43.放課後に遊びに行こう
無事に全員の予定を調整できた放課後。
俺達はともかく青葉さん達はクラスが違うので校門のところで待ち合わせにしたんだけど、早くも問題が起きていた。
通りがかる誰もが藤白を見て足を止めるのだ。
「おい、見ろよ。姫様が居るぜ。誰か待ってるみたいだけどもしかして俺か」
「ばか。んな訳ねえだろ。あれは俺の事を待ってるんだよ」
「妄想乙~」
「ってか声かけて良いのかな」
そんな奴らばっかりだから俺達が交通整理をすることになる。
「はいそこ、止まらないで」
「姫様は見せ物ではありません」
「はい散って散って」
ただ俺達がそんなことしてると突っかかてくる奴もいる。
「おい、お前ら誰だ!見ない顔だな。
姫様ファンクラブのメンバーなら会員証を見せろ。
先に言っておくが俺は会員No.37だ」
ドヤ顔でそう言うのは恐らく3年の先輩。
いちおう庸一達にも確認してみるが、もちろん俺達はそのファンクラブには入っていない。
それと学園内での知名度で言えば不本意だけど俺の方が上だ。こう見えて村人Aなんだけど。
「先輩。俺達は彼女のクラスメイトです。
言うなれば友人A?俺は村人Aって呼ばれてますけど」
「村人Aだかなんだか知らないが、たかがクラスメイトならその場を譲ってもらおう。
姫様をお守りするのは俺達ファンクラブの役目だ」
「いえお断りします」
「なんだと!?」
憤る先輩は今にも掴みかかってきそうだ。
これは最悪物理的にご退場頂くことになるか。
そう思ったところでハルから助け舟が出た。
「ファンクラブ規則第3条『姫様の行動を阻害してはならない』。
第7条『不用意に姫様に近づいてはならない』。
第9条『姫様の事は影ながら応援すべし』。
だそうですよ先輩」
「ぐっ」
ハルが言ったのは恐らく藤白のファンクラブの規則なのだろう。
なんでそんなものを知ってるのか凄い疑問だけどハルだからなぁ。
そしてそこに藤白も援護してくれた。
「すみません。私お友達と待ち合わせをしているだけなんです。
すぐ来ると思いますのでどうぞお気になさらないでください」
「い、いえいえそんな。
姫様はどうか頭を下げないでください」
藤白に言われて恐縮しまくりの先輩。
まぁ悪い人では無いんだろうな。
そうこうしている間に待ち人も来たようだ。
「お待たせしました」
「すみません、遅くなりました」
若干急ぎ気味で駆け寄ってくる青葉さんと魚沼さん。
まあこの騒動をみれば慌てもするか。
そしてこれ以上ここに居ても騒ぎが大きくなるだけなので俺達は早々に場所を移す事にした。
駅前のカラオケボックスに入りセルフサービスのドリンクを持ってちょっと広めの個室に入る。
「さて、俺達は全員分かるけど、女子は初対面の子もいるからまずは自己紹介かな。
俺はC組の村基一会だ」
俺が最初に名乗り上げ、順番に自己紹介を終えた後、早速今日の本題へと入ることにした。
「実は今日集まって貰ったのは親睦を深めようって意図の他にもうひとつ目的があるんだ」
「そうなんですか?」
「ああ。という訳で魚沼さん。
トップバッターで自分の好きな曲を1曲歌って」
「わ、分かりました」
俺からおっかなびっくりマイクを受け取りつつ、入力端末を前にした魚沼さんは、迷うことなく6桁の数字を入力した。
それを見て一様に驚く俺達。
「え、もしかしてコード暗記してるの?」
「はい。と言っても好きな曲いくつかだけ、ですけど」
代表して青葉さんが聞けば事も無げに答える魚沼さん。
そして流れてきた曲は3年前に流行った曲でCMやドラマの主題歌にも使われた有名なもの。
ここにいる全員が知ってるだろうしテンポも良くて乗りやすい。
ついつい合いの手を入れたくなるが、そこはじっと我慢して貰って1曲を歌い終えるのを待った。
「……あなた~に~♪」
無事に伴奏も終わった所でリアクションを解禁すれば、部屋中に拍手が響き渡り、藤白と青葉さんが興奮気味に魚沼さんに話し掛けた。
「魚沼さん凄い上手。もう聞き入っちゃいました」
「ほんと。プロの歌手でも行けそうです!」
「あ、ありがとう、ございます」
あまりの勢いにちょっと押され気味だ。
俺の隣ではハルが嬉しそうにうんうんと頷いてる。