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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第3章:変わりゆく周囲
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38.庸一の相談

黒部先輩と会った数日後の昼休み。

久しぶりに俺は庸一とハルの3人で学食に来ていた。

何でもふたりとも俺に何か相談があるのだとか。


「で、どっちから聞こうか」

「なら俺からでいいか?」

「はい。僕の話は長くなるかもなので」


どうやら庸一から話すみたいだけど、最近の庸一は順風満帆だったように思えるので、どんな話が飛び出すのか想像できない。


「その、な」

「うん」

「えっとだな」

「ああ」


いつも豪快な庸一が言い淀む。

それだけ大変な事件が起きてるのかと心配になったけど、その顔を見て大丈夫そうだと思えた。

なにせ苦しそうというより恥ずかしそうに赤らめた顔をしていたから。


「……青葉さん絡みか?」

「お、おう。よく分かったな」

「いやそりゃ分かるだろう」


ハルも隣でうんうんと頷いてるし、庸一が顔を赤らめる相手なんて今のところ他に考えられない。

体育祭で知り合ってから二人が仲良くしているのは知ってるからな。

ということは相談ってそれ絡みか。


「告白したいけどどう言えば良いのか分からない、とか?」

「いやいやいや!

俺なんかが告白しても困らせるだけだろ」

「そんなことはないと思うけどな」


慌てて否定する庸一だけど、そんなに悪くない話だと思うんだけどな。

青葉さんだってそれなりに庸一に好意は持ってくれてるだろう。

嫌いな相手に告白されても嬉しくないだそうけど、お弁当を作って来てくれるぐらいなんだ。

好きか嫌いかで言えば間違いなく好きの方だろう。

まあ、急がせても仕方ないか。

告白でないなら。


「分かった。デートに誘いたいけど何処に行けばいいか分からないんだ」

「デデ、デートはお付き合いしてからだろう」


尻すぼみで声が小さくなる庸一。したいことはしたいんだな。デート。

どうやら庸一の方は脈があってあとは青葉さん次第ってところか。

しかし告白でもデートでもないとするとなんだ?


「その、な。体育祭からこっち、何度も俺なんかの為にお弁当を作ってくれたり、つまらない俺の話に付き合ってくれて青葉さんには凄く感謝してるんだ。

ただ、貰ってばかりで俺からは何も返せていないのが心苦しくてな。

何かしてあげられることはないだろうか」


庸一と一緒に居てつまらないなんてことは無いだろう。

そうだったら自分から一緒に居ようなんてしないだろうし。

でも女性に対しては極端に自信がない庸一にそう言っても無理か。


「先に確認だけど、感謝は伝えてるよな?」


短い確認だけど俺達の間ならこれで伝わるはずだ。

常日頃から『想いは言葉にしないと相手に伝わらない。何かしてもらったのならまず感謝を言葉にすべきだ』と言ってきたし、実際に俺達はお互いにそうしてきたつもりだ。

俺の確認に庸一は力強く頷いた。


「もちろんだ。お弁当を作ってくれた事にお礼を言ったり、料理も美味しいからちゃんと美味いと伝えてる。

特に鶏のから揚げが絶品でな。甘辛いタレが付いててこれがご飯にめちゃくちゃ合うんだ。

機会があれば二人にも食べてみて欲しいくらいだ。

他は漬物もばあちゃん家で食べてるのと味が似ててな。あれだけでご飯3杯は行けるぞ。

それに青葉さんは料理の事を褒めるとすごく嬉しそうでな。

俺の好物を聞いて次回はそれを作ってあげる、なんて言ってくれるんだ」

「あーうん。幸せそうなのはよく分かった」


これは止めないと延々と惚気られる奴だ。

聞いてみないと確かな事は言えないけど、この様子なら青葉さんも幸せそうだな。

なら無理にお返しなんてしなくても大丈夫な気もするけど、それじゃあ庸一の気が収まらないか。


「やっぱり相手の喜ぶものでお返しがしたいよな。

青葉さんが好きなものってなんだ?」

「ん?ん~、馬は大好きみたいだ。

馬術部で世話をしている馬のジャネットの事も大事にしているしな。

他にも動物全般は好きみたいだな。

家で飼っているポメラニアンの話を良くしているし」

「ふむふむ。そうするとそのジャネットにしてあげられることを考えるか。

と言ってもこれは俺たちだけじゃなくて青葉さんにも聞いて何をすればよいかを一緒に考えて行動に移そう。

変にサプライズにして青葉さんにもジャネットにも喜ばれない事だったら意味が無いからな」

「ああ、そうだな」


誕生日とかでサプライズパーティーを開くことがあるけど、それが許されるのはしっかりと関係を深めて気心が知れた仲だけだ。

青葉さんのこともジャネットの事も詳しく知らない内にこっちだけで考えて動くのは危険だろう。

良かれと思ってやったことが裏目に出るなんて昔からよくある話だ。


「後はあれだ。動物園にでも一緒に遊びに行って来たらどうだ」

「それは、デートではないのか?」

「違う違う。単純に友達と遊びに行くだけだ。

動物園くらい友達や家族と行くだろう?だから何も問題はない」

「なるほど。そういうものか」


横でハルが笑いを堪えてるけど気にしない。

なにせ好意を持った男女ふたりで出掛けると聞けば10人中10人がそれはデートだと言うだろうからな。



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