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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第3章:変わりゆく周囲
42/208

42.付き合ってほしいんだ

さて、魚沼さんに手を貸すことは決まった。

俺の考えが合っていれば彼女をいじめから救い出すのはそれほど難しい話ではないはずだ。

だけど今のままでは確実とは言えない。

確実にやろうと思ったら今計画していることが失敗に終わっても「こんなこともあろうかと」と別の計画を、それも並行して進めていく事が肝心だ。

全ての計画が上手く行けば120点の大成功だし、どれか1つでも成功とまでは行かなくても失敗しなければいじめくらいは吹き飛ばせるはず。

その為に俺は一肌脱ぐことにした。

俺は帰りのHRが終わり、先生が教室から出たのを見計らって隣の席に声を掛けた。


「藤白。付き合ってほしいんだ」

「…………へ?」


俺がそう言った瞬間、教室中から音が消えた。

ん、なんだ?

なぜか藤白は固まってるし、ほかの皆もおばけでも出たかのように俺の方を見ている。

と、そこで俺はようやく自分の失言に気が付いた。


「あーすまん。誤解を招く表現だった。告白とかじゃなくてな。

ちょっと相談したい事があるんだ。この後急ぐ用があるなら歩きながらでも良いから少し話せないか?」

「あ、そういうことなら。うん。大丈夫です」


俺が言い直すと、周りはなんだ告白じゃないのかよと平常運転に戻って行った。

いや流石に教室のど真ん中で告白する度胸は俺でも無いぞ。

それでも一部の女子は意味深な目でこっちを見てるけど違うから。

兎も角俺は藤白と一緒に教室を出た。

途中で他の生徒たちに見られるが、時々通学時に一緒に歩いているところを見られているので今更大きな問題にはならない。


「おい見ろよ。姫様だ。今日も可愛いな~」

「隣に居るのは何だっけ。従者?」

「え、俺は下僕って聞いたけど」

「馬鹿だなぁ。下僕なんて侍らせてたら姫様の品格が疑われるだろ。奴隷だろ奴隷」

「いやお前こそアホだろ」


そこかしこからそんな声が聞こえてくるが断じておれは奴隷では無いぞ。

まあどう言われても実害が無いなら気にしないけどさ。

俺の知名度なんてそんなものだ。

校門を抜けて周囲の生徒がまばらになったところで俺は話を切り出すことにした。


「話って言うのは、近いうち、出来れば今週とか来週に放課後空いてる日って無いか?

良かったらカラオケに付き合ってほしいだけど」


俺がそう言うと、藤白は難しい顔をして聞いてきた。


「明後日なら空いてますけど、それってもしかして2人で、ですか?」


これは若干警戒されている?

藤白の学園でのモテっぷりを考えれば仕方ない事ではあるけど、俺はそんなナンパな男に思われているんだろうか。

まあ無警戒よりは断然良いんだけどな。


「いや、他に庸一とハルと、あと青葉さんは分かるか?あの体育祭の時の馬術部の子」

「はい、青葉さんなら分かります」

「うん。そのほかにもう1人女子を呼んで計6人の予定だ」

「それなら、はい。大丈夫です。

でもどうしたんですか、突然。

村基くんってそういう遊びに積極的に行く人には見えなかったのでちょっと驚きました」

「まあそうだよな」


もしかしたら警戒というより意外に思われていただけか?あまり変わらないかもしれないけど。

さて、こうして藤白を誘ってるのに裏が無いのかと言われたらそんなことは無い。

でもそれを正直に藤白に言ってしまって良いものか。

いや、何となくだけど藤白には下手な隠し事はしない方が良い気がするな。よし。


「実はな。そのもう一人誘うって言ってる女子なんだけど、今校内でいじめにあってるみたいなんだ」

「えっ」

「で、そのいじめから開放しようと思った時に何が効果的かと言えば」

「あ。私のネームバリュー?」

「そういうこと」


要するにこの子は姫様のご友人だぞってアピールする訳だ。

お前達姫様のご友人をいじめるとどうなるか分かってるんだろうなと言外に圧力を掛ける。

そこまでしなくても校内で親し気に藤白と話をする姿を見せるだけで周囲は魚沼さんに一目置くことになるだろう。


「あ、もちろん藤白に負担になるようなことは求めないから安心してくれ。

そのカラオケに1回一緒に遊びに行って、気に入らなかったらそれでお別れで良い。

無理に友達になってあげてくれとも言わないし、どう転んでもいじめ問題は俺達、というよりハルとその子が頑張って何とかするから、藤白は自然体で何も気に病むことは無いから」

「う、うん。その子はこの事を知ってるんですか?」

「いや、単純に友達と一緒にカラオケに行くからとしか伝えてない」

「そうなんだ」

「それで、改めて確認だけど良いか?こっちの一方的な都合で利用させてもらうような形なんだけど」

「うん、それは大丈夫です。むしろ私からもお願いしたいかな。

なにせ姫様なんて呼ばれてるせいで皆から距離を置かれてるみたいで、最近では声を掛けられると言ったら知らない男子からの告白ばかりなんです」


それは何というかご愁傷様としか言いようが無い。

でも遊びに誘われないのは最初の頃に何度か誘いを断ってたからじゃないかな。

まあそれは誘う方が藤白の都合も考えずに今日遊びに行こうって誘ってたのが原因だと思うけど。

藤白は教室で孤立している訳じゃないんだけど、特別仲が良い友達ってのも居ないみたいだからな。

これを切っ掛けにそう言うのが出来たら良いなって考えてるのかもしれない。



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