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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第2章:英伝学園体育祭
24/208

24.体育祭の準備

そして幸いにして放課後に大した練習もすることなく体育祭当日を迎えた。

晴れ渡る空には雲一つ、いやふたつくらいあるかな。

5月とはいえ汗ばむ陽気なのでもうちょっと曇っててくれた方が有難いんだが。

運営委員の俺達は他の生徒よりも早い時間にグラウンドに集まって今日のスケジュールの確認をしていた。


「ではこの後は残りの設営を終わらせたら手の空いた人から誘導に回ってください。

開会式が終わった後はレース参加者の整列の手伝いや救護班の手伝いなど、渡した冊子を見て行動してください。

何か質問はありますか?

無いようなので、皆さん今日は事故なく楽しい一日にしていきましょう」

「「はい!」」


3年の運営委員長の挨拶と共に俺達は持ち場へと散った。

設営の残りと言っても昨日のうちにテントの設営などは終えている。

あるのは仮設救護テントに包帯などを運んだり、放送ブースに機械を設置したり、教師用のパイプ椅子を並べるくらいだ。

つまりぶっちゃけ手が余る。

するとどうなるかというと、これを機会に有名人とお近づきになりたい良いところを見せたいという奴らが集まってくる。

もちろん俺にじゃなく藤白にだ。


「あ、姫様。そんな重たい物は俺が運びますよ」

「え、いえ。ただの救急箱なのですけど」

「まぁいいからいいから」


保健室から運び出す途中の荷物を取り上げられ。


「おおっと姫様。パイプ椅子を並べるのなんて俺達に任せて向こうでゆっくりしててくださいよ」

「え、でも。私も皆さんと同じ運営委員ですから」

「いえいえいえ。ここはこの俺、2年A組の藻分谷もぶたににお任せください」

「ちょこら。抜け駆け禁止だぞ!

姫様。2年E組の脇屋わきやが居ますからここは大丈夫です」

「あっ、てめえだって人の事言えねえじゃねえか」


パイプ椅子を並べようとしたら、なぜか先輩たちが喧嘩を始めてしまい、その場を離れるしかなかった。

その近くで女子の運営委員から冷めた目線が向けられていたが男子たちが気付く様子はない。

その手持ち無沙汰になってトボトボ歩く背中に誰かが声を掛けた。


「藤白。ちょっと手伝ってくれ」

「えっ、はーい」


呼ばれて嬉しそうに顔を上げた藤白は、声の主である俺のところに元気よくやってきた。

ただ、そんな期待した目を向けられてもやる事なんて地味なんだけどな。


「村基くん。何をすればいいんですか?」

「運営ブースの机と椅子の雑巾がけ。埃被っちゃってるからさ。

雑巾とバケツはそこに用意してあるから。

俺が机拭いてくから、藤白は椅子を頼む」

「分かりました」


嬉々として雑巾をバケツの水に浸し、絞ったそれで椅子を拭き始める藤白を見て、周囲の男子たちは呆気に取られていた。

もしかしたら、こんな庶民的な姿を見せられて姫様としての評価を撤回してしまっただろうか。

そうなっても藤白自身は多分気にしないんだろうけど、またあの教師が煩そうだ。

ただ俺のその心配は杞憂だった。


「……いい」

「ああ。こんな下々の仕事を健気に頑張る姫様も素敵だ」

「あれだよ。スラムの人達の為に炊き出しを頑張ってるような、そんな尊さが伝わってくる」


そ、そうか?

俺には普通にしか見えないんだけど、こいつらのフィルタを通すと何でも輝いて見えるらしい。


(実際はさ。月に1回の炊き出しなんてその場しのぎどころか点数稼ぎでしかないんだ。

なにせ食事を月に1回するだけで生きていける人間なんていないんだから)


ともかく無事に設営も終わり、一般の生徒もあらかた登校してきた。

体育祭本番も間もなく開始だな。



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