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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第4章:姫様、お手を
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54.名刺の価値

駅に向かいながら先ほど貰った名刺をじっと見返しました。

『キヒト』というのは夢の中に出てくるあの人と同じ名前です。

まあ偶然の一致でしょうけどね。

そんな風にじっくり見ていたものだから一緒に居るふたりに目を付けられました。


「姫様、それなんですか?」

「あの人の名刺、みたいですね」

「ええーっ。キヒト様の!? 凄い。それ超レアですよ!!」


そうなんでしょうか。

ごく自然に何でもない風に渡してきたから別に珍しくも無いと思ってたんですけど。


「さっき話してたガードの硬いスタッフの最高峰がキヒト様なんです。

ネットでもあの人の攻略サイトがあって、どうすればお近づきになれるかって議論が絶えないんですよ」

「攻略サイトって恋愛ゲームじゃないんですから」

「そうですけど、でもそれくらい難易度が高いというか、人によっては5回くらい狙って通い続けて、更におねだりしてようやく名前とシフト表の入った名刺を渡してもらえたって話ですから」

「お願いすれば貰えるなら別に珍しくも無いんじゃないですか?」

「うーん、それが貰える名刺にもグレードがあるらしくて、一番低いので名前だけしか書いていないもの。続いて今月のスケジュールが載っているもの。来月まで載っているものの3段階があるそうです。

で、好感度が上がってない状態でおねだりすると名前しか載って無くて『申し訳ございません、今はそれしか持ち合わせが無いもので』なんて断られてしまうんです」

「な、なるほど」


ということは私が今持っているのは来月までのスケジュールが載ってるので最高グレードってことですね。

どこでそこまで好感を持たれたのかは謎ですけど。


「ともかく今日は誘って頂きありがとうございました。

良かったらまた誘ってください」

「こちらこそ。いやぁ明日クラスのみんなになんて言おうかな」

「うん。てっきり姫様ってこういう遊びには付いて来てくれないと思ってたから、みんなに話したら羨ましがられるね。

明日から遊びの申し込みが殺到するかも」

「あ、はは。程々にお願いします。

それに私放課後は忙しい事が多いですから」


クラスの人たちと仲良くなりたいとは思いますが、自分の時間も大事にしないといけないですからね。

そうしてふたりと別れて家路へと就いた私は、そのまま自分の部屋まで直行。

はしたないとは思いつつベッドにごろんと転がりながら改めて貰った名刺を眺めました。


『名前と2か月分のスケジュールが入ってるのが最高グレードだよ』


という話でしたね。

……あ、あれ?

表面に名前の他にチャットアプリの連絡先が載ってるんですけど。

そう言えば別れ際にいつでも連絡してきて良いみたいに言ってたけどリップサービス、ですよね。

そう思いつつも一応お礼の一言くらいは送っても良いかなと思って『今日はありがとうございました』と送ってみました。

……って1時間経っても全然既読にすらならないじゃないですか。私の緊張を返してください!

やっぱりその程度だったって事ですね。

名前が同じだったと言うのもただの偶然でしょう。

そう思って私は携帯をベッドの上に投げ捨ててお風呂に行く事にしました。

お風呂から上がって夕食を終え、明日の準備をしていた所で携帯に通知ランプが点いているのが見えました。


『こちらこそありがとうございました……』


って、キヒトさんから返信来てる!

着信時間は21時3分。


『就業中は携帯が見れず、返信が遅くなってしまい申し訳ございません……』


あ、そっか。それもそうですよね。

接客中に携帯なんて弄ってたら幻滅ものです。

名刺にも確かに就業時間は21時までって書いてあります。


『それと今後はヒメノ様とお呼びすれば良いですか?』


何で私の名前知ってるんでしょう。ってそうか。チャットの通信者の所に名前出ますもんね。

私そこに「ひめの」って登録してました。


『様はちょっと。せめて【姫乃さん】でお願いします。

あと敬語じゃなくても大丈夫ですよ』


そう返信すると今度は数秒で返ってきました。


『分かりました。では今後は姫乃さんとお呼びしますね。

あ、お店では様付けがルールみたいなところがあるのでご容赦ください。

敬語も癖みたいなものなのでこのままの方が助かります』

『それなら仕方ないですね。

ところで、この連絡先付きの名刺ってよく配ってるんですか?』


折角なので気になってたことも聞いてみました。

小森さん達が知らないだけで、実は沢山配ってるってこともありますしね。

だったらどうだって事も無いんですけど。


『いえ、実を言うと連絡先まで付いたのは姫乃さんにお渡ししたのが初めてです。

スケジュール付きまでなら何枚かお配りしていますけど』

『なぜ私に?別に常連客という訳でもないんですけど』

『勘、でしょうか。すみません、明確な回答になってなくて』


勘かぁ。

そう言われると問い詰めることも出来ないですね。

顔が気に入ったとか声が綺麗だったとかそういう分かりやすい基準だったら、別に私じゃなくても良かったんじゃないかって思えたりもしたんですけど。


『勘なら仕方ないですね。ちなみに今は何をされてるんですか?』

『今は……』


と、その後も取り留めのないやり取りを続けてしまいました。

こうしてチャットでやり取りしていると、なるほど。勘というのも分かる気がします。

だって今日初めて会ったのにこうしてやり取りが続けられて、なおかつ楽しいと思えてしまっている自分が居るのですから。




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