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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第12章:望んでいた日常
178/208

178.ただいま

先輩と別れた後、今日はバイトも入れてないのでそのまま帰ることにする。

あ、その前にメールを1本打っておくか。

返信は、まぁすぐに見るとも限らないしな。

そうして自分のマンションの扉の前に来た俺は鍵を開けて中へと入った。


「ただいま~」


あれ、てっきり返事が返ってくるかなって思ったけどないか。

玄関に姫乃の靴があるし姫乃が来てるのは間違いないと思うんだけど。

首を傾げながら部屋の中に進めば理由は分かった。


「……」

「寝てるし」


姫乃はなぜか俺の枕を抱えるようにしながらベッドで昼寝をしていた。

私服に着替えてるところを見ると一回家に帰ってから来たんだな。

台所にはみじん切りになった食材と冷ご飯、卵が用意されいるところを見るとオムライスかな。

後は火を通せば完成だ。

多分お昼ご飯の準備をしながら俺の帰りを待っていてくれたんだろう。

ただ待っている間にベッドでゴロゴロしていたらそのまま寝てしまったと。


「……うに」


ごろんと寝返りを打つ姫乃。

起こすのも可哀そうだしそのままにしておいてあげようかな。

などと思いつつ鞄を置いて私服に着替えた俺はベッドの横に腰を下ろして姫乃の顔を覗き込んだ。

うーん、実に無防備だ。

俺が狼だったら今頃姫乃は食べられてしまっているな。

まあ流石にここで襲い掛かったら後で怒られるか泣かれるかしてしまいそうなので絶対にしないけど。


「でもま、ちょっと悪戯するくらいは良いかな」


顔に掛かった髪をそっと払いながら、その柔らかそうな頬っぺたを人差し指で突いてみる。

おぉ、ぷにぷにだ。


「んん……」

「おっと、起こしちゃったか」

「……んふ」


セーフ。

でもこれ以上突いてると流石に起きるか。

ならばとその頬をそっと撫でてみたりしてみる。

これもスベスベな肌触りが気持ちいい。

姫乃もほんのり赤くなりながら笑顔で寝ているところを見ると良い夢が見れてるのかもしれない。

……もうちょっとくらいなら大丈夫か?

俺は身を乗り出して姫乃の頭を抱えるように手を伸ばして髪の毛を撫でながらそっと耳元で囁いてみた。


「大好きだよ」

「私もです」

「!?」


慌てて顔を離してみればばっちり姫乃と目が合った。

どうやら起きていたらしい。


「えっと、いつから?」

「悪戯してもいいかな、って一会くんが言ってたところからですね」


つまり最初からだったようだ。

まさか悪戯をしかけたと思ったら逆に嵌められていたらしい。


「エッチな事されるのかなって思ってドキドキしてたんですけど、流石ヘタレの一会くんです」

「いや寝込みを襲ったりしたら姫乃でも怒るだろ?あとヘタレじゃないし」

「怒らなかったらするんですか?」

「……姫乃が喜んでくれるなら、かな」


そういうシチュエーションがどうかと言われたら、まぁノーコメントだ。

でも一番大事なのは姫乃が喜んでくれるかどうかで、俺の独りよがりならしなくて良い。

もしかしたら姫乃に襲われたい願望があったりするのかも、とか一瞬考えてしまったけど危ないので慌てて頭の中からその考えを追い出した。


「さ、それよりお昼ご飯だな」

「ご飯なら仕方ないですね。誤魔化されてあげます」


ようやくベッドから起き上がった姫乃と2人で台所に向かう。

お揃いのエプロンを付けてさあ料理を、と思ったけど後は焼くだけか。

分担して出来るならともかく、コンロは2口のがあるだけだからな。

両方使うにしても狭いし、そもそもフライパンは1つしかないんだ。


「いつかさ」

「はい?」

「もうちょっと広い部屋に引っ越した時にはキッチンは広めの所を選ぼうか」

「……そうですね。進学先の兼ね合いもありますし、学園を卒業したら、ですね」


俺の提案に顔を赤くしつつも頷いてくれた。

要は暗に同棲しようって事なんだけど断られなくて良かった。

今日からは学園も始まったので冬休み中みたいにずっと一緒に居るって訳にもいかないし、放課後はこうして家に来てくれても夜には姫乃の部屋に送り届けないといけない。

一人暮らしに慣れてはいても、やっぱり朝となりに好きな人が居てくれる幸せは特別だからな。

卒業まであと2年。長いようで、やっぱり長いな。



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