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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第12章:望んでいた日常
181/208

181.今日は主夫

学校が終わった俺達は早速家に帰ってデートの計画を、と行きたいところだけど、残念ながら今日は姫乃がバイトの日だ。

なので俺は姫乃の部屋に来ていた。


「よし、やるか」


もちろん掃除をだ。

決して家探しなどではない。

休みの間に姫乃と話し合った結果、基本的に俺の部屋を使おうかって話が出た。

でもその場合、俺の部屋は俺がするのは勿論、姫乃も掃除とかしてくれるだろう。

なら姫乃の部屋はどうなるのか。

家に帰った後で姫乃が一人でやるのか?

それだと姫乃が余計な苦労をすることになる。

お互い学生とはいえバイトもしてるし、疲れて帰ってきて部屋の掃除までやるのは大変だ。

ならバイトの無い方が掃除をしようか、という案が出た。


「いや、俺は良いんだけど姫乃は?

自分の居ない間に部屋に上がられるの嫌だったりしないのか?」

「他の人なら嫌ですけど一会くん(かぞく)なら大丈夫です。

あ、気になるなら下着とか漁っても良いですよ」

「いや興味ないから」

「えぇ〜」


そんな会話を経て、お互いに鍵の交換をしつつこうして掃除をすることになった訳だ。

とは言っても、姫乃は元々綺麗好きだから軽く掃除機を掛けて水回りを綺麗にしたら終わりだ。


「……買い物でも行くか」


チラリとメールをチェックすると姫乃から1通届いていた。


『今日はシチューが良いなぁ』


ふむ。今日はリクエストありか。

ちなみにリクエストが無いときは自分の好きなものや食べたいものを用意することになる。

これもお互い料理がそこそこ出来る故の工夫だ。

今まではバイトがある日は帰りが遅くなるからそこから料理をするのは大変だった。

これなら時間もあるし多少手の込んだ料理も出来る。

またどちらかが凄く上手って事もないからちょっとくらい失敗しても笑い話で済むし、お互いの味覚を確認し合うって意味もある。

あと、玄関開けたら夕飯の香りがするっていうのはちょっぴり嬉しいものだ。

買い物から帰って夕飯の下拵えをすませて、時計を確認すればまだまだ時間に余裕があった。

この余った時間で何をするか。


「……」


ふと目に入ったのは姫乃のベッド。

普段から姫乃が使ってる枕に顔を埋めれば姫乃の匂いがするのだろうか。

と、そこまで考えて頭を振る。


「いかんいかん。

流石にそれは変態だ」


姫乃が知ったらどんな顔をするか。


『一会くんって匂いフェチだったんですね』


とか蛆虫を見る目をしながら言われてしまうだろうか。

いや流石に姫乃に限ってそれはないか。

むしろ、


『最初から言ってくれればもっとクンクンさせてあげるのに』


って言って着ていたコートの前を開けて俺を迎え入れてくれたり。

そもそも、この前は姫乃が俺のベッドで枕抱えながら寝てたんだから、


『実は私も一会くんの匂いが大好きなの。

だから枕を取り替えっこしましょう。

あ、でもエッチな事には使わないでくださいね』


とか言い出したり。

更にそんなこと言ってた姫乃の方が、ってだめだ。

これ以上の妄想は危険だ。

やっぱり姫乃の部屋に俺以外誰も居ないってが問題なんだよな。うん。

先輩は俺達の事を老夫婦とか言ったけどまだまだそこまで達観出来ている訳ではないんだ。

年相応に色々興味は尽きないのだ。

だから仕方ない、とは言わないけど。


「さて、馬鹿な事考えてないで夕飯の準備を済ませてしまおう」


そうして夜も21時を過ぎた。

1月の今はかなり冷え込む。

俺は手をコートの中に突っ込みながら待っていた。


「お先に失礼します」


その言葉と共に裏口から外に出てきた人影にそっと近付き、すぐに見つかった。


「一会くん?」

「よ、バイトお疲れ様」


扉を出た所で周囲を見回し、尚且つこっそり動いてた俺の事まで気付いた事に感心した。

普通はこういう仕事から開放されたって瞬間や、もうすぐ家に着くって瞬間は気が抜けるものだ。

ストーカーに尾行されたり襲われたりするのもそのタイミングが多いと聞いたことがある。

だけどこの様子なら姫乃は大丈夫そうだな。


「ほい」

「手?って、あったかい」

「懐で温めておいた」

「いやいや、草履じゃないから」


そんな馬鹿なやり取りをしつつ家路を進む。

するとぽふっと繋いでた方の腕が抱き締められた。


「うん、あったかい」

「冬の醍醐味だな」

「夏でもやりますけど?」


駄目ですかと聞かれたけど勿論駄目な訳がない。

俺達はのんびりと夜の散歩を楽しみながら帰宅した。



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