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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第4章:姫様、お手を
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53.執事との距離感

美味しいケーキに舌鼓を打ちつつ、執事さん達が離れたことでようやく落ち着いた感じがしてきました。

なのでちょっと気になった事を聞いてみることにします。


「あの、随分と長時間、私達だけで執事さん達を3人も独占していたようですけど大丈夫だったんでしょうか」

「え、ああ。うん。大丈夫ですよ。一応そういう接客もサービスの内に含まれているそうですから」

「それに今は他のお客がほとんど居ないですからね。運が良かったです。

流石に混んでたらここまで濃厚なサービスはして貰えないし、無理にお願いしてると面倒な客だと認識されて次回以降の対応が疎遠になることもあるらしいですよ」


実際に敬遠されるようになってしまった女性が腹いせに悪口をSNSなどに投稿してしまい、他の人から叩かれて炎上したことが何度かあったみたいです。

また何処かの動画配信者がネタでわざと敬遠されるようなことをしたときは完全に門前払いにされたそうです。


「あと時々本気で好きになっちゃって追っかけを通り越してストーカーになっちゃったり」

「他の女性客への応対をみて嫉妬して割り込んだり邪魔したりとかね」

「うわぁ」


うーん、確かにあそこまで執事というよりホストっぽいことをされると勘違いする人も出てきそうです。

かと言って適度な距離を空けて接するというのも難しいだろうとは思います。

その辺りの匙加減を間違えると最悪背中を刺されるとか、優雅に見えて意外とハードな仕事ですね。

今も入口の方を見れば私達より年上っぽい女性4人組が入店してきて、先ほど私の相手をしてくれた執事さんが1人で案内をしています。

あ、そのうちの1人が「あ、あの。手を引いて貰えますか?」って顔を赤くして手を差し出せば執事さんも「喜んで」って答えて優しく手を引いていきます。

後をついていく3人はどことなくニヤニヤしていることから、最初からあの人が手を繋ぐことで合意が取れていたのかもしれないですね。

でもそっか。

あの執事さんもお願いしたら手とか握ってくれるんだ。


「にやにや」

「ニヤニヤ」

「ほぇ?」


ぼーっと執事さんの動きを目で追っていたら、いつの間にか大林さんと小森さんが私を見てニヤニヤと口に出して笑っています。


「な、何か」

「いえいえ。姫様も私達とおなじ女の子なんだなと安心したところです」

「え、いえ。別に私はあの人の事が気になるとか言う訳では無いんですけど」

「あの人?私達別に誰かの話なんてしてませんけどぉ?」

「あっ」


これは墓穴を掘りましたね完全に。

ふたりのにやにやが更に強まったのがよく分かります。


「流石姫様、お目が高い。

あの人、昼の部では人気No.1なんですよ」

「そうなんですか?」

「はい。ガードの高さという意味でもNo.1らしいですけど」


あ、それは分かります。

何というか公私は完全に分けてるタイプだと思います。

公私というか主人と召使いって感じですけど。


「そうそう。さっきの話に戻るけど、こういうお店ってどうしても恋愛的なトラブルが多いでしょ?

だからスタッフの側からも気に入った相手にはそれが分かる何かを渡すんだって」

「何かって何ですか?」

「さあ、人によって違うらしいよ。

名刺だったりちょっとしたアクセサリーだったりね。

あ、アクセサリーの場合は次回着けてきたら、多少忙しくてもその人が応対してくれるようになるんだって」

「客を贔屓するって言ったら聞こえが悪いけどね。

逆にそう言うのが貰えていない内は片想いなんだって納得できるって寸法なの」

「それは確かに分かりやすいですね。

と、混んできたしそろそろ出ましょうか」


時計を見ればいつの間にか1時間近く経ってましたし良い頃合いでしょう。

私達が席を立つと最初に対応してくれた3人がそれぞれ挨拶に来てくれて、あ、レジは私に付いてくれた執事さんがやってくれるみたいです。

ケーキセットで1500円はちょっと割高で学生が頻繁に通うにはちょっと厳しいかもしれないですね。

小森さん達は2000円って私より高いのは何故?


「あはは、まあ追加サービスはただじゃないってことですね」


カウンター横に置いてあったパンフレットを開けばそれらのサービスについても色々書いてありました。

あの「はい、あーん」は実は500円もしたんですね。

あれをお金出してもやりたいとか、正直感心してしまいます。

次来た時にやるかと聞かれても丁重にお断りしましょう。


「いってらっしゃいませ。お嬢様。お早いお帰りをお待ちしております」


入店した時はお帰りなさいだったから出るときはいってらっしゃいになるのか。

玄関先まで見送りに来てくれた執事さんを感心しながらみてると、ふと胸元から何かを取り出して私に差し出してきました。


「宜しければこちらをお持ちください。

赤丸が付いている日はこちらに居ますし、それ以外でもいつでも気軽にご連絡ください」


渡されたのは名刺でした。

表には名前と連絡先。裏には今月来月のカレンダーがあって週に3,4日は赤丸が付いていました。

つまり良かったら自分がいる日を選んで来てくれたら嬉しいってことらしい。

私は何気なく表面を見返して、彼の名前を確認した。


「って、キヒト?」

「はい。こちらではそう呼ばれています」

「そ、そうですか」


こちらではってことは本名では無いという事でしょう。

私は驚く心臓を押さえつけつつ、その場を後にしました。



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