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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第3章:変わりゆく周囲
45/208

45.学園のアイドル

土日を挟んで月曜日。

早めに登校した俺達は先日の成果を確認しあっていた。


「ふたりとも首尾は?」

「俺の方は一応青葉さんの最近の悩みは聞き出せた。と言っても若干荒唐無稽な内容だけどな」

「ふむ。ハルの方は?」

「根回しは既に済んでいます。

後は昼休みを待つばかりですね」


よしよし。どっちも順調だな。

と言いたい所だけど、ハルの方は問題ありか。


「ほらハル。そんなに気になるなら見に行ってこい」

「あぁうん。じゃあちょっと行ってくるよ」


そそくさと教室を出ていくハルを見送る俺達。

全く別にここからでも段々と近付いてくる男子の驚愕の声を聞けば問題ないのは分かるだろうに。


「じゃあまた昼休みにね」

「はい、藤白さん」


騒動の原因の片割れの藤白が教室に入れば途端にクラスメイト達が彼女を取り囲んだ。


「姫様おはようございます」

「はい、おはようございます」

「あの先ほどお隣にいた女子はどなたですか?

姫様以外にあんな可愛い子居ましたっけ」


おぉ、質問しつつもちゃんと藤白のことも持ち上げるとはやるなあいつ。

藤白はその男子の質問に嬉しそうに答える。


「はい。私のお友達です」


完璧なお姫様スマイルと共に語られた友達の二文字。

それがどれ程の威力を持っているのかは計り知れない。

ここでいじめの話を持ち出せば魔女狩りの如く男子達が犯人探しに飛び出していった事だろう。

ただそこまではやり過ぎと思ったのか、藤白はそれ以上は言わなかった。


「よっ、おはよ」

「おはようございます。村基くん」


自分の席の所まで来た藤白にいつも通り挨拶をする。

まぁ周囲はどうあれ俺達はいつも通りだ。

それを見た、恐らく先週の放課後の騒ぎを知ってる連中は特に何事も無かったんだと胸を撫で下ろしている。


そして昼休み。

俺達、藤白や青葉さん魚沼さんも一緒に学食でテーブルを囲んでいた。

そこへお昼の校内放送が流れてきた。


『皆さんこんにちは。

今日は元々の予定を変更して、今1年生の間で話題沸騰中のあの生徒についてのビッグニュースです!

なお、お伝えする内容は事前に本人に許可を得て居ますのでご安心下さい。


さて、その生徒とは1年E組の魚沼 謡子さんです!』


「え、だれ?」

「ほら、先週まで前髪伸ばして暗めな子がいたじゃん」

「え、ああ。なんか居たねぇ」


その放送を聞いた周囲の反応はマチマチだ。

なにせ先週まではほぼ無名でどちらかと言えば悪く言われる方が多かったくらいだ。


『今までは地味で人付き合いも苦手だった彼女ですが、先週末にC組の姫様の紹介でイメチェンをした結果、見事男子なら三度見間違いなしの美少女に大変身を果たしました。

その姿を見に行く方は周囲と本人の迷惑にならないようにお気をつけ下さい。


さて、ここまでの話だとそんな彼女の魅力を引き出した姫様が凄かっただけではないかと思う方も居るでしょう。

そんな方々を黙らせる秘密兵器が今私の手元にあります。

さあ騙されたと思って息を潜めてご静聴しやがれです!』


若干興奮した声のあとに流れて来たのはカラオケボックスで録音した魚沼さんの歌声だ。

その瞬間、校内から雑音が消えた。

誰ひとり話をする人はなく、誰ひとり手も足も動かすことなく、ただただスピーカーから流れてくる歌声に耳を傾ける。

歌声が止むと代わりに鳴り響く拍手と歓声がどれだけ学園生の心を掴んだかを証明していた。

3分27秒。

たったそれだけの時間で魚沼さんは全学園生を魅了してしまった。

まぁ、当の本人は自分の歌声が公開されたことで真っ赤になって縮こまってるんだけどな。

そして放送はまだ終わらない。


『さて皆さん。彼女からお預かりしている歌はまだ2曲有るわけですが、その前に!

今の歌声に心を動かされた皆さん。我が校の伝統に則って彼女にあだ名を贈りたいと思いますが如何でしょうかっと、言ってるそばから応募が殺到しています。

えー「歌姫」そのままですね。「俺の嫁」?死んでください。はい次。

「人魚姫」ふむふむ華麗なイメチェンに成功したこととも掛けてるんですね。

ですが何よりも歌声ひとつで私達を魅了してしまった彼女にはこちら。

「セイレーン」の銘を贈りたいと思います!』

「「わああぁぁ」」


放送の宣言に再び上がる歓声。

みんなノリが良いというかテンション高いというか。


「これ午後の授業大丈夫かな」

「あはは。その心配を今してるのは村基くんだけだと思いますよ」


俺の呟きに藤白が苦笑を返してきた。




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