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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第5章:テスト勉強をしよう
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67.車に乗るだけでも大変

校門まで迎えに来てくれるという事なので早速移動を開始、しようとして止められた。


「おい待て。どこに行く気だ」

「いや迎えに来てくれるんだからせめて先に行って待ってるのが礼儀かなと思ったんだけど」

「それは違う」

「え、違うんですか?」

「ああそうだ。爺やは12分32秒で来ると言った。

それなのにそれより早く俺達が待ち合わせ場所に来て待っていたら、爺やは何と思う。

きっと自分は信用するに値しなかったのだと落胆することだろう。

もちろんそんな姿を俺達に見せることは無いがな」


な、なるほど。確かに一理ある気がする。

一般庶民の感覚としては相手を待たせることが失礼に当たると考えそうだけど、お金持ちになるとまた違った常識があるのか。


「ではどうするのが一番良いんですか?」

「一番は、そうだな。

車が12分32秒で到着し、運転席を降りて後部座席の扉を開けてこちらに一礼した時に丁度我らが目の前に歩いて来てそのまま止まることなく乗り込めるのがベストだ」

「爺やさんにご挨拶とかは?」

「家に着いてからでいい。乗車前に足を止めるのは狙撃のリスクを高めるからな」

「いやここ、日本なんですけど」

「ん、知らないのか?日本人だって車から乗り降りの瞬間に狙撃されたり襲撃されるケースは多いのだぞ。

10年くらい前にも首相が狙撃されてニュースになっていただろう」

「そうですけど……」


真顔で言ってのける黒部先輩は本気で言ってるっぽい。

あ、でも、仮に黒部先輩がどこかの大企業の社長の息子とかだったら誘拐の危険性とかはある。もしくは過去にあったのかもしれない。

そう考えればこの用心深さは納得がいく。


「ちなみに普段の通学はどうしてるんですか?

車で通っている生徒が居るって話は聞いたことが無いですが」

「そこは公共交通機関を使っている。

これも社会勉強だし自分の身を自分で守れないようでは一人前とは言えないからな」


そんなことを話している間にちょうど良さそうな時間になったので、改めて移動を開始した俺達。

ただもしかしてとは思っていたけど、下校途中の他の生徒たちが校門の外を指さして騒いでいた。

その気持ちは分からなくもない。

なにせ校門のすぐ目の前に黒塗りのリムジンが停まっているのだから。

更には高級そうなスーツに身を包み白髪をオールバックにした、どこからどう見ても執事ですといった出で立ちの男性が後部座席の扉を開けて恭しく頭を下げたのだ。

しかもその頭を下げた先には黒部先輩に藤白に魚沼さんと有名人が勢ぞろいだ。


「お、おい。なんだあれ」

「黒騎士に姫様にセイレーン。ここから導かれる答えは……打ち上げパーティーか」

「間違いないな。ただそれにしては王子役が居ないが?」

「普通に考えれば別ルートで会場で合流なんじゃないか」

「そっか。それにしても俺達庶民が近所のファミレスに行ってる間に姫様たちは優雅にパーティーかぁ。

これが住む世界が違うって奴かね」

「一緒に居る奴らはなんだ?」

「あれじゃね?壁の花、もしくは賑やかし、お笑い担当的なやつ」

「なるほど。でも雑用係でも良いから一緒に行きたいよなぁ」


色々言われてるみたいだけど全部無視して車に乗り込んだ。

てかこれ。もし間違って足を止めようものなら狙撃は無いにしても周囲の奴らが俺も一緒に行きたいとか言い出したりしてパニックになってた可能性はあるな。

先頭で黒部先輩と庸一が目を光らせてたお陰で誰も話しかけては来なかったけど。

ともかく俺達全員が車に乗り込むと静かにドアが閉じられ、ほとんど振動もなく車は動き出した。





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