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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第2章:英伝学園体育祭
28/208

28.避難先

暴徒になりかけた群衆の包囲を抜けた俺達は安全なところを目指して移動した。

あ、運営委員の仕事があるって言って連れ出したけど、ただの方便で実際には今は何もない。

幸いに藤白は特に口を挟まずに素直に付いて来てくれたから良かった。

そうして俺達が辿り着いたのは、今この学園で最も安全でなおかつちょっと忙しい場所だ。

白い天幕に赤い十字のマーク。

そう、救護テントだ。

体育祭という性質上、普段よりみんな頑張ってしまうせいで転んで膝を擦りむいたり、捻挫したり、はたまた肉離れを起こしてしまった生徒などが利用している。


「おいそこ。ここは休憩所ではないぞ。逢引なら他所へ行け」


そう言いながら俺達を迎え入れたのはここのボス、もとい養護教諭の牧野先生だ。

27歳独身。身長171センチ体重○○キロで大人の女性としては引き締まった身体をしつつも出るところはしっかり出ているので学生時代などはさぞモテたんじゃないかと噂されている。

ただしその鋭い視線と相まって可愛いというよりも格好いいという表現が似合い、先日行われた校内アンケートでは「踏んで頂きたい女性No.1」として昼の校内放送で紹介されていた。


「すみません、先生。チームの待機場所でちょっとトラブルが発生したので落ち着くまでここに居させてください。それと逢引ではありません」

「ふむ。しかしそのしっかりと繋がれた手を見せ付けられてはそう思われても仕方あるまい」

「え?」

「…………」


言われて自分の右手を見てみれば、藤白の手を掴んだままだった。

藤白は藤白で顔を赤くして俯いている。

俺は慌てて手を離して謝った。


「あっと、ごめん!」

「いえ。大丈夫です。村基くんが私を助けようとしてくれたのは分かってますから」


握られていた手を摩りながら小さく答える藤白。

その顔はまだ赤いままだけど怒っている訳ではなさそうだ。

ただどことなく気不味い空気で、この後は一体どうすればいいんだ?

じゃあって置いて行く訳にもいかないし、かと言って話しかけるにしても何を話せば良いのか。

藤白も何か言いかけようとしてはやっぱり止めてを繰り返しているようだし。

見かねた先生が助け舟を出してくれた。


「あー、お前達。今手は空いてるのか」

「え、あ、はい。俺は午後の競技しかありませんから」

「私も大丈夫です」

「よし。ならこれから怪我人が続々と来る予定だからちょっと手伝って行け」

「分かりました。でもいったい何の競技でですか?」


体育祭でそんな怪我人が出る様な競技はそもそもダメだと思うんだけど。

ただこの学園の体育祭は同じような名前の種目でも普通のとは内容が随分違うみたいだしなぁ。

プログラムを思い返してみてこの後行われる競技でそんな危険なものと言えば、あっ。


「まさか騎馬戦、ですか」

「そうだ」

「もしかしなくても普通の騎馬戦じゃないんですか?」

「いや。ある意味正当な騎馬戦だ。だから怪我人が出る」

「んん?」


俺達の疑問に答えるように試合会場の方から大きな歓声が聞こえてきた。

そしてその中に異質な声も混じっていた。


「ヒヒ~~ン!」

「って本物の馬!?」


慌ててテントから顔を出して様子を窺えば、本当に馬に乗って向かい合う生徒たちの姿が見えた。

騎手はこれでもかってくらいにモコモコの防具を身に纏って、先端にグローブをくっつけた棒を構えている。

あの棒で突き合って相手を落馬させた方の勝ちらしい。

幾ら防具を付けてるからって変な態勢で地面に落ちたら危険なのに。

馬のとなりに馬術部がサポートに付いたって完全に防げはしないだろう。

そうして試合が進む中。


「先生、急患です!」

「ほらきた。って庸一!!」


担架に乗って運ばれてきたのはまさかの知り合いだった。


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