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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第10章:季節外れの萌芽
160/208

160.ボスラッシュみたいなもの

システムAIに頼んで移動した先にあったのは、もう何年も前に放棄された寺院だった。

これも夢の中と同じ。

ならこの寺院の地下にあるものもきっと同じだろう。

ここは魔神復活を企む組織の重要拠点の1つだ。

夢の中では世界中を歩き回って漸く見つけたものだけど、正解を知っているのならこうして途中のアレコレを無視して襲撃できる。


「ここを今のうちに潰せば復活する魔神の力を減退させられる筈だ」


そう考えて1歩踏み出した所でぞろぞろと出てくる魔物たち。

どうやら簡単には攻略させてくれないらしい。

俺は父さんがくれた剣を振りかぶり、先頭の魔物の急所に突き立てた。


バキッ!

「やっぱオンボロ過ぎだろ」


ただの1撃で根元から折れた剣にため息を吐く。

キヒトの時は何とか街まで持ってくれたけど、その時とは魔物の強さが桁違いだから仕方がない。

俺は今の攻撃で怯んだ魔物から武器を奪い戦いを続けるのだった。


…………


そうして。

幾つかの拠点を潰した俺は、やっと最後の場所へと来ていた。

この先に魔神の魂が封じてあるはずだ。

ただゲームでありがちだけど、当然ラスボス前は魔物も強そうだ。

最初に潰した拠点でボス顔してた魔物が一般モブ面して闊歩してるしな。

このレベルの魔物が出てるってことは夢の中なら一度突撃して魔神復活が止められない事を確認した後、女神の神殿で武器を手に入れた後の状態だな。

こっちは手元に真面な武器は無いんだけど、こんな事なら神殿に寄ってくるべきだったか?


「いや、無駄か」


自分の胸元を見れば黒く染まって、しかも大きくひび割れていた。

これは最初の拠点を潰した時から出来ていて、各拠点を潰す度に大きくなっている。

恐らく呪いの一種なんだと思う。

ただ気になるのはこの呪いは魔神のものなのかどうかって事だけど。

まあそこは考えるのは後でも良いか。

今一番の問題は眼下に見える魔物の大軍を突破しないといけない事だ。


「全くハード過ぎだろ」


真面な武器もない。サポート(シロノ)も居ない。おまけにこの呪いだ。

絶対難易度設定間違ってるだろう。

いやこれがRPGなら本来ならどこかで経験値稼ぎとかしてから来いって話か。


「それでも立ち止まる気は無いんだけどな」


今やってることはただの自己満足で、夢の中の彼女(シロノ)に何の影響も無いのは間違いなく、この世界で同じ使命を背負った少女が居たとしても俺がログアウトした後で全部元通りになる可能性が高い。

それでももしかしたらと考えたら、やらずに逃げ帰れば待っているのは後悔だ。

後悔しない唯一の方法は常に全力を尽くすことだというのは祖父の受け売りだ。

半端にやって、あの時もっと頑張っておけば、なんて考える余地があるから後悔なんてするんだって。


『たとえ心が砕け散ろうとも前に進め』

「はいはい」


俺に直接語り掛けてくるような声。

胸の呪いが大きくなるにつれて段々と鮮明に聞こえるようになってきた。

聞き覚えのあるようなこの声は、口調からしてキヒトだと思う。

自分の声を録音して聞くと別人に聞こえるように、夢の中の自分キヒトの声っていうのは違って聞こえてたからな。

でもま、ここで全く関係ない人でしたなんて事も無いだろう。

言ってることも仮に俺に兄貴でも居たらこんな感じの言葉を投げかけるだろうなってものばかりだし。


「じゃあ行きますか」


気合を入れなおした俺は魔物の群れに突撃していった。

ただこれ、気合でどうこう出来るレベルを超えていると思う。

倒しても倒しても減った気が全然しないし。


「せめてここに夢の中みたいにシロノが居てくれたら違ってたかもしれないな」

『たとえ誰であろうとシロノを渡す気はない』


あーそうですか。

そう言うセリフは俺じゃなくて本人に言ってやれよ。


『それに。ふっ』

「なんだ?」

『お前の想い人(パートナー)は別に居るだろう?』

「誰の事を言って……って、しまった!」


大型の魔物の背後から小さい魔物が飛び出してきて俺の背後を狙ってきた。

こっちは目の前の魔物の攻撃を何とかするので精一杯だっての。

ここまで何とか致命傷を受けることなくやってこれたけど、これはまずいか。


「一会くん!」


聞きなれたその声と共に背後に回っていた魔物が1撃で真っ二つになって消えた。

そいつ小柄だけど結構強い筈なんだけどな。

まさかと思いつつ後ろを見れば、いつぞやのARゲームをした時みたいな姿の姫乃が立っていた。

実際にはより美しく魅力的で、目が合った瞬間に嬉しそうにほほ笑むその姿に、思わず今が魔物との決戦の最中だということを忘れて見惚れてしまう程だった。

だけど同時に胸の呪いが大きく脈打つのだった。



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