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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第12章:望んでいた日常
179/208

179.のんびりと

お昼ご飯を食べ終えた俺達はお茶を飲みながらまったりと過ごしていた。

お互いに特別これといった趣味がある訳でもない。

かと言って空き時間は予習復習に使う程、勉強熱心でもない。

なのでほんとうにまったりと雑談などを交わしている。


「あ、種噛んだ」

「ふふっ、またですか」


みかんを食べていたらカリッと歯ごたえがあって、続くちょっとした苦みに顔を顰めていると姫乃がおかしそうに笑っていた。

姫乃の食べているみかんにも当然種は入ってるんだけど、綺麗に取り出して食べていた。


「細かい所の所作が村人Aと姫様では違うということか」

「一会くんの場合は、興味のない所には手を抜いてるだけにも見えます。

その証拠にみかんの皮は綺麗に剥いてますし」

「こういうのは綺麗に繋がってた方が気持ち良いだろ?」

「じゃあ林檎の皮剥きとかも?」

「もちろん。薄く速くどこまで途切れさせずに剥けるかチャレンジするのが毎回の楽しみだ」

「てっきり丸かじりするんだと思ってました」

「包丁が無い時はな。

そう言う姫乃は林檎でウサギとか作りそうだ」

「……良く分かりましたね。

タコさんウィンナーと並んでお弁当箱に入ってるとテンション上がります」

「じゃあ春になったらお花見弁当はそれで行こう」

「はい」


そんな取り留めもない会話をしながらゆっくりと過ごす。

これが平和ってものなのかもしれない。

こんな日々がずっと続けば良いなと思うけど、そうはいかないのが世の中ってものなんだろうな。


「一会くん、明日はバイトですか?」

「だな。21時までだから帰ってくるのは22時前か」


俺の返事を聞いた姫乃はちらりと俺を見た。


「またキヒト様として女の子を誑かして来るんですね」

「俺としては普通に接客してるだけなんだけどな」

「その普通に問題があるんですけど。

あんまり女の子を泣かせないでくださいね」


俺にその気はないんだけどな。

ただ掲示板とかを見るとクリスマス以降、色々と炎上しかけてるんだよな。


「やっぱりクリスマスの時に頑張りすぎたか」

「私としては一会くんに自覚がないのが1番の問題だと思います」

「そんなになにか変わったのか?」

「はい」


即答されてしまった。

俺の事を1番近くで見てくれてる姫乃が言うんだからそうなのだろう。


「何か直した方がいい?」

「……いえ。諦めましょう」

「もう手遅れか」


あっさり降参された。

そこまで絶望的だったか。困ったものだ。


「そういう姫乃は大丈夫なのか?」

「私?何がありましたか?」

「バイト先でナンパされたりとか」


俺の疑問を聞いた姫乃はちょっと嬉しそうだ。

別に喜ぶような事を言ってないと思うんだが。

やっぱりまだまだ姫乃に対する理解が足りてないな。


「一会くん、それは嫉妬ですか?」

「いやただの心配だな。

時々バイト中の女の子に惚れた馬鹿が仕事終わりの女の子の後をつけたり、そのままストーカーになるって話があるし」

「確かに。でも大丈夫ですよ。

私の場合は田舎風にイメチェンしてるので特別目立ってはいませんから」

「あれの魅力が分からないとは世も末だな」

「ふふっ」


ちょっと温くなってきたお茶を啜りつつのんびり。

普通に考えれば退屈じゃないかなって心配になるが、姫乃も俺に肩を寄せつつまったりしてる。


「姫乃は何かしたいこととかないのか?」

「え、うーん。特には。

こうして一会くんとのんびり時間を過ごすのは好きですし、こういう時間が貴重だって知ってますから」

「そっか」


後半の言葉は何だろう。

過去にそう思える出来事があったのかな。

まさか俺みたいにキヒトの夢を見ている訳でもないだろう。

……キヒトは子供の頃を除けばゆっくりしてる暇なんて無かったからなぁ。

それを思えば、確かにこうして好きな人とのんびり過ごす程の贅沢はなかなか無い気がする。



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