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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第12章:望んでいた日常
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188.バレンタイン戦略

無事に迷子を解決した俺達は、ある種やり切った感が漂っていた。

じゃあこれからデート再開って気分でもないし、どちらかというと。


「打ち上げでも行く?」

「それも良いですね」


俺の提案にあっさりと頷く姫乃。

だけどそんな俺達を先輩ふたりは信じられないモノを見る目で見ていた。


「いやいや、2人は今日はデートなんでしょ?」

「そうですよ」

「なら時間まだあるし、私達のことは気にせず続き行ってきなさいよ」

「うーん、デートだからって2人きりじゃないといけない訳でもないし」

「出先でばったり友人に遭うって意外とありますからね」


そうなのだ。

田舎あるあると言うか、友達の家に遊びに行ったら約束もしてないのになぜか別の友達も同じタイミングで遊びに来るとか良くある話だ。

しかも山登りや川釣りなんかでも同じだから偶然で済ませて良いのか悩ましい程だ。

そんな訳で俺達としては普通の事だったんだけど。


「やっぱり村基君ってちょっと変わってるよね。

それに付き合える姫様もまともな筈がなかったんだ」

「姫様は普通のお嬢様なのかと思ってたのに」

「えぇ〜!?私は普通ですよ」

「俺も普通だし」

「「「それはないから」」」


まさか全員から即否定されるとは。

姫乃が普通なんだから俺だって普通で良いと思う。

これが男女差別というものか。くっ。

と、それは良いとして。


「俺達は別に買いたいものがあった訳じゃ無いし、今日はデパートを周って気になるものを見て回ろうかって感じだったんだよ」

「そうそう。

それに先輩方はバレンタインの下見に来たんですよね?

私バレンタインって言ったらチョコだったら何でもいいってイメージだったから、先輩方が何を基準に選ぶのかなって教えて欲しいです」

「ふぅむ、そういうことなら」


結局打ち上げではないけれど連れ立ってデパートの中を回ることになった。

それは全然良いのだけど。


「バレンタインでまず大事なのは、可愛いさよね」

「「えっ」」

「そうそう。味とかは二の次よ」


そ、そうなのか。

先輩の発言に驚く俺達。

食べ物をプレゼントするのに味を気にしないとか斬新過ぎる。


「いやそりゃね。食べられない程マズイのは問題だけどカカオ90%とかロシアンなのじゃ無ければ大丈夫でしょ」

「まぁ確かに」

「ちなみに2人が思う大事な事ってなに?」

「それは勿論」

「「贈る相手」」

「ごふっ!」


俺達の答えに吐血する綾香先輩。


「ちょっと2人とも。

綾香は彼氏とか居ないんだからちゃんと気遣ってあげないと」

「ぐはっ」

「いや瑞希先輩がトドメ刺してますから」


綾香先輩はいじけてフラフラと歩いて行ってしまう。

向かった先はなんとお一人様コーナー。

って、そんなコーナーがあるのか!?

みれば『いつも頑張っている自分へのご褒美チョコ』が陳列されている。

色々とツッコミたいけど他よりも割高に見えるのは中々に悪どい商法だ。

少しでも自分を慰める為に贅沢をしてる気分を味合わせる目論みだな。

そんなチョコレートが並ぶ中、隣のブースはまた違うものが売られていた。


『まだ間に合う!』


の謳い文句と共にあるのは毛糸玉や編み棒。そして『編み物入門』と書かれた本。

つまり手編みのセーターとかマフラーとかをプレゼントしませんかってことか。


「この入門書が必要な人がバレンタインまでに贈り物を作れるのだろうか」

「本気でやれば出来なくはないけど、ねぇ」

「まぁまず途中で挫折するか間に合わないかのどちらかでしょうね」


つまりこれも罠か。

最近では詐欺とは言わないけどこういう巧妙にお金を落とさせる仕組みがそこかしこにあるな。

こんなのがあるなんて先輩達に付いてこなかったら気付かなかったかもしれない。


「それで、姫様はバレンタインに何贈るか決まりそう?」

「うーん。って、これは何ですか?……リボン?」


姫乃が指し示したのは幅が5センチ以上ある赤い布で出来たリボンだった。テープ状で5mもある。

その幅のリボンを巻くチョコレートってどんだけ巨大なんだろう。


「あー、姫様それはネタグッズです」

「ちょっと耳を貸して。ごにょごにょ」

「……はぁ……えぇっ!?」


綾香先輩に耳打ちされた姫乃は顔を真っ赤にしていた。

一体何を吹き込まれたんだろうか。

ちらちら俺の方を見てるし。

でもこれ多分聞いても教えてくれない奴だ。

いや良いんだけど。

買わないの?って聞いたら何故かバシバシ叩かれるし先輩ニヤニヤしてるし謎は深まるばかりだ。



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