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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第13章:村人らしく姫様らしく
200/208

200.お後がよろしいようで

電話を掛けてから1分。

アルファビル前を張っていたハルからメールが届いた。

どうやら誘拐犯は無事に先輩を連れてビルを出たようだ。

ならもう皇子を抑えておく必要もないな。


「皇子、起き上がる前に1つ相談なんだけど」

「なんだ?」

「今回の勝負、引き分けにしないか?

ほら、誘拐やら脅迫やら余計な横やりが入ったし、もしまだ白黒はっきりつけたいというのであれば後日別の機会を設けるという事で」

「いや、この状況はどう見ても我の負けだが……だがそれがお前にとっても都合が良いということか。分かった」


皇子からの了解も取れたので俺はその背中から退いた。

このタイミングで起死回生の出てくる……なんてことも相手によってはあり得るんだけど、プライドを重視する皇子なら一度約束したことを反故にすることはないだろう。


「あ、それと皇子。

今日の記念にこのペイント銃貰っても良いか?」

「ふん、好きにしろ」


先ほど取り上げた拳銃は、見た目こそ本物と全く同じだけど持ってみればその軽さから中に詰まっているのは鉛玉では無いのはすぐに分かった。

だから対応を柔らかくしたって言うのはある。

彼も口では命を賭けた決闘だと言いつつも実際には殺す気は無かったってことだ。

恐らく拳銃を見せ付ければ俺が降参すると考えていたんだろう。

実際には撃つ間も与えずに制圧してしまったけど。


『えーっと、これはどういうことでしょうか。

一度は皇子を制圧したかに見えた村人Aですが、仕切り直しとでもいうように距離を取りました』


あ、そうか。

周りにはまだ伝えてないからな。

それにまだ5分くらい時間があるし、先輩が到着するまで立ち尽くしてる訳にもいかない。


「皇子、その腰に差してある剣は飾りか?」

「ふっ、学院で剣捌きで俺に勝てる奴は居ない」

「なら余興と行こうか」


そう言ってお互いに剣を抜く。

まあ俺が持って来たのはただの木剣だし、皇子のも装飾メインのナマクラだろう。

勿論本気で振って叩きつければ骨くらいは折れる心配はあるけど、お互いに腕に自信があるならばさっきの銃撃に比べて安心して戦える。


「はぁっ!」

「せいっ」


ガキンと剣と剣がぶつかり合う。

これこっちも金属のにしておけば火花が散って見応えあったかな。

なんて考えている余裕は余りないか。

皇子め。なかなかに鋭い剣筋だ。

さっき言ってたのは本当らしい。


「どうした村人A。さっきの威勢はどこに行った」

「村人だからな。

武道という意味では本職には負ける」


例えば剣1本で庸一と戦えば勝てる見込みは少ない。

何でもありなら、勝つことも出来るだろうけど、今はそこまでする意味も無いしな。

そうして俺達が派手に動き回りながら剣の応酬を繰り返していた時、外野から大きな声が届いた。


「村基君!!」


ぱっと距離を取りつつ声の方を見れば、息を切らせた瑞樹先輩がそこに居た。

見た感じ怪我とかはしてなさそうだな。よかった。

誘拐犯はこの場に姿を見せず、多分会場入り口で先輩を解放してすぐに撤収したんだろう。

彼らも仕事でやっただけだろうし、捕まえる必要はないと思ってる。

俺としては先輩を助け出せて姫乃の事をうやむやに出来れば万々歳だ。

そして少し息を整えた瑞樹先輩は、そのままステージに上がって俺達の間に立った。

突然の事に会場中が静まり返り、その原因が自分だと気付いた先輩はオロオロして。


「えっと、こんな時は……そうだわ。

駄目よふたりとも。私の為に争うのはもう止めて!」

「「ええぇ~~~」」


謎の仲裁に誰もが驚きを隠せない。

いやまさかそう来るか。

確かに、男の決闘と言えば女性の取り合いが元だという話はよく聞くし、セリフは間違っていないと思う。

さっきまで誘拐されてたのに咄嗟の判断でその言葉が出てくる機転も凄い。

後はこれに皇子が乗ってくれるかだけど。


「はぁぁ。なんというか、興ざめだな。

おい村人A。今日の所は引き分けにしておいてやる」

「「あぁ~」」


良かった、乗ってくれた。

会場も何というか皇子らしい発言に納得してくれたようだし、これで決闘は無事に幕を閉じた。

対抗試合全体としても2対2の引き分けで禍根も残さず「次の時を楽しみにしてろ」的な流れでまぁ悪くなかったんじゃないだろうか。



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