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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第3章:変わりゆく周囲
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40.いじめを無くす方法

いじめを無くす方法はいくつかあると思っている。

その一つはいじめる人を物理的にでも社会的にでも抹殺することだ。

だけど剣と魔法のファンタジーな世界なら人の命も軽く見られていたから、明日何人かの学生が学園から姿を消しても大事にならないのかもしれないけど、現実ではそうはいかない。

かと言って社会的に、つまり何らかの方法で退学に持ち込むというのもいじめ程度では難しい。罪を捏造するというのも出来なくはないと思うが。

よってこれらの方法は本当の意味で最後の手段だ。

それ以外の方法はと言えば。

と考える前に俺は一つ疑問を解消することにした。


「そういえばハル。一つ聞いても良いか?」

「はい、なんでしょう」

「ハルにしては積極的に解決を望んでいるように見えるんだけど何か理由があるのか?」

「え、あー」


若干目を逸らすハル。

なんかさっき同じようなリアクションを見た気がするぞ。

ともかくハルがここまで自主的に他人の事情に首を突っ込むのは実は珍しい。

普段であればいじめを見つけたと言ってもそれとなく解決するように周囲に働きかけるだけだと思う。

その場合、年内に解決すれば良いかなってくらい時間がかかるけど、それでもハルなら自力で解決できるだろう。

しかしこうして俺に相談してきたってことは出来るだけ早い解決を望んでいるってことで、そこにはきっとハルなりの理由があると思うんだ。


「もしかして言いにくいことか?」

「いえ。本人からあまり言いふらさないで欲しいと言われているだけなので、一会君と庸一君になら話しても大丈夫かと思います」

「そうか」


俺も庸一も口は堅い方だ。

友人の知られたくない話という事ならどんなに金を積まれても話さない自信がある。


「それで?」

「はい。実は彼女、裏庭で一人で居る時によく鼻歌を歌ってるんです」

「ふむ」


鼻歌くらいなら俺だって風呂場とかで歌ったりしてる。

それがどうしたんだろう。

あ、でも内気な女子って話だったし、他人に聞かれるのは恥ずかしいか。


「その歌声がすごく綺麗だったんです。

出来る事ならいじめなんていうくだらない理由で曇らせたくないくらいに」

「なるほど。つまりハルは彼女の歌声に魅了されてしまった訳だな」

「魅了。そうとも言えるかもしれません」


鼻歌ひとつでここまでハルを夢中にさせられるっていうのは凄い才能だな。

こうやって熱く語るハルは恋する少年というよりもアイドルの卵を見つけたプロデューサーの目をしている気がする。

俺としてはどっちでも良いわけだけど。

ただ庸一もだけどハルだって中学までは女子には一切興味がなかったのに高校に入って2カ月ちょっとでここまで変わるっていうのは凄いな。

好ましい変化ではあるし応援することに否やはない。


「でもそうか。それなら案外簡単に解決するかもしれないな」

「本当ですか!?」

「ああ。ただし頑張るのは俺たちじゃなくてその子自身だ。

その子に本気で現状を打開する覚悟があるなら手伝うし、無いならそれまでだ」


残念ながら俺達は仏でもなければ聖者でもない。

困っている人には誰にでも手を差し伸べる程、善人ではないと自負している。

もちろん助かりたいと願いその為に努力する人は応援したくなるけど、他人に依存して動かないような奴まで助ける義理は無い。


「分かりました。そこは僕に任せてください」


力強くうなずくハルだって強引にその子をどうこうすることは無いだろう。

それでも頑張りたくなるように背中を押し発破をかけることは出来る。

最終的にその子が動くかどうかはその子の気持ちとハルの熱意に掛かっているだろう。

つまりその子は立ち上がるし自分の力でいじめを無くせる。

その子の事は見たことすらないけど、俺達はハルを信じているからな。

だから俺は既にそのいじめを解決する方向で頭を回転させた。


「よし、じゃあ俺が考えた作戦を伝えるぞ」


いじめを無くす方法はいくつかある。

そのうちの一つはいじめられている子をいじめられないくらい強くしてしまうことだ。

それはいじめてくる連中を返り討ちに出来る武力を身に付けたり強力な助っ人を手に入れたりと色々あるが、ここは英伝学園だ。

ならこの学園らしい方法で解決しようじゃないか。



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