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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第12章:望んでいた日常
182/208

182.駅前で待ち合わせ

土曜日の朝。

家を出る前にチラリと鏡を見れば、そこにはいつも通りの俺がいた。


『一会くんはいつも通りで良いですからね』


昨日の別れ際、今日はどういう格好にしようかと尋ねたらそう返事が返ってきた。

一応今日は付き合い始めて初のデートって事になるんだけどそれで良いのだろうか。

その後にこう言われて納得したけど。


『一会くんがお洒落したらキヒトさんっぽくなりそうじゃないですか』


確かにバイト中のあの姿は執事っぽくを意識しながらお洒落した結果だからな。

勿論、別の路線でコーディネートすれば良いのだけど、それでも今よりも身バレの可能性は上がる。

良くも悪くも村人と執事を結び付ける人は居ない。

なので今日も冴えない村人Aの一会だ。

まぁ姫乃がこれが良いって言うんだから問題ないな。


そしてデートならばと駅前で待ち合わせにしたんだけど、姫乃は先に来ていた。

まだ待ち合わせの時間まで30分あるんだけど一体何時から来ていたのか。

……にしても目立つなぁ。

道行く男性が例外なく振り向いてるし、彼女連れの場合は腕を抓られるのまでセットだ。


「ねぇねぇ君どこの子?誰かと待ち合わせ?」

「この辺じゃ見かけないよね。他所から来たの?」

「……」


おぉ、典型的なナンパ君2人組の登場である。

これも待ち合わせの醍醐味というやつだろうか。

姫乃は姫乃でチラッと見ただけで無視することに決めたようだ。

なおも色々とナンパ君達が話し掛けるが暖簾に腕押し。

その様子はかなり注目を集めてるし「ねぇあれ警察に通報した方が良いんじゃない?」なんて囁き声まで聞こえてきた。

そろそろ出ていった方が良いかな。

と思った所で事態は進んだ。


「聞こえてんだろ。無視すんなや」


痺れを切らしたナンパ君Aがあろうことか姫乃の腕を掴んだ。

それでも姫乃は顔色1つ変えない、いや正確にはナンパ君達を見る目が1段冷たくなった。


「痛いです。離してください」

「あん?これぐらいで痛い訳ないだろっ」

「急に女性の身体に触れるなんて、ナンパかと思ったら痴漢でしたか」

「こいつ、ちょっと可愛いからってお高く止まりやがって。

いっそ路地裏に連れ込んで教育してやった方が良いんじゃないか!」


あくまて淡々と告げる姫乃に対してどうやら引き際を見失ったようだ。

ナンパとしては越えては行けない一線を越えてしまった。


「それは良いな。ちょっと教育してやる」

「アガッ!?」

「イギッ!?」


足音もなく近付いた俺はナンパ君達の頭にアイアンクローを掛けながら上を向かせる。

握った所からミシミシ音がするけど、これくらいじゃ頭蓋骨は割れない。

多少陥没するくらいだ。


「姫、ちょっとコイツらに教育を施してきやすんで3分ほどお待ちくだせぇ」

「あ、うん。手早くね」


先程とはうってかわって柔らかい笑顔で俺を見た姫乃は、しかし慈悲を与えるような事は言わない。

それくらい彼らは間違えたのだから。


「おらサッサと歩け」

「くそっ、誰だこのやろ、アダダダダッ」

「てめ、警察呼ぶぞゴラ、うぎゃあぁ」

「黙って歩かねぇとその無駄な両足へし折るぞ。

あとさっきの様子は一部始終撮影しておいてやったから後で晒しておいてやる」


すぐ近くの路地裏で優しく指導を終えた俺は姫乃の元へと戻った。

のは良いんだけど、なぜか姫乃がジト目で俺を迎えてくれた。


「まずは場所を移しましょうか」

「……だな」


人目を避けるように駅のホームに向かう俺達。

流石にそこまで行けばもう大丈夫か。


「で、一会くん。さっきのはなんだったの?

あれじゃあまるで私、どこかの組長の娘みたいじゃないですか」

「確かに。お嬢様に手を出した身の程知らずが制裁された図だったな」


俺も意図して本名ではなく『姫』って呼ぶようにしたし。

これで今後変な奴が姫乃に近付かないなら俺としては良かったと思う。



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