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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第4章:姫様、お手を
52/208

52.イケメンでもちょっと

私から遅れること10分程してようやく注文が終わったようです。

ふたりの様子はと言えば既にお腹いっぱいって感じですね。


「おふたりは良くこのお店に来るんですか?」

「ううん、私はまだ2回目です」

「私は3回目、だったかな」


意外です。

てっきり毎日のように通っているのかと思ってました。


「そうなんですね。それにしては凄く親しげでしたけど」

「あははー。イケメンを間近で見られるって良いよねー」

「うんうん。私のこと覚えててくれて『また会えて嬉しい』って真剣な顔で言われた時は顔から火が出そうだったよぉ」


ふむ。つまり初回の応対が上手く行けばその人が専属みたいな感じで今後も着いてくれてリピーターを狙う戦略なのかもしれません。

と冷静に分析している場合なのでしょうか。


「それよりも姫様の方はどうだったの?」

「あ、気になる!

なんか距離がある感じだったけど、もしかしてこういうお店ダメだった?」

「いえ、驚きはしましたけどダメな事は無いですよ。

先程の執事さんも適切な距離を保ってくれてただけですから」

「流石姫様。貞操観念がしっかりしてるというか、姫様ともなるとイケメンを見慣れてるのかな」

「もしくはまだまだこの程度では姫様には釣り合わないとか?」

「そんなことないですよ。

私だっておふたりとそれ程変わりありませんから」


強いて言えば夢の中で見慣れてるくらいですね。

話が一段落したところでお茶とケーキが運ばれてきました。


「どうぞ」


私の前にそっと置かれたのは淡いピンク色の可愛いケーキと空のカップ。そこから流れるようにポットから乳白色の液体が注がれました。


「これは?」

「さくらんぼのケーキとロイヤルミルクティーです」


なるほど。シンプルで分かりやすい。

ここで事細かにケーキの拘りについて紹介とかならなくて安心です。

強いて言えばお茶はハーブティーの方が好みですがそこまで当てることは出来なかったみたいですね。


「なぜこのチョイスなのか聞いても良いですか?」

「もちろんです。

私がお見受けしたところ、お嬢様は季節の味を好まれるのではないかと感じました。

その上で他にも季節ものはありましたがクリームやチョコの強い甘味より、果物の自然な甘味を楽しめるこちらをお出しさせて頂きました。

お茶は単体であれば当店オリジナルのハーブティーも良かったのですが、ケーキと合わせた場合を考えてこちらにしました」


そっか。ハーブティーは独特の味と香りがあるからケーキとバッティングしてしまうんですね。

その点このミルクティーであれば香りも抑えめですしケーキ本来の味を楽しめそうです。


「それではどうぞごゆっくりお寛ぎ下さい」

「はい」

「あ、姫様ちょっと待って」

「?」


お茶の用意を終えて執事さんが下がろうとしたところで小森さんから待ったが掛かりました。

何か見落としがあったでしょうか。


「このお店のサービスでね。

一口目は食べさせて貰うってのがあるんですよ。

いわゆる『はい、あーん』ですね」

「そうそう。実演するとこんな感じ」


そう言いつつ大林さんが隣に立つ執事に目配せすれば心得ておりますと言わんばかりにフォークを手に取り一口分のケーキを掬い上げると、そのまま大林さんの口元へと運ばれていきます。

それを幸せそうにパクリと食べて執事と目を合わせて頬を染めた。

横で見てる分には幸せそうなんですけど、じゃあやるかと聞かれたら。


「……」

「……」


うん、とてもじゃないけど無理。

それは一体どんな羞恥プレイですか。

周りに女性と執事しか居ないと言っても何を好き好んでそんなことをしなければならないのか。

私と目を合わせた執事さんもにっこりとほほ笑むと静かにフェードアウトして行きました。

あ、今更ですけど足音が一切してないですね。

やっぱり執事というものはそういうもの、と言いたいところですが他の2人は普通に足音を立ててます。



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