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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第5章:テスト勉強をしよう
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57.もうすぐテスト

7月に入り暑い日が続くようになった。

学園の裏庭を秘密基地(庭園と乗馬コース)にする計画は、ある意味失敗し、当初考えていたのとは違う状況になっている。

というのも、俺達は大自然の生命力をなめすぎていたんだ。

この広い裏庭をたった数人で開拓しようとしたら雑草抜きだけでも抜いた端から新たな雑草が生えてきて終わりそうに無かった。

もちろん耕耘機などの機械を導入すれば圧勝だろうけど、それはそれで負けた感じがするしな。

どうしたものかと考えていたら、意外にも解決策は藤白達から出てきた。

いや、出てきたというより湧いて出たって言った方がいいかも。


「姫様が休まれる場所を造ると聞いて」

「我等も姫様のお役に立ちたいのだ。手伝わせてくれ」


そう言って協力を申し出てくれた男子が最初は2、3人だったのに気付けばその10倍くらいに膨れ上がり、作業も急ピッチで進められる事になった。


「いやぁ、労働でかいた汗は気持ちいいなぁ」


などとのたまう男子だったけど。


「で、本音は?」

「「もちろん姫様やセイレーン様にいいとこ見せたいからだ!」」

「デスヨネー」


まぁ分かっていたことだ。

動機がどうあれ今のところ彼等は真面目に活動してるし藤白達に迷惑もかけていないから心配することもないだろう。

時々謎の筋肉アピールをしてるけど。

藤白達もそんな男子達に時々お茶を差し入れたり「頑張って下さいね」と声を掛けていて、男子としてはそれだけでやる価値があるようだ。

そんな彼等が最初に造ったのが東屋。

それまで地面にシートを敷いてお弁当を食べていた藤白達も屋根付きでゆっくり座れるとあって凄く喜んだ。

日射しを遮れるだけでも体感温度はかなり違うし日焼けも気になってたようだしな。

あ、それと一時期眠そうに登校していた藤白はペースを掴んだのか今は元気そうだ。


「来週には期末試験があるのでしっかり勉強しておくように。

30点未満は追試と夏休み返上で補習が待ってるからな。

先生だって休みたいんだ。間違っても補習なんかにならないようにな!」


帰りのHRでそんな連絡があった。

そうか、もう来週か。

普段はバイトだなんだと忙しくしてるからそういう行事に疎くなるんだよな。

あとテストで良い成績を取れっていう親も居ないし。

だけど他の奴らは違うようでテストと聞いて顔を青くしたり慌てたりしてる。

そして藁にもすがりたい奴らは当然前回のテストの成績が良かった生徒にヘルプを求める訳で。


「姫様、お願いします。勉強教えて下さい」

「あ、私もお願いします!」

「あ、俺も俺も」


良く見る光景といえばそれまでだけど、藤白の周りにはクラスメイトが集まっていた。

中には本当に勉強する気があるのか怪しい奴も混ざってるけどな。

俺のところにはいつもの庸一とハルがやってきた。


「一会は今回のテスト勉強はどうするんだ?」

「いつも通り、ほとんど一夜漬けかな」

「それで平均以上を取れるんだから凄いよな」

「一会君は本気出したら凄い人ですから」

「ハル。それは誉めてるのか?」

「僕的には大絶賛ですよ」

「そうか」


まぁ、普段から適当とか良い加減って言葉が似合う生活をしてるから強ちハルの評価は間違ってないんだけど。


「ところで、そういうふたりは大丈夫そうなのか?」

「それが1、2科目微妙かもしれん」

「僕もです」


このふたりの言う微妙っていうのはテストの山を大外ししたら赤点になるかもって話で、ミスらなければ余裕の筈だ。


「仕方ない。試験前なら部活も無いだろうし、明後日の放課後にちょっと勉強会でもするか」

「おっし」

「これで勝ったも同然というものですね」

「いやいや。油断はするなよ?」


想定外の戦の敗因は、半分くらいは油断なんだから。




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