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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第10章:季節外れの萌芽
157/208

157.ひとまず無事だった……

VRマシンに乗り込んだ私に向井さんが心配そうに声を掛けてきました。


「良いですか。決して無理はしない様に。

何か違和感を感じたらすぐにログアウトしてください。

その情報だけでも十分に調査の進展に繋がりますから」

「はい、分かりました」


向井さんに頷いた後、システムを起動すればすぐに昨日と同じように宇宙空間に立っていて、目の前に光の玉が現れました。

だけど同じなのはそこまででした。

光の玉が私に言うのです。


『ようこそ封印の姫巫女シロノの記憶を持つ者よ』


「なぜその名前を?」と疑問に感じるよりも先に「ああやっぱり」という思いが私の中に生まれます。

理屈とかそういうのは一切分かりませんが、私が夢で見ていた世界とこのVR空間……本当にただのVR空間なのか怪しくなってきましたが……は何がしかの関係があるようです。

ただ封印の姫巫女という表現は初めて聞きました。

尤もそれはシロノが知らなかっただけ、という可能性が高いですが。


「それで。昨日来た人が居たと思うのですけど」

『はい。確かに居りましたね』

「彼の元に送って欲しいのですが可能ですか?」

『もちろん可能です。

それでは行ってらっしゃいませ。

お二人の未来に幸がありますように』


その言葉と共に私は光に包まれて眼下に見えていた惑星へと送り込まれました。

降り立ったのは草一つ生えない黒い大地。

ここもやはり夢の中に出てきた場所の一つです。

普通の人なら立ち入らないここは、しかしシロノとキヒトにとっては思い出深い因縁の場所と言っても良いでしょう。

なぜならこの先に魔神を封印した地があるのですから。


「グオオォォォ」

ドゴッ!!


遠くから聞こえる雄叫びと岩を砕くような音に私は考える事を止めて走り出しました。

ここに一会くんが居るとすれば間違いなくこの先です。


「……居た!」


小高い丘に登ってみれば一会くんと、数百体の魔物の姿が見えました。

一会くんは図太い金属の棒を叩きつけるようにして目の前の魔物の頭を潰して、その魔物の持っていた槍を奪い取ると近くの魔物に投げつけ、下半身が馬の魔物の足を叩き折って、かと思えば大きく下がって地面に落ちていた剣で切り掛かり……あ、折れました。

いったいなぜあんな不格好な戦い方をしているんでしょうか。

って見ている場合じゃないですね。

今しも背後から魔物が迫っています。


「一会くん!」


魔物を一刀両断しながら一会くんに声を掛ければ凄く驚いた顔をしてました。


「姫乃!?ぐっ、どうしてこんなところに」

「どうしたかじゃないです。朝になっても一会くんがログアウトしてこないって、って邪魔です!」


飛び掛かって来た魔物を袈裟切りに真っ二つにしても後から後から魔物が来ます。

これじゃ私も一会くんも襲い掛かってくる魔物を撃退しつつではゆっくり話してる余裕はないですね。

幸い魔物はそこまで強くない、というか私達が強いのでしょうか。

まるで夢の中で魔神と戦う頃の2人のようです。

それでも幾つか夢の中とは違う事もあるし、そのせいでこの無限湧きのごとき魔物の大軍を突破するのは無理があるようです。


「一会くん。このままじゃキリがありません。一度退きましょう」

「そうだな」


一会くんが持っていたこん棒を魔物に投げつけるのを合図に私達は丘の向こう側、私が最初に降り立った辺りまで後退しました。

魔物は、どうやらここまでは追ってはこないようです。



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