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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第10章:季節外れの萌芽
159/208

159.神の思惑なんてしらない

いつもありがとうございます。

ここから一会視点に戻りつつ、時間軸も研修2日目に戻ります。


~ 一会 Side ~


VRマシンを起動すると、俺は暗い闇のなかに立っていた。

チュートリアル空間というか中継地点みたいな場所だろうか。


「しかし何もないな」

『ようこそ想定外の因子(イレギュラー)の記憶を持つ者よ』

「ん?」


せめて星空なり緑の草原なり用意すればいいのにと思ってた所で前方やや上方に光の玉が現れた。

どうやらこれが案内役らしい。

それよりなんのことだ?


「イレギュラーってなんだ?」

『神すら予想していなかった存在。

ただの村人であり、それ以上ではなかった者。

誰からも見向きもされずに死ぬはずだった存在。

自分のレールから外れたが故に封印の姫巫女の生け贄となった憐れな存在』

「生け贄ねぇ……」


なんとなく、夢の中の出来事の事を言ってるんだろうなってことは分かった。

それをどうしてVR空間を構築しているAIが知っているのかは分からないけど。

まぁ、経緯や原因は後回しでいいな。

事実としてそうだと言われているのだから。

しかしそうか。

さっきの説明ではリアルの役が適用されるって話だった。

つまり俺は村人A、キヒトと同じ状態で活動することになりそうだ。

それならある意味、勝手知った世界なので過ごしやすいだろう。

キヒトみたいに冒険者にならずに、村で生活を続けていたらどうなるのかを体験してみるのも面白いかもしれない。

と、思っていたのに。


「父さん」

「おうどうした」

「……」


地上に降り立った俺の前に居たのは夢で何度も見たキヒトの父親、を数年歳を重ねたらこうだろうなって男性だった。

ということは本当に俺はキヒトと同じになったってことか。


「今って何年だっけ」

「ん?大陸歴1054年だぞ」


いやいや。

本物のキヒトの父親ならそんなすんなり答えられないからな。まぁ分かりやすくて良いんだけど。

お陰で夢の中に迷いこんだ訳では無いことは分かった。

しかし1054年か。

夢の中であればキヒトは冒険者になっていて、シロノと再会を果たしてる頃だろうな。

魔神復活まではまだ時間があるし今日明日でこの世界がどうにかなることは無いだろう。

気になるのは本当にこの世界が夢の中とほぼ同じだと言うのであればキヒトがここに居るのはおかしいってことだ。

冒険者になっていないってことはシロノと再会することもないし魔神復活を阻止することもないだろう。

ただ、さっきの光の玉が言ってた事を信じれば俺なんか居なくても問題無かったのかもしれない。

でもそうするとシロノ1人で奴の相手をしないと行けないのか。

それは、看過できないな。


「はぁ。仕方ねぇなぁ。

ほれ。これでも無いよりマシだろ」

「え?」


俺があれこれ考えていたら父さんが大分くたびれた剣と小盾を差し出してきた。

それはキヒトが冒険者になるために村を出るときにも餞別だって渡されたものと同じだった。


「どうして?」

「俺が何年お前の父親をやってると思ってるんだ。

また誰かの為に無茶しに行くんだろ?」

「まあ……うん」

「なら死力を尽くしてやりきって来い。

で、やり終えたら生きて帰ってこい」


生きて、か。

結局キヒトは村から出た後、生きて帰ってくることはなかった。

その未来もここでは変えられるかもしれない。


「後はまぁ、可愛い嫁さんと孫も居れば上々だ」


そう言って父さんは俺の頭をベシベシと叩いた。本人的には撫でてるつもりなんだろう。

全く不器用な父さんだ。

じゃあなと手を振りつつ去っていく背中を見送り、俺はこの後の事を考えた。

行きたい場所は、まぁ決まっている。

問題はそこまでどう行くかだ。

普通に歩いてたら数週間かかる距離だからな。

……困った時の神頼みか。


「システム」

『はい』

「目的地までの移動時間を短縮したい」

『地名を指定頂ければその地の入口へ転送致します』


よし。流石VRの世界だ。

そういうサポートもあると思ってた。



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