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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第12章:望んでいた日常
177/208

177.別の女に会いに行く

いつもお読みいただきありがとうございます。

気分転換のエッセイとか確定申告どうしようかとかやってたらストックが尽きてましたorz

今週毎日投稿出来るかあやしいですが、のんびりお待ちいただければ幸いです。


3学期初日と言うこともあり、始業式を終えれば今日は午前中に解散となる。


「一会くん、この後の予定は?」

「あ、ごめん。今日はちょっと人に会う約束があってな」

「……女の人?」

「ああ」

ガタガタガタガタッ!!


姫乃の質問に答えた瞬間、クラス全員の視線が俺を射抜いた。

驚き、疑念、興味、……殺意?

様々な感情が籠められたそれらは俺の次の言葉次第では物理的に襲い掛かってきそうだ。

だけど次に言葉を発したのは俺ではなく姫乃だった。


「じゃあ先に帰ってるね」

「知らない人に付いていかないようにな」

「子供じゃないんだから大丈夫ですよ」

「「……」」


まるで何事も無かったように鞄を持って立ち上がる姫乃を皆はUFOにでも遭遇したかのように驚いて見ていた。


「え、あ、あの姫様。それでいいんですか?」


そう訊ねてきたのは以前姫乃と遊びに行ったことのある女子だな。

ただ問われた姫乃は何の事か分からない様子だ。


「なにがですか?」

「何がって村基君が姫様とは別の女子に会いに行くんですよね。

その、浮気とかそういう心配はしなくて良いのかなって」

「ああ。大丈夫です」


あっさりと迷いなく答えた姫乃の声には聞く人を安心させる力があるようだ。

一触即発だった空気がいとも容易く霧散してしまった。


「一会くんは私に黙って浮気とかしないし、それに何かあれば殴れば良いって今年はおみくじで有りましたから」

「「はっ。その時はぜひ俺達の拳をお使い下さい!」」


続けて冗談ぎみに言った言葉に膝を付く勢いで追従する男子たち。

その光景に改めて今年も姫様は健在なんだなと妙な感慨を覚えてしまった。

これがどこぞのアイドルとかだったら恋人が出来ただけでファンだった男共から勝手に裏切られたとか言われていたところだ。

姫乃のカリスマはアイドルごときは足元にも及ばないってことだな。


「……なぁ、なんで一会がドヤってるんだ?」

「自慢の彼女の凄さを再認識出来たからじゃないですか?

僕だって謡子ちゃんが賞賛されると嬉しいですし」

「ああ、なるほど?」


ともかく皆と別れた俺はひとり空き教室へと向かった。

そこには既に女生徒がひとり俺の事を待っていた。


「お待たせしました、先輩」

「ううん、私もさっき来たところだし」


俺の顔を見て嬉しそうに笑ったのは瑞樹先輩だ。

2学期の終わりに俺に告白してくれて、でもその時は俺の方に返事をする余裕が無かったから待ってもらっていた。

ただ不思議なのは先輩の様子だ。

もう既に姫乃との事は伝わっている筈なので、俺の返事は言う前から察してると思う。

なのに笑顔なのは何故なのか。

その答えはすぐに分かった。


「今日はわざわざ時間を作ってくれてありがとう。

まずは姫様と付き合えたことにおめでとうで良いのよね?」

「はい、ありがとうございます。

これも先輩のお陰だったりするんですよ」


実際、あの時先輩が告白してくれなかったら俺の心は今でも芽を出して居なかったかもしれない。

そうなると姫乃への恋心を自覚できるのはもっと先。

もしかしたら胸の痛みに耐えかねて姫乃と距離を置くって選択肢もあったかもしれない。

先輩の本気の想いが俺の固まった胸板に楔を打ち込んでくれた。

だから正真正銘、先輩は俺の恩人だと言って間違いない。


「ね、幾つか聞いても良い?」

「もちろんです」

「じゃあ最初の質問です。

今後、私が村基くんの近くに居たら迷惑かな?」

「いえ全然」

「姫様も怒ったりしない?『私が居るのに他の女を傍に置くなんて』みたいに」

「それだったら今日ここに来れてないですよ」

「そっか。だよね」


姫乃とは正式に付き合う事になってから1つ約束をしている。

それはお互いに相手を束縛しないことだ。

お互いにやりたい事をやる。やりたくない事をやらせない。

当たり前のように聞こえるかもしれないけど、結構大事な事だと思っている。

もし仮に姫乃が俺と一緒に居たくないと思ったとしたら、それはそう思わせた俺に問題があるんだ。

無理に「一緒に居ろ」と言って近くに居させても心はもう遠くに離れていってしまっているだろう。

だから俺が先輩に会う事を姫乃は止めないし、逆に姫乃が誰か男子に会いに行くことを止めたりもしない。

勿論危険な事なら止めるか付いていくかするけど。


「じゃあ次の質問。

もし仮にだよ。仮に姫様が居なかったとしたら私にチャンスはあったのかな。

村基くんから見て私は異性としての魅力はありそう?」

「そう……ですね。その前提に意味があるかは悩みますが。

ひとつ言えるのは、俺の目から見て先輩は十分に魅力的な女性だと思いますよ」

「そっか。うん、よかった。

じゃあ最後はお願いになるんだけど、村基くんの次の隣の席は私でお願いします。

今後姫様と別れるなんてことがあったら、次は私を彼女にしてください」

「は?」


真摯に頼み込むその姿は先輩が冗談で言ってる訳ではないことを伝えてくる。


「好きな人が他の人を好きだからって嫌いになる訳じゃないし、諦めなきゃいけないルールも無いでしょ?

あ、私としては姫様が許すなら2号さんでもいいわよ」

「まぁ先輩がどうするかは先輩のですけど」


茶目っ気たっぷりに言う先輩は無邪気な小悪魔って感じだ。

それはそれで先輩の魅力なんだろうけど。

この話を聞いた姫乃がどんな反応をするのか今の俺では想像もできない。



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