71.試験結果パート2
いつもありがとうございます。
ようやく夏休みに……入れなかった。
試験結果の返却も終わり、前回同様にランキング発表も終われば学園は夏休みムード一色です。
ランキング結果ですか?
私は3位でした。
バイトも多めに入れてましたしもっと成績下がるかなと思ってたのですがとあるマル秘ノートのお陰で効率的に勉強が出来たのが功を奏しましたね。
でもそのノートを作ってくれた本人は前回同様42位と中の上に納まっています。
あんなノートが作れるくらい頭は良いんだからもっと高得点でもおかしく無いんですけど何故なんでしょう。
まあ考えても分からないので本人に聞いてみましょう。
「何でなんですか?」
「また直球だな」
隣で一緒にランキングを見ていた村基くんが苦笑を浮かべています。
でもこの様子なら私の聞きたい事は伝わってそうです。
「何というか教科書通りの回答ってのが好きじゃないんだよ」
「好き嫌いなんですか」
「ああ。例えば数学あるだろ?
数学って聞けば公式を使って計算すれば誰がやっても正解は1つな学問だ。
だけど証明問題とかになるとものによっては幾つか正解に辿り着くまでのルートがある。
今回で言うと大問6がそれだな」
数学の大問6は今回の最終問題で確か(1)から順番に解いていくと最後の(4)の解を導きだせる問題でした。
最後に相応しい高難度だったのを覚えてます。
私は残念ながら時間切れで(4)の計算式を書いている途中で中間点だけ貰えてました。
「実はあの問題、(4)の回答を一発で出す方法があるんだ。
そうなると(1)~(3)を解くのが面倒臭くてなぁ。後回しにしてたら忘れてた」
「なんですかその天才理論」
まるで凡人には理解できない高次元の思考回路の人の発想じゃないですか。
「でもそれならどうして他の人には筋道立てて勉強を教えられるんですか?」
「いや自分の事と他の人の事は別だろ」
つまり自分の事ならいくらでも手を抜くけど、他の人の事なら気合を入れて本気でやるってことですね。
それ自分の事も本気でやれば試験だってもっと上位に組み込めるんじゃないですか。
まあそれを本人に言ったら多分面倒くさいとか興味ないとか言うんでしょうけど。
なんというか村基くんらしいです。
「あ……」
「どした?」
「いえ、なんでもないです」
一瞬、村基くんらしいなんて言えるくらい彼の事をいつも見ていた事に気付いて驚いてしまいました。
そうなんですよね。不思議と村基くんはいつも私の隣にそっと寄り添ってくれている気がします。
それが凄く自然で今まで気にも留めてませんでしたけど。
「くっ、なんてことだ!!」
ふとランキング表の前でガクリと膝をついて嘆きの叫び声をあげている生徒が1人。
それを見た瞬間。
「よし教室に戻るか」
「えぇ……」
村基くんは関わり合いたくないとばかりに踵を返しました。
なんという転身の速さでしょう。
まあ気持ちは分からなくはないですが。
なぜなら関われば面倒になるのは目に見えてますからね。
だけどそうは問屋が卸さないようです。
「ちょっと待てそこの村人A」
「……」
「ええい、待てと言ってるだろ」
「はぁ~」
さっきまで膝をついて項垂れていたはずの聖さんがいつの間にか私達を見つけてすぐ近くまで来ていました。
こちらも謎の行動の速さですね。
「えっと、9位おめでとう。凄いな俺より30位以上差があるな!」
「ああ、ありがとう。
ではなくてだ。貴様、姫様の従者のくせになんて体たらくだ。
貴様の成績が低いと姫様の評判にだって傷が付くんだぞ。分かっているのか」
え、いったい何のことでしょう。
村基くんは別に私の従者ではありませんが。
私はその事を否定しようとしましたが、それより先に村基くんが反論しました。
「安心しろ。この程度で藤白の評価には傷一つ付かないから」
「いやそこじゃなくて」
「ふっ。それにそういう偉そうなことは藤白よりも高得点を取ってから言うんだな」
「だからなんで村基くんが偉そうなの?」
まるで虎の威を借る狐のごとく胸を張る村基くん。
周囲にいる他の人の視線も若干村基くんを非難するものになってます。
小さく「ちっ。村人Aの癖に」みたいな声が聞こえて来てあまり気分も良くありません。
と、そこへ私達の会話に割って入ってくる人が居ました。
「まあまあ、ふたりとも落ち着いて」
「よお光」
「む、紅の王子か」
王子様スマイルで話しかける紅玉 光さん。
そう言えば村基くんは彼とも知り合いなんでしたっけ。
確か中学校からの仲と言ってましたが、意外と村基くんの交友関係は凄いですよね。
試験結果については数行で終わらせようと思ってたのに気が付けば1話分になってしまいました。
しかも終わりまで以前の学力試験結果の時と同じように……。
前回は村基視点で今度は藤白視点ということでお許しを。