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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第13章:村人らしく姫様らしく
204/208

204.振り返れば日常の1コマ

目が覚めれば見知らぬ天井が見えた。

なるほど、これが有名なあれか。

まあボケる必要もなく、ここが何処かは考えなくても分かる。

何処かの病院の1室だろう。

それに目を開けたらすぐに隣から声を掛けられた。


「あ、一会くん起きた?」

「っ!?」

「おはよう、姫乃。あ、それと瑞希先輩」


俺が寝ていたベッドの横には姫乃と瑞希先輩が居た。

姫乃は何というかいつも通りで呑気にお茶を啜っていた。

反対に瑞希先輩は声も出ないくらい思考がグチャグチャになって泣いてるな。

まぁ、目の前で知り合いが車に轢かれればそうなるか。

むしろ姫乃が落ち着きすぎだと思う。


「えっと、姫乃。説明をお願いしてもいいか?

まずはあの事故からどれくらい経ったんだ?」

「はい。と言っても事故からまだ2時間くらいしか経ってないです」


そうか。

これで数日寝込んでたって話ならバレンタインをすっぽかす事になって色々大変なところだった。


「皆に怪我は?」

「瑞希先輩含め、みんな無事です。

一会くんも頭にコブが出来たくらいでお医者様も頑丈な奴だって驚いてました。

念のため今日の所はこのまま一泊することになりますが問題無ければ明日の朝には退院です」

「それは良かった。

しかしコブが出来たかぁ。俺もまだまだだな」


あの時、咄嗟に身体を捻りながらジャンプして車のボンネットの上を転がるようにして直撃は避けたつもりだったので、上手く行けばかすり傷程度で済むと思ったんだけど。


「コブの原因は車の衝突で吹き飛んだお店の扉が顔に当たったせいです」

「あ、言われて見れば残ってる記憶の最後は真っ赤だったな。

あれは店の扉だったのか。

で、そろそろ瑞希先輩は落ち着きました?」

「う、うん」


感情が溢れてポロポロと涙を流してた先輩は、少しは話せるまでになったようだ。


「村基君、ごめんね。また私のせいで危険な目に合わせちゃって」

「まぁ俺が好きでやったことなので気にしないでください。

それとこういう時はごめんじゃなくてありがとうです」

「うん……うん。ありがとう。村基君」


お礼を言いつつ再び涙ぐむ先輩。

これは日を改めた方が良さそうだな。


「姫乃、先輩のこと頼んでもいいか?」

「ええ、任せて。

さあ先輩。一会くんの無事な姿も見れたし今日のところは帰りましょう。

週明けには学園で会えますから」

「う、うん。じゃあお大事にね」

「はい、先輩も気を付けて」


後ろ髪を引かれる感じで先輩と姫乃は帰っていった。

それを見送りながらのんびりとベッドに背中を預ける。

暴走車を見たときはどうなることかと思ったけど、誰も大した怪我もなかったし、これも日常の延長線だな。

来週には忘れてるだろう。


そして翌朝、簡単な健診を終えて無事に退院した俺は普通にバイトに出ていた。


「お帰りなさいませ、お嬢様」

「「はい♪」」


今日から3日間はバレンタインフェアだ。

と言ってもクリスマスとは違ってスタッフ側は特別何かをする訳では無い。

精々お店の内装をそれっぽくしたくらいか。

今回のお嬢様は、昨日も見た学院の公爵令嬢と男爵令嬢。

こうして一緒に遊びに来るところを見るとやっぱり仲良しっぽいな。

良いのか男爵令嬢がそれで。

まぁ当人達が良いなら別に俺がとやかく言うことでもないか。

彼女達も他のお嬢様同様にチョコレートと思われる包みを持参していた。

もちろんこちらからはそれには触れずにエスコートに努める。

そうして1杯目の紅茶が無くなりかけた所で緊張した様子で俺に声を掛けてきた。


「あ、あの、キヒト様!

良かったらこれを受け取ってください!」

「キヒト様のクッキーに比べたら全然大した事ないですけど」

「ありがとうございます」


差し出された包みを丁寧に受け取る。

この時、指先がほんの少し触れるようにするのがポイントらしい。

ベテランの先輩方がそうアドバイスしてくれた。

それと一言付け加える。


「こちらからお返し出来るものが何も無いのが心苦しいですけど」

「い、いえ。全然気にしないでください」

「そうです。私達が好きでやっていることなのでっ」


遠回しに脈はないよってことらしい。

ちなみにこの時、もし万が一相手が意中の女の子だったら別の言葉を伝えるのだとか。

ま、そっちを俺が使うことはないだろう。



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