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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第12章:望んでいた日常
180/208

180.この熟年夫婦め

「お前らはどこの老夫婦だ」

「「えっ?!」」


学園での昼休み。

みんなに普段どう過ごしてるのかって聞かれたから、先日の内容を多少ぼかして伝えたら黒部先輩にそう突っ込まれた。

姫乃も俺と一緒に驚いてる所を見れば俺だけ変だと言うわけでは無さそうだ。

だけどその様子を見たみんなは更にため息をついた。


「おしどり夫婦と言えば聞こえは良いがな」

「おふたりが良いならそれで良いのではないですか?」

「いや、それにしたって付き合いたてカップルなんだぞ?

もっとこう、あるだろ。

それがやれお茶が美味しいだの日向ぼっこが気持ちいいだの。

そういうのは定年退職してからで良いんだよ」

「「えぇ〜」」

「ダメだこの熟年夫婦」


俺達が一緒になって不満の声を出したら激しく溜め息をつかれてしまった。

そりゃあハル達みたいに明確な趣味があればそれをするのもありなんだけど、俺達は特に無いしなぁ。

これから色々発掘してみるのは楽しそうだけど、まずはのんびりと過ごす時間も大事にしたい。

将来、お互いに仕事を始めたら一緒の時間も減ってしまうだろうし、気兼ねなく居られる今だけの贅沢とも言える。


「まったく、家に居るだけならデートのひとつでもしてくれば良いだろ」

「おお、デートか。黒部先輩も良いこと言うな」

「なるほどそれは有りですね」

「そこでその発想は無かったって顔すんな!」


もう何度目かの溜め息をつかれたけどデートは良い考えだ。

折角だし今度休みが合う日に出掛けるか。

姫乃も乗り気だしどこか遊びに行くか買い物に行くか。

映画とかは何やってるか次第だしお互いに好きなジャンルがあるか確認するところからだな。

ただそれもこれも俺一人で決める必要はない。


「じゃあ学校が終わったらどこ行くか考えるか」

「ですね」


デートって言うとどちらかが行き先を考えてエスコートするって人も多いとは思うけど、姫乃はそういうのを相手に依存しなさそうだし、何より一緒にどこで何するかを考える時間も楽しいと思う。

姫乃の目を見ればニコリと頷いてくれるのでその認識で間違ってないのが分かる。

その目は今から楽しみですねってところか。

ああ、そうだな。


「だからお前ら、ちょいちょい目で語り合うな」

「そんなこと言ってもなぁ」

「大丈夫です。ちゃんと口にして欲しい事は言ってくれますから」


皆の前で言われると困りますけど、とはにかむ姫乃を見てみんなも何とも言えない顔をしてしまった。

最近ではクラスの男子もそんな姫乃の姿を見かけて意識を奪われているのもちょいちょい見かける。

俺はもう年明けからずっと間近で見させてもらってるから照れることも無くなったけど。

でもこうして笑顔を見せてくれるのは安心する。


「そこでナチュラルに惚気るな。微笑み合うな!」

「そんなこと言ってもなぁ」

「普通にしてるだけですから」


俺達としてはちゃんと自重してるつもりなんだけどな。

頭撫でたりするのも周りに配慮してるし。

お陰で時々姫乃が物足りなそうにしてるから休み時間にこっそり教室を抜け出して頭ぽんぽんしに行く事がある。

もちろん皆には内緒だ。きっとお手洗いか何かだと思っているはず……


「無駄ですよ先輩。

ふたりして周りに気付かれてないと思ってるみたいですが色々バレバレですからねぇ。

以前の一会君なら考えられない事です」

「え、そうなのか」


ハルのその言葉に驚く俺。

言われてみれば確かに教室に戻った時にみんなそれとなく視線を逸らしていた気がするけどそういう事だったのか。

特に気にしてなかったな。

もっとも、皆から悪意が感じられなかったからっていうのも大きいと思う。

敵意や下心があればどんなに腑抜けてたって見逃したりしない。


『幸せな時ほど警戒すべきだ。

そうじゃないと一瞬にして大切なものが奪われて後には後悔だけが残るからな』


今ある幸せを守るのは俺の使命だからな。

誰にも、例え神様にだって奪わせはしないさ。



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