こんな使い途もあったんですね。

むしろこれが本来の使い方なのかも。


「村基くんはどこでこの草の事を知ったんですか?」

「じいさんがな。昔は植物学者だったらしくて色々と教えてくれたんだ」

「そうだったんですか」


そう言えば村基くんは元々この夏休みは祖父の墓参りに行くって言ってましたっけ。

という事はそのお祖父さんは既に他界しているんでしょうね。

こうして話している間にもなぜか携帯していた包帯を巻かれ治療は終わっていました。

靴も履き終わって準備が整ったところで犬たちも帰ってきました。

器用に2匹で籠を背負ってます。鞄は籠の中ですね。


「よしよし、よくやったな。

じゃあ藤白。ほい」

「え?」


犬たちの頭を撫でて籠を受け取った村基くんは何故か私に背を向けて屈みました。

まあ何故かも何もこの状況で何をしているのかは分かりきってますけど。


「ほれ、早く乗れ」

「もしかしておんぶですか?」

「もしかしなくてもそうだ。あ、その前に籠を背負ってもらった方がいいか。

おんぶしながら籠を持つんじゃもしもの時に困るしな」


う~、まぁ恥ずかしいとか言ってる場合じゃないですからね。

渋々籠を受け取りつつ村基くんの背中に乗り首に手を回しました。

すると村基くんはひょいっと立ち上がりました。


「よし、じゃあしっかり掴まっててくれよ」


そう言って軽い足取りのまま歩き始めました。

犬たちも隣を並走したりちょっと先を行っては待っていたりと、どうやら警備を買って出てくれてるみたいです。

なかなかに優秀ですね。

それなのになんで私のお弁当を奪っていったのかは謎です。

そんなに美味しそうに見えたのかな。



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