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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第2章:英伝学園体育祭
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26.陰陽師の力

最初のうちの参加者は、お、なんだ。ハルが居るじゃないか。

ハルは足が速い方じゃないからな。競技の内容を聞いて少し嬉しそうだ。


「位置について。よーい、ピッ!」


スターターのホイッスルに合わせて第1走者が走り出す。

軽快な走りを見せた選手たちはコースの中間よりやや手前で立ち止まった。

普通のレースだとあり得ない光景なんだけど、ゴールするのが目的じゃないしな。

それぞれ周囲を見回したり、スタート地点までの距離とゴール地点までの距離を見比べて、この辺りかなと思う位置にバッヂを置いては他の選手の邪魔にならない様にコースから離れていく。

観客席からは「あと5センチ前だ!」とか「ちょい下がれ」とか声援が飛んでるけど、言ってる本人だってどこが42.195メートルか分かってないと思うんだけど。

そうして無事に9組の走者が走り終え、最終10組目。


(頑張れ)

(まかせて)


スタート位置で列整理をしていた俺は目でハルを応援すると力強く頷いて返された。

どうやら勝算ありってところかな。

と思っていたのにハルがバッヂを置いたのは誰が見ても中間地点よりも向こう側。

もちろん近くに誰もバッヂを置いてる人は居ない。

どういうつもりだろう。


「では係の人は巻き尺を持ってそれぞれのバッヂの距離を確認してください」

「はい。じゃあ藤白はスタートの位置で待っててくれ」

「分かりました」


巻き尺の端を藤白に預けた俺はコースの脇を走ってバッヂの置かれている辺りへと向かった。

えっと、一番スタート地点に近いので38.772メートル。遠いのはハルのを除けば45.131メートルか。

一番42.195メートルに近いのは、D組の第3走者が41.846メートルのわずか35センチ差だ。凄いな。


「ではD組が1位で、2位がA組、3位がF組ですね」


一緒に確認に来て記録を書き留めていた別のクラスの委員がそう言ったところで俺は待ったをかけた。


「いや、念のため全部のバッヂの位置を確認しよう」

「え、でも他のバッヂの細かい距離を確認しても順位は変わりませんよ?」

「まあまあいいから」


何とかなだめつつ、俺はハルが置いたバッヂの距離を計測してみた。

……あぁ、やっぱり。


「どうやら1位のバッヂはこれだ」

「え、でも全然50メートル以上離れてるじゃないですか」

「57.803メートル。記録した数値を審判の先生に提出してみよう」

「はぁ」


首を傾げるそいつを連れて計測結果を先生に提出した。

そして結果が放送から流れる。


『ただいまの第1競技。42.195メートル走の第1位はC組第10走者。阿部 春明さんです。

記録は42.197メートル。わずか2ミリ差という驚異的な確度でバッヂが置かれていました』


それを聞いて会場がざわめく。

その声を代表するように解説の人が待ったをかけた。


『あれ待ってください。C組の最終走者といえば中間位置よりも更に先に進んでいった選手では無かったでしょうか』

『はい、その通りです。なんと彼はゴール地点からその距離になる様に計算してバッヂを置いていたのです。

えー、最初にお伝えしたルールを改めてお伝えしますと【コースの端から42.195メートルに最も近い位置にバッヂを置いたチームが勝利】です。

コースの端、つまりスタート地点からでもゴール地点からでも良かったわけです』

『なるほど。ゴール地点からの方が何か有利な点があるかと言われたら無い気がしますが。

しかし結果として阿部選手は見事な結果を出していますので、私達には分からない何か秘策があったのかもしれませんね』

『なおその阿部選手ですが、最近では一部で「陰陽師」のあだ名で呼ばれているようです』


ハルの様子からして何か策を弄したんだとは思うけど、それが何かは俺にも分からない。

タネも仕掛けも分からない手品の事を魔法マジックと呼ぶわけだし、これはまたいつの間にか呼ばれるようになった「陰陽師」のあだ名に拍車が掛かりそうだな。



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