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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第12章:望んでいた日常
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186.デートは中断

バレンタインの話は置いておいて、ぼちぼち先輩たちとは別れてデートを再開しようかなと思ったところで綾香先輩が思い出したように話題を出した。


「そういえばさっき、盲導犬を連れた女性ひとが居たよ。

私犬好きだから思わず話しかけて犬を撫でさせてもらっちゃったよ」

「そうですか。それは良かった……ん?」


先輩の何気ない話に相槌を打とうとして何かが引っ掛かった。

盲導犬といえば俺もさっき姫乃と洋服を見ていた時に見かけたな。

そんな人が何人もいるとも考えにくいので多分同じ人だろう。

その人と先輩が同じデパートの中で出会っていても何ら不思議はない。

なら一体何に引っ掛かりを憶えたんだろう。


「あの、先輩。その親子とはどのフロアで会ったんですか?」

「ん?この1つ上だよ。

でも村基君。未婚の女性をお母さんって呼ぶと失礼になるかもだから気を付けた方が良いよ」

「え、じゃあ一緒に居た小さな女の子は歳の離れた妹さんだった?」

「いやいや、どこから小さな子が出てきたし」

「!?」


そこまで話してようやく合点がいった。

どうやら俺は酷く勘違いしていたらしい。

俺が見た時は仲良さげで2人と1匹が並んで歩いてたからてっきり親子なんだと思ってたけど、実際には盲目の女性と盲導犬に付いて行ってた無関係の女の子が1人付いて行ってただけだったんだ。


「先輩たちが会ったのは何分前くらいですか?」

「え?うーん、村基君たちに会う10分前くらいじゃないかな」


つまり俺が見かけたすぐ後くらいか。

これが俺の思い過ごしで、実はその女の子の母親がすぐ近くに居たとか女の子が自力で家族の元に戻ったのであれば良い。

もしくは親の方が気が付いて連れ戻していたかもしれない。

だけど例えば俺が見た時点で既に親とはぐれて結構な時間が経ってたりしたら?

親も自分の買い物に忙しくて気付いてないとかあり得る話だ。

こういう時って良くない方向に当たるんだよな。

でも可能性の段階なのにデートをすっぽかすのも姫乃に悪いだろうし。

そうやってあれこれ考えてたら袖を引かれた。


「えっと、一会くん。ひとまず店内で悩むとご迷惑ですし、その、じっと下着を睨んでる姿はちょっと外聞が良くないと思います」

「え、ああ。そうだなっ」


言われてみれば視線の先にあるのは女性ものの下着だった。

それを見ながら云々唸ってたら通報されてもおかしくない。

俺達はそそくさと店の外に出て邪魔にならない様に壁際に集まった。


「それで一会くんの事ですから、また何か事件ですか?」

「またって。まぁまだ可能性の話なんだけどな」


俺は掻い摘んでここまでの情報をみんなに伝えた。


「つまり盲導犬に興味を引かれた子供が親元を離れて迷子になっているかもしれない、と」

「ああ。俺の取り越し苦労の可能性はあるんだけどな」

「じゃあ手分けして確認しましょう。その子供の特徴は分かりますか?」

「って、良いのか?」

「もちろんです。それに先に解決しないと一会くんはデートどころじゃないですよね」

「まぁ確かにな」


姫乃の言う通り、どこかで小さな子供が泣いているかもしれないと考えると呑気に遊んでる気分じゃあない。

いざとなったら姫乃には後日埋め合わせをさせてもらって、俺一人で探すことも視野に入れていた。

でも確かに姫乃の性格を考えれば手伝うって言うのは分かりきってることだったな。

そして同じことが先輩たちにも言えた。


「そういう事なら私達も手伝うわ」

「しゃあないね」

「先輩たちもありがとうございます」


以前何度か危ない所を俺に助けられた事があるという瑞樹先輩は積極的に、綾香先輩は仕方ないなといいつつも全く嫌な様子は無い。多分根が優しい人なんだろう。


「そういうことなら、姫乃はまず迷子センターに行ってくれ。もしかしたら既にその子の親が行ってたり迷子が見つかった後かもしれないから」

「分かりました」

「先輩たちは盲導犬の女性に会った所に向かってください。

そこからこっちに戻る様にしながら上のフロアで迷子の子が居ないか探してください。

出来れば女子トイレとかも。俺じゃあ確認できませんから」

「分かったわ」

「俺は逆に俺が見掛けた場所からこっちのフロアをぐるっと回ってみます。

子供の特徴ですが、ぱっと見は3歳くらいの女の子。上は白で下は赤系の服だったと思います」

「それだけ分かれば十分。というかよく覚えてるね」


先輩が感心したように言ってくれる。

何というか癖みたいなものだ。

そのお陰でよく困ってる人を見つけてしまうって言う事もあるんだけど。



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