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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第6章:さあ夏休みです!
74/208

74.ただいま

電車を2つとバスに乗り継ぎ合計2時間半。

バスから降りれば目の前に広がるのはのどかな田園風景。

家もまばらだし信号機なんて遠くに1つあるだけ。

この景色を見ていると帰って来たんだな~って実感できます。


「たった4カ月ほど離れていただけなんだけどね」


ホームシックって訳じゃないけどやっぱり学園に入ってからの日々が色んな意味で濃かったので酷く懐かしく感じます。

私のお祖母ちゃんの家はここから更に歩いて15分ほどしたところにあります。

近くに小川が流れていて小さい頃はよく松ぼっくりなんかを流して遊んだっけ。

時々やってくる男の子と一緒にどっちの方が速く下流の段差のところに行くか競争したりして。


「そういえばあの時の男の子は今頃どうしてるんだろう」


最後に会ったのは小学校の頃だったかな。

いっつも突然やってきて日が暮れる前にはささっと帰っちゃうからどこに住んでる子だったのかも知らない。

名前は、えっと何だっけ。うーん。あ、そうだ。確か「えっちゃん」です。

もちろん本名じゃないですが、子供の頃の話ですからね。

えっちゃん、のんちゃんって呼び合ってたんだっけ。

って、突然こんな事を思い出すのもやっぱり久しぶりに帰って来たせいですね。

言ってる間にお祖母ちゃんの家も見えてきましたし。


ガラガラガラッ

「ただ~いま~~」


勝手知ったる我が家ということで声を掛けながら玄関を開けて中に入ります。

鍵?そんなの付いてるはずないじゃないですか。

どうやら田舎あるあるらしいのだけど、基本的に家に鍵なんて掛けません。

泥棒なんて入ることないですし、仮に入ろうと思えば玄関なんて通らずに中庭の方から入り放題ですからね。

むしろ都会の今の部屋を借りた時に「外出時や就寝時は戸締りを忘れずに」って言われて驚いてしまったくらいですから。

そうして居間へと向かえばそこには進学前と何一つ変わらないお祖母ちゃんの姿がありました。


「ただいま、お祖母ちゃん」

「おやおや、どこの別嬪さんかね」

「え、やだなぁ。孫の姫乃だよ」


あれ、もしかして少し会わない内にボケちゃった?

でもメールのやり取りは普通にしてたし、大丈夫だと思ってたんだけど。

お祖母ちゃんはじぃっと私の顔を覗き込んで、ようやくポンと手を叩きました。


「おぉ姫乃だったのかい。

随分綺麗になってたからすぐには分からなかったよ。

やっぱ都会に行くと変わるもんだねぇ」


え、あ、そうか。

そう言えば今の私はいつも学校に行く時と同じような格好をしていました。

小さい頃から面倒を見てくれたお祖母ちゃんだからこそ、イメチェンした後の私は見違えて見えたんですね。

そして次にお祖母ちゃんは私の後ろを気にし出しました。


「それで彼氏は一緒じゃないのかい?」

「だから彼氏なんていないってば」

「そうなのかい?おかしいねぇ。そんなに可愛くなった姫乃なら男どもが放ってはおかないだろうに」

「うん、まぁある意味持て囃されてるかな。なぜか姫様なんてあだ名で呼ばれるようになっちゃったし」

「ほほほ。まあ話は後にして先に荷物を部屋に置いて来なさいな。

私はその間にお茶でも入れておくからね」

「うん、ありがとう」


お礼を言いつつ私は2階の自分の部屋に入りました。

そこは4か月前の記憶のまま、ほこりなどが積もっていないところを見ると定期的に掃除もしてくれてたみたいです。

あ、ただ違いと言えばなぜかベッドに枕が2つ。

もうお祖母ちゃんは。

苦笑しながら荷物を置いて居間に戻れば、既にお茶とおせんべいが用意してありました。


「さあさ、向こうに行って何があったのか詳しく聞かせておくれ」

「はいはい。えっと、じゃあまずは入学式の日の事からかな」


そうして私は当時の事を思い出しながらお祖母ちゃんに話しました。

お祖母ちゃんも終始笑顔で「そうかいそうかい」と頷きながら楽しそうで良かったです。




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