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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第5章:テスト勉強をしよう
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61.学校じゃ教えてくれない歴史の授業

庸一の方はこれで良いとして、ハルは、といっても歴史か。

歴史はそれこそ暗記だけの問題だからな。

ただそれでも歴史の解釈っていうのは複雑だ。


「例えばハルが苦手なのはどこだ?」

「そうですね。今回の試験範囲で言えば、なぜ日本は勝てる見込みのない太平洋戦争に乗り出したのか、とかですね」

「あぁ、あの先生ならそういう考察を述べてみろとか出しそうだな」

「はい。ですが当時の軍司令部も大国相手に勝てると考える程、無謀だったとは思えないんですよねぇ」

「まあな」


真珠湾攻撃にしろ、仮にあれが本当の意味で成功していたとしても、そのままの勢いでアメリカを攻め落とせる筈はない。

それは国力的な意味でも距離的な意味でも。

一時優勢になれたのだってアメリカが主力艦隊を移動させるのに時間が掛かったからという話もある。

軍事機密が漏れてなくても国力を考えれば保有戦力の桁が違うのは誰でも分かる。

それでも戦争に乗り出さなければならなかったのは何故か。


「これは日本だけじゃなくてアジア全体に視点を移すと見えて来るものもある」

「アジア全体?」

「魚沼さん。当時の欧米各国が東南アジアに対してどういう政策を打ち立てていたか覚えてる?」

「えっと、植民地政策、ですか?」

「正解」


イギリス、オランダ、スペイン、アメリカなどが東南アジア諸国を植民地として支配していた時代があった。

そして彼らは自分たちの利益を最優先にして元々そこに住んでいた人達を迫害して、その地の資源を搾取していった。

植民地と言いつつ自分たちの国民がそこに移住することが目的では無いのだから、それは植民と言って良いのか。


「一説には植民地政策ではなく侵略・奴隷支配政策なんて呼ばれ方もするみたいだけどな。

その時代の写真とかはネットに乗ってるから今度見てみると良いよ。

ナチスのユダヤ人迫害は、何もドイツだけが残虐な訳じゃなかったんだって分かるから。

ま、それはともかく。

その植民地政策は赤道の島を経由して次は日本も狙われていた。

中国やロシアを東から攻めるには実に都合が良い場所にあるからね。

だから日本は戦争に踏み切らなければ植民地として支配されていたかもしれない」

「植民地となれば奴隷として支配されることになっていた、だから戦った、ですか」


これは学説の1つであって本当にそうだったかどうなのかはその時の政府にしか分からないんだけどな。

俺だってネットなどから知った情報を纏めただけだし、これが正しいとも全てとも言わない。

だからちょっと考えれば穴はいっぱい見つかる。

今も魚沼さんが俺の話を聞いて手を挙げて質問を投げかけてきた。


「あの、でも結局戦争には負けましたよね。それなのになんで植民地にされなかったんでしょうか」

「それも諸説あるけどな。俺が好きな説は当時の日本の軍隊が頑張ったお陰だという話かな」

「どういう話ですか?」

「簡単に言うと、戦争を通じて日本はヤベー国だって思わせたんだ。

神風特攻しかり硫黄島しかりペリュリュー島しかり。

アメリカは圧倒的戦力を持って日本を瞬殺出来ると考えていたのに被害は甚大。

なおかつ最後の1兵になっても戦いを止めない勇猛さ。

仮に天皇を殺して日本を植民地にしようものなら、日本人は子供から老人に至るまで日本人という種が絶滅するまで抵抗を続けるかもしれない。

そうなれば自分たちの被害も恐ろしいことになったかもしれない。

だからアメリカは天皇を殺さずにGHQを置くに留めたんだ」


何度も言うけどただの俺独自の解釈、だけどな。

実際にどうだったのかは知らない。

もしかしたら日本に植民地にするだけの有益な資源が無かっただけかもしれないし。


「な、なるほど」


青葉さんや魚沼さんが凄く納得したような顔をしてるけど、なぜか関心した声は俺の右後ろから聞こえてきた。

振り返ってみればそこに居たのはあの店員さん。

どうやら一緒になって俺の話を聞いてたみたいだ。

仕事しなくて良いんだろうか。


「あ、えと。何かご注文はありますか?」


俺の視線を受けて慌ててそう言ってきたので、ポテトのお替りをお願いしておくことにした。



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