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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第4章:姫様、お手を
51/208

51.執事の必要技能のようです

私の問いかけに、その執事さんは静かに拍手をした。


「さすがお嬢様。ご慧眼恐れ入ります」

「いえ、誉めてほしい訳ではなく説明をお願いします」


私の雰囲気にそれまでふわふわしていたふたりもちょっと緊張、というより何が始まるんだろうかとワクワクしているような気がします。


「お嬢様のご指摘通り、私共はお嬢様に合わせて対応を変えております。

ですが決して上下の差別をすることはございません」

「そうなのですか?」

「はい。私共は個人の裁量でお迎えしたお嬢様が最も好まれることを推測し、行動させて頂いております。

もちろんその推察が間違っていることもありますが。

例えばこの水ですが、キンキンに冷えたものと多少冷たいと感じる程度のものだとどちらをお望みでしたか?」


言われて考える。

外は暑かったとはいえ、店内に入って多少汗も引きました。

それに普段から冷たすぎる飲み物は胃に負担を与えるので控えているのも確かです。

でもそれをこの執事さんが知っている筈がありません。

まさかこの短時間で私の好みを見極めたと言うのでしょうか。


「じゃあ入口からここまで私だけ手を引かれなかったのもそうなのですか?」

「お嬢様は初見の男性に手を引かれるのを好まないのではないかとお見受けしました」

「あ、確かに」


嫌という程ではないけど、嬉しいかと聞かれたらそんなこともありません。

どちらかと言えば馴れ馴れしいなと思っていたかも。

そこまで聞いて納得出来た私はコップを手にとって水を飲みました。

なるほど。言われた通り私にとって飲みやすい温度です。

それにただの水ではなくレモン水のようなスッキリした風味がさらに気分を落ち着けてくれます。


「ご説明ありがとうございます」

「納得頂けたようで安心致しました。

もしご不快な点が御座いましたら今後も直ぐにお申し付け下さい」


今改めて見れば彼の声の大きさも距離感も他のふたりとは違って、あっちは息がかかる程の距離で囁いてるのに対し、私の執事さんは半歩空けつつ他のふたりにも聞こえる程度の音量で話している。

これら全てが意図して行われているのだとしたら凄いことだ。

話が一段落したところでそっと差し出されるメニュー表を出す速度もきっと私が受け取り易いようにと配慮してくれてます。

さて、落ち着いた所でメニュー表を見れば、なるほど。

確かに普通のカフェよりも割高ですね。

でもここまでの行き届いたサービスを考えれば納得も出来ます。

幾つかの定番のスイーツとドリンクの一覧とケーキセット。ここに載ってないケーキもショーケースから選ぶ事が出来るみたいです。

それと『お勧めケーキセット』。


「このお勧めケーキセットというのは?」

「はい。僭越ながら私共から本日のお嬢様に合うと思われるケーキとドリンクをご提案させて頂くコースとなっております。

提案された後から変更も可能ですので、ちょっとしたお遊び程度に考えて頂ければ十分です」


つまり執事さんが見事自分の好みを言い当てられるかテストするんですね。

それはそれで面白そうなのですが、折角なのでちょっといじわるを言ってみましょう。


「それでは、お任せケーキセットでお願いします」

「っ、畏まりました」


ふふっ。一瞬驚かせる事に成功しました。

実はメニューにあるのはお勧めケーキセットはありますが、お任せケーキセットなんて無いんです。

でも言葉の意味から考えて「お勧め」が執事さんが勧めてくれたものをこちらでジャッジするのなら「お任せ」は執事さんに全て任せるということ。

私に確認すること無く、ちゃんと私の期待に応えたチョイスをしてください。もちろん出来ますよね?と言うことです。

ここで外すようでは一流の執事とは言えませんから、お勧めよりもプレッシャーが掛かることでしょう。

頑張って下さい。

他のふたりはと言えば、対応している執事とあれはどうかこれはどうかと色々と話をしています。いや、甘えていると言った方が近い感じですね。

ふむふむ。

あれを私がやられたら……ドン引きしてたと思います。


余談ですが、

今回の執事喫茶の話には別ルートがあって、藤白の相手をキヒトと名乗る赤の他人でナンパ野郎がする、なんて話もありました。

そこからナンパ野郎に襲われそうになる藤白を一会が救い出すような。


しかし、山場が出来るのは良いのですが、本作のほのぼのした雰囲気から逸脱し過ぎということでお流れになりました。

今後も引き続き緩やかに距離を詰めつつ仲良くなっていく予定の主人公たちです。


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