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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第2章:英伝学園体育祭
34/208

34.黒騎士 VS 村人A

ハルが戦った後もなん組かの決闘が続いている。

その間に俺はさっきの戦いで気になってた事を聞いてみた。


「なあハル。さっきの戦いで木刀を投げた時、相手が避けるって分かってたのか?」

「はい。そう誘導しましたから」

「いつの間に」


端から見たら適当に近づいて適当に木刀を投げた様にしか見えなかった。

あれでもし相手が飛んできた木刀を冷静に叩き落としていれば体勢も崩れずハルを切り捨てて終わっていただろう。


「投げる速さと位置にコツがあるんです。

野球でストライクゾーンが定められているように打ちやすい位置って大体決まってますし、デッドボールになりそうなボールは打ち返さずに避けますよね?

あれと同じです。

顔付近の打ちにくい位置に木刀が飛んできたら本能的に避けてしまうんですよ」


なるほど。流石ハルだ。よく考えてるな。

うんうんと納得していたところでこの決闘も終盤になってきた。

気が付けば周りで順番を待っている人が居なくなっている。


「次の選手」

「はい」

「君がトリだ。相手が相手だから勝つのは厳しいが出来れば盛大に盛り上げてくれ」

「頑張ります」


係の人に応えつつ向こうを見れば期待どおり全身黒づくめの男子が立っていた。

そして平均台の上に立った所で向こうから声を掛けられた。


「我は2年D組の黒騎士の黒部くろべ 白夜びゃくやだ。

貴公の名を聞いても良いか?」

「1年C組の村基 一会です」

「ふむ、まだあだ名は無しか」

「いえ、なぜか村人Aと呼ばれています」

「村人A?そ、そうか。だか名があるということは一角の人物なのだろう。

ならば問う。貴公は何のために戦うのか」


いや何のためって体育祭だから仕方なく戦ってるだけなんだけど。

まあでも、今回に限って言えばそう。


「仲間のため、かな」

「ほう」

「騎馬戦であなたにやられて怪我をした男子は俺の友人だったんですよ」

「つまり私怨か。くだらん。

我はチーム全体の勝利の為にここに居る。

得点板を見てみろ。

ちょうどこれに私が勝てば優勝に手が届く。

つまり我がチームを背負っているのだ。

負けるわけにはいかん」


体育祭ごときで何とも大仰な言い回しだな。

俺としては別に優勝出来ても出来なくてもどっちでも良いんだけど。

ただこう、周りから期待の視線を受けると多少は応えてあげないといけないかなとは思う。

お祭りは盛り上がってなんぼだし。


「俺は村人Aなんで国とかチーム全体なんて背負えないです。

その代わり身近な大切な人は何が何でも守ります。

100万人の見知らぬ人と4人の友人の命なら俺は迷わず友人の命を取りますよ」


左を見れば藤白と青葉さんがこっちを見てる。どうやら無事に逃げ切れたみたいだ。

右を見れば左腕を吊った庸一とハルがにこやかに手を振っている。

今の俺には全校生徒よりこの4人の方が大事だ。

その意志は先輩にも伝わったようだ。


「そうか。ならばその大切な者のために見事戦い抜いてみせよ」


大きく頷いて剣を構えた。

どうやら前口上は終わりみたいだな。


「それでは、1本橋の決闘最終戦。始め!」

「やぁーーっ」


俺は先手必勝と開始の合図と共に平均台を駆け抜け一撃を与える。


「なんの」

ガンッ


鈍い音と共に楽々受け止められた。

流石に簡単には終わらせてくれないか。


「今度はこちらから行くぞ」


そう言いつつ安定した動きで剣を振り抜いてくる。

最初の縦振りの一撃だけ受けてみたけど中々に重い。

下手に橫撃を受ければそのまま平均台から落とされそうだな。

なので俺は半歩下がることでギリギリ避ける事を選択した。

ビュンビュンと唸りを上げて木刀が俺の鼻先を通り過ぎていく。


「最初の威勢はどうした!

避けてばかりでは勝てんぞ」


続けて2度3度と繰り出される袈裟切りを何とか交わして、反撃するも余裕で受け止められた。

それを何度か繰り返すも勝ち筋は見えない。

先輩のこの安定具合からして自滅して勝手に平均台から落ちてくれるのを期待するのは無理そうだな。

かと言って体格は向こうが上。

中途半端な攻撃では受け止められるし、切り結んでも先に落ちるのはこっちだ。

狭い足場ではスピードで翻弄するのも無理がある。

かと言って木刀で本気を出せば怪我ではすまないだろう。

ならどうするかといえば、ハルを真似させてもらうか?

2度同じ事は通じないと思うけど。


「ぬん!」

「あっ」


そんなことを考えていたら下から掬い上げるような一撃を受け止めてしまい、木刀が吹き飛ばされてしまった。

ハルの時とは違って相手の体勢は崩れては居ないし、むしろ先輩は勝ちを確信した顔をしている。

これは万事休すか。


「貰った!」


大きく一歩を踏み出して上段からの振り下ろし。

これは下がっても避けられない。


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