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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
序章:村人Aは学園に通う
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4.放課後のバイト

放課後になり、藤白は荷物を纏めると急いで教室を出て行った。

どうやら本当に今日は予定が詰まっていたらしい。

ちなみに例のラブレターの彼にはどこをどう曲がって伝わったのか顔も見たくないと振られたことになっていた。

しかも姫様を困らせただの悲しませただのと尾ひれが付いたせいで周囲からの視線がヤバいことになっているそうだ。

まあ相手の都合も考えずに手紙を出した罰だな。


「じゃあな一会。俺は部活に行ってくるぜ」

「ああ。頑張ってな」

「あ、庸一君。途中まで一緒に行きましょう」

「おう今日は部活の日か」


庸一とハルが教室を出ていく。

彼らは少林寺拳法部と料理部に所属している。

庸一はともかく、男子のハルが料理部ってことで最初の頃は色々噂されたらしいが、部活に入った理由が『クッキーとか妹にプレゼントしたいから』だと判明した瞬間、誰も文句は言わなくなった。

むしろ優しいお兄さんということで一部女子からの評価が上がったそうだ。


「さて、俺も行くか」


鞄をひっつかんで学園を後にする。要は帰宅部だ。

放課後はバイトをしたかったってのもあるし、庸一たちみたいにやりたい部活も無かったしな。

自宅付近の駅で降りた俺はちらりと駅に隣接している喫茶店を覗いた。


「いらっしゃいませ~」

「ご注文のAセットとドリンクになります。鉄板お熱いのでお気を付けください」


中からは俺と同い年くらいの女の子たちが忙しそうに動き回っている。

彼女達も学校帰りにバイトをしているのだからご苦労様なことだ。


「?」


おっといけない。

熱心に覗いてた訳じゃないけど中の女の子と目が合ってしまった。

長い髪の毛を両サイドで三つ編みにして丸眼鏡を掛けたちょっと田舎風の子だ。

こうして眺めていても怒られることはないだろうけど、いい気はされないだろう。

俺はさっと視線を切ると今度こそ自分のバイト先へと向かった。


「おかえりなさいませ。お嬢様」


30代後半ぐらいかと思われる女性をお嬢様と呼び恭しく頭を下げる。

最初は少しだけ違和感があったものの、もう慣れた。大事なのは心の眼鏡だ。

女性が手をピクリと動かせばすかさずこちらからも手を差し伸べて、


「お席へご案内いたします。さあお手をどうぞ」


とそっと手に触れてエスコートする。

この時も最高級の絹に触れるかのように丁寧に扱うのがコツだ。

少しでも雑に扱ったり心に慢心があると彼女達には筒抜けになってしまう。

なにせ年季がちがっ、げふんげふん。

そしてそっと笑顔で相手の顔色を窺うのも忘れない。相手によって加減が異なるからだ。

大抵の人はそっと触れる程度で良いけど大胆な女性になるとぎゅっと掴んで欲しいっていう人もいる。

今回は前者だな。よし。

そう、ここは曰く執事喫茶などと呼ばれる場所だ。

俺の今は髪をオールバックにしてスリーピースの制服を着こなして村人から執事にジョブチェンジ中だ。

就業時間は21時まで。

お店自体は25時まで営業しているが学生なので深夜帯は入れないようにしてもらっている。


「いっちゃんさぁ。人気あるんだから深夜も出たら?単価上がるよ?」

「いやまぁ、一応まだ高校生ですから」


俺の肩に肘を置いてそう言ってくれるのはこの店の店長。

夜はお酒メインになるし所謂ホストクラブに近い事もすることになるから、流石に学園にバレたら問題になる可能性がある。

なので単価上がるのは魅力的なんだけど断るしかない。


(飲めないなら飲めないってちゃんと言いなさいよ?)


そう言いながら先にぐでんぐでんに酔っぱらう奴がいたっけな。


「ではお先に失礼します。おつかれさまでした」

「おうお疲れ~」


21時きっかりにホールから引き上げ、更衣室で着替えとセットした髪を戻して元の村人Aへと戻った。

さ、近所のスーパーは22時までやってるし、今から行けば値引きの総菜が買えるかな。



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