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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第13章:村人らしく姫様らしく
207/208

207.バレンタインのおまじない

一度描いたのが過激すぎたので半分くらい消してオブラートに包んでお送りしています。


「それで、一会くんはそのチョコ食べたんですか?」


バイトを終えて家に帰ってきた俺は、夕飯の準備をして待っていてくれた姫乃と食卓を囲みつつ、今日あった事を離したらそう聞かれた。

別に怒っている風でも疑っている風でも無いのは流石姫乃だな。


「いや、受け取り拒否しておいた」

「良いんですか?そういうのを受け取らないのは失礼に当たりそうですけど」

「『それは少々はしたないですよ』と諫めてみた。

相手を1人のレディとして尊重するからこそ、時には苦言も言わないとな。

幸いその人はちゃんと俺の言葉を受け入れて口渡しは諦めてくれたよ」


その後で手でつまんであーんさせられたけど、そこは妥協範囲かなと受け入れた。

それでも周囲から「ぐぬぬ」って呻く声が聞こえたけど。


「勿体なかったなとは思ったりしてないんですか?」

「ないない。

それにほら。もし仮にそこで食べていたら。

絶対この前のクリスマス同様、次の予約の人達も全員同じことしてくるだろうと思ったら恐怖でしかない」

「あー容易に想像出来ますね」


来るお嬢様、来るお嬢様、みんなして口渡しでチョコを食べさせようとしてくるとしたら、それはお姫様抱っこの比じゃない影響を与えることになる。

それこそ執事とお嬢様の垣根が壊れてしまうだろう。

そうなると「キヒト様はわたしのものよ!」って女性が多数出てきて喧嘩になりそうだ。

最後はきっと夜道で背中を刺されるのだろう。

そんなのは御免だ。


「俺は姫乃が居てくれれば十分だから」

「む。し、仕方ないですね一会くんは」


俺の返しに顔を赤くした姫乃は何を思ったのか鶏の唐揚げを1つ取ってパクっと半分咥えてこちらを見た。


「ん」

「えっと、話を聞いてやってみたくなった?」

「んん」

「や、やっぱり大胆過ぎると思うんだけど」

「ん〜?」


上目遣いに首を傾げるのは反則だと思う。

見事誘惑に負けた俺はそっと姫乃を抱き寄せつつ受け取った。


「ん。ふふっ」


至近で目があった姫乃は満足そうだ。

でもこれ、甘い雰囲気なのに鶏の唐揚げ風味なのがちょっとあれだな。

これがチョコレートなら甘く口の中で溶けて無くなるから丁度いいのか。

などと考えながら顔を離すと流石に恥ずかしすぎたのか、フッと顔を逸らす姫乃。


「そのまま私まで食べられてしまうのかと思いました」

「あ、ごめん」


どうやら考え事してたせいで無意識にがっついてしまったらしい。

俺としても頑張って意識を逸らさないとそのまま姫乃を押し倒してしまいそうだったからな。

仮にそうなったとしても姫乃は逃げないでいてくれると思うけど一応まだ食事中だし、そういうのは食べ終わった後にしよう。

だけどそんな俺の下心を見抜いたのかご飯を終えて食器を片付けたところで姫乃が切り出してきた。


「一会くん。後でお願いがあるのですが」

「いいよ。何すれば良い?」

「おまじないに付き合ってください」

「ん、分かった」


俺が頷くのをみた姫乃は「なら今日は先にお風呂頂きますね」と行ってしまった。

珍しいな。まだ湯冷めするくらい外は寒いから、普段泊まって行かない日は家に帰ってから入るのに。

さっきのおまじないにも関係あるのか?

などと考えながら食器を洗って待っていれば案の定、パジャマ姿で出てくる姫乃。


「お風呂空きました〜」

「おう。じゃあ俺も入って来るよ」

「はい、ごゆっくり」


風呂に向かう俺の後ろから「よし!」と気合を入れた声が聞こえた気がしたけどいったいどんなおまじないをする気だろう。

兎も角、いつもより多少時間をかけておくか。


「上がったよ〜」

「は〜い」


風呂から上がって声を掛ければ姫乃は変わらない姿で迎えてくれた。

ふむ。特に何か仕掛けてた訳ではないのか。


「それで、おまじない?」

「はい。早速やりましょう」


気合十分な姫乃の説明を聞いて、まずは右手を肘を立てるようにして前に出せば、姫乃も同じように左手を出して俺の手を掴んだ。

所謂恋人繋ぎ?


「そして繋いだふたりの手をこのリボンで結びます」

「買ってたんだ、それ」


取り出したのは先日バレンタインフェアで見かけた赤いリボン。

あれって確か女の子が自分の身体に巻き付けて「私がプレゼントよ」って恋人に迫るネタアイテムじゃなかったっけ。

聞いた感じ別の使い方みたいだけど。

まぁ、姫乃がやりたいって言うんだから俺は何も言わずに手伝うだけだ。

お互い片手しか空いてないので若干手間取りながら、それでも繋いだ手の手首にリボンを巻いて結んだ。


「それで、明日の朝までこのリボンが解けなければふたりは永遠に離れ離れになることはないそうです」

「あーもしかしてこの前の事故の事を根に持っていらっしゃる?」

「一会くんは巻き込まれ体質で危険を顧みず飛び込んでしまいますからね。

するなとは言いませんが、ちゃんと無事に私のところに帰って来てください。

私、置いていかれる気はないですからね?」


え、それは俺が死んだら後を追うぞってことか?

なんて恐ろしい事をいうんだ。なら尚更死ねないじゃないか。

まぁ元より死ぬ気はないけどさ。

しかし。


「これ明日の朝には寝違えてるやつ?」

「そうかも知れないですね」


今現在、俺の右手と姫乃の左手がぴったりくっついてる状態で、向かい合って寝るしかない。しかも至近距離で。

まぁまず間違いなく理性が保たないだろうな。

むしろ今夜は寝れるのかが心配だ

明日揃って寝不足で登校したら皆から色々言われそうだな。

それよりも直近で重大な問題があることに気がついた。


「姫乃。困った事がある」

「なんですか?」

「トイレに行きたい」

「どうぞ?」


まだ何が問題なのか分かってなさそうなので繋いだ手をニギニギしながら続けた。


「……手、離れないんだけど」

「あ……み、耳塞いでおきますから」

「片手でどうやって?」

「うっ。だ、大丈夫です。

ほらよく言うじゃないですか。

好きな人の前ならどんな恥ずかしい姿も曝け出せるって。

私も一会くんのならむしろ見ていたいですし」

「いやそれもどうなんだ!?」


若干倒錯した事を言い出した姫乃は、それでもリボンを外す気は全くないらしい。

こうして俺達のバレンタインの夜は羞恥プレイから始まる事になった。

その後どうなったかは秘密だ。


「ところで姫乃はお手洗い大丈夫なのか?」

「……あっ」



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