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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第6章:さあ夏休みです!
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77.山菜取りあるある

山に入って15分程。

周囲一帯は完全に森の中で燦燦と降り注いでいた夏の日差しも木々に遮られて穏やかになっています。

それもあって気温も山の外よりも幾分低く感じます。

なによりマイナスイオンというか空気が美味しいです。

水みたいにこの空気を都会に持っていけたら売れるんじゃないでしょうか。

余談ですがこの村にもコンビニやスーパーはありますが、ペットボトルの水を買ってる人は旅行者以外見たことがありません。

地元の人は家で汲んだ水もしくはお茶を水筒に入れて持ち運んでます。

やはり敢えて水にお金を払って買うのは都会あるあるなんですよね。

あとは外国に行けば飲用水自体が希少って国や地域もあるので、そういう意味では日本に生まれて来て良かったと思います。

閑話休題。そろそろかなと辺りを見渡せば。


「あった、快癒草」


いや正式名称ではないと思いますが、お祖母ちゃんからはそう教えてもらったんです。

曰くこの草には切り傷や擦り傷の治療を早める効能があるそうです。

他にも向こうにあるのは背伸び茸。あれを食べた子供は背が良く伸びるんだって。

……それにしては私の背はそんなに大きくは無いけど。


「もしかして別の部分が大きくなった?」


ふと窮屈になった胸に手を当てて考えてみた。

ってそんな訳ないかな。

それにそんな効能があるならEどころかGとかHとか凄いサイズになってそうだけど、私を含めて村でそんな人は見たことが無い。

だからやっぱり民間伝承というかおまじないくらいに思っておけば良いと思う。

それにしても最近は余り山に入る人はいないんだろうか。

ちょっと探しただけで山菜が籠いっぱいになってしまいそうです。

あまり採り過ぎても食べきれないし次来た時の為にそこそこ残しておくのも大事ですよね。

でもそうすると予想外に時間が余ってしまった。

ならちょっと早いけどお昼にしようかな。

この先に少し開けた場所があったはずだし。

森の中を更に10分程進めば記憶の通りぽっかり木が無い空き地みたいな場所に出ました。

そこには高さ15センチくらいの背の低い草が群生していて自然の絨毯みたいです。

ちなみにこの草の名前は「子結草(こむすびそう)」。

結婚したての夫婦にお勧めなんだって。小学生の時にそう教えてもらったんだけど、その時はよく分からなかったけど、それってつまり、こ、子作りするならって事ですよね。

食べたらどうなるのか気になるようなまだ私には早過ぎるような見てるだけでちょっとドキドキしますね。


「とにかくお弁当食べましょう」


気を取り直して籠を置いて鞄から持って来たおにぎりを取り出しました。


カサカサッ

「?」


今向こうの草藪が揺れたような。風でしょうか。

そう思った瞬間、反対側の木の影から何かが飛び出してきました。


「ガウッ!」

「きゃっ」


慌てて飛び上がって振り返れば、黒茶けた犬でした。

そう言えばおじさんが最近は野犬が出る、なんて言ってましたっけ。

なんて考えてる場合じゃない。

その犬は私が食べようと思っていたおにぎりをカプッと咥えると反対側の草藪の中へと逃げてしまいました。


「ま、待ちなさい!」


急ぎ犬の後を追って藪を飛び越えて追いかけます。

犬の後ろ姿は辛うじてまだ見える。ならまだ追いつけるかも。

……なんて考えた私が馬鹿だったみたいです。

少しもしない内に完全に見失ってしまいました。


「はぁぁ。私のお弁当……」


日光の猿山だと山でお弁当を広げたら猿に奪われたってニュースは良く聞きますが、まさかこの山でもそれも野犬にお弁当を奪われるなんて。

意気消沈しながら元の広場に戻ろうとしていた私は意識が散漫になっていたみたいです。

不意に足元が滑ったかと思えばすぐ横が崖になっていたらしく抵抗する間もなく私は崖から落ちていました。



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