23.体育祭の委員決め
教室に戻る頃には先ほどの光と聖のやりとりが噂になっていた。
「紅の王子 VS 聖騎士かぁ。面白くなってきたな」
「そうだな。でも期末試験まで2カ月あるぞ。それまで待つのもなぁ」
「いやいや。今月はあれがあるだろ」
「え、ああ!体育祭な。
そこで二人の直接対決とかあったら燃えるな」
そういえばこの学園の体育祭は今月末だって先生が昨日のホームルームで話してたか。
学力試験も無事に終わったので来週から本格的に体育祭の準備期間に入るとか何とか。
5月末なんて梅雨時期なのに大丈夫かと心配になるけど、不思議と毎年天候には恵まれているらしい。
まあ運動の苦手な奴は雨ごいとかしてそうだけど。
ともかくうちの学園では組ごとに3学年を縦割りにしてA組~F組までの6チーム分かれて競い合う。
これは他学年との交流を図る意味もあるそうだ。
たしかに部活をしていない生徒が他学年と接する機会なんてまず無いしな。
例外は藤白みたいに学年を飛び越えて告白される奴とかか。
そういう意味では俺も別の意味で先輩から顔を覚えられてるんだよな。嬉しくないけど。
そうして翌週の月曜日。
早速6時間目がロングホームルームになり体育祭についての話し合いをすることになった。
「えー、皆さん既にご存じの通り、来週末に体育祭が行われます。
今日は今年どのような競技があるかを紹介し、誰がどの競技に誰が出るかを決めると共に、運営委員を選出したいと思います」
運営委員か。こういうのって誰も立候補なんてしなくてなすり合いが始まるんだよなぁ。
かく言う俺も敢えてそんな面倒な役目を負いたいとは思わない。
だから適当にやる気のある奴がうまいこと出て来てさっと決まってくれると嬉しいんだけど。
なんて思っていたら、男子の誰かが発言した。
「先生。運営委員は村人Aの村基君にやってもらったらどうでしょうか」
「は?」
「あ、それは良いわね」
まさかの発言に先生もなぜか乗り気だ。
ふたりはグルなのかと勘繰ってしまうぞ?
こういう時に無言を貫いても良い事は無いからきっちり反論しておこう。
「いやいや、先生。本人の意向は?」
「大丈夫です。運営委員なんて言っても当日の設営とちょっとしたお手伝いだけですから。
目立つ仕事でもないですし村人Aのあなたには適任でしょう。
それと委員は参加する競技が他の人よりも1つ減りますし、より目立つ可能性が減りますから適任です」
「いやそれ俺にとって何のメリットでもないような」
「なら参加する競技を優先で選べる権利を上げましょう。それでいいですね。
では男子は村人Aの村基さんで決定で、女子は誰にしましょうか」
え、いや。今ので決定なのか?
うーん、この先生。先日の暴力事件疑惑の時以来おとなしくなったと思ってたんだけど、やっぱり俺の事をどこか見下しているというか安く見ている節があるな。
まったく、教師が公平性を欠いてどうするんだか。
ま、勝手に大変な競技に出される心配は無くなったからいいか。
リレーとかだと練習だとかいって放課後に残らされる危険があるからな。こっちはバイトがあるって言うのに。
とそんなことを考えていたら女子の誰かが手を挙げた。
「先生、私がやります」
そう言って手を挙げたのは俺の隣の席。つまり藤白だった。
これには先生も驚いたようだ。
「ま、待ってください藤白さん。姫様であるあなたにそんな雑用を任せる訳には」
「お言葉ですが先生。上に立つもの、と私自身は自分のことをそうは露ほども思っていませんが、そう言ったものが率先して動くからこそ、他の方々も協力して下さるものではないでしょうか」
「え、ええ。確かにそう言った話はあります。ありますが」
「ならばやはり、私達C組を優勝に導くためにも私が委員をやるのが良いでしょう」
「分かりました。ならせめて表の人目に付きやすい作業を担当してもらいましょう。
村基さん。姫様のサポートを頼みましたよ。万が一粗相などあろうものなら内申に響きますからね」
「はぁ、まあやるからには全力を尽くします」
クラスの男子、特に俺を委員に推薦したやつがものすっごい悔しそうな顔をしているが自業自得としか言いようが無いな。
(うしろで偉そうにしているだけって性に合わないのよね)
ただま、藤白に力仕事を任せる訳にもいかないだろうし、多少面倒を被るくらいは覚悟しておくか。




