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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第10章:季節外れの萌芽
150/208

150.人生はロールプレイング

研修ルームには俺達学園生12人の他に向井さんと、なぜか所長と白井さんまでいる。

嫌な予感が収まる気がしないが幸いにして講義の進行は昨日と同じく向井さんがしてくれるようだ。

それを知って俺は気付かれない様に息を吐いた。


「皆さんおはようございます。

昨夜出していた宿題はやって来て頂けたでしょうか」

「「はいっ」」


一人の例外も無く頷く。

真面目に宿題に取り組むなんて流石学園の代表格と言ったところか。

まあ俺もやってきたので人の事は言えないんだけど。

でもやってみて思ったのは意外と出てこないってことだった。

急に欲しいものとか言われてもなぁ。

お金とか?でもお金なら幾ら欲しいんだって話だし、例えば宝くじで3億円当たりましたって言われても銀行の残高が増えただけで満足かって言われたらそんなことは無いし、じゃあ使い道は?って聞かれると悩ましい。


「さて本来の予定では宿題の内容を元に話をするつもりでしたが、そこは飛ばします。

ただそれだと何のためにやって来たんだって話になりますし、補足を付けさせて頂きますと、やって来て頂いた宿題はいわば第1段階です。

例えば欲しいものを挙げて頂きましたが、次の段階としてそこに値段と期限を付けます。

具体的な例を挙げるとそうですね。ダイヤの指輪が欲しいと書いたとしましょう。

ダイヤの指輪の値段は、ダイヤの大きさなどにも寄りますが先日カタログを見たら100万円でした」

(指輪の値段、調べたんだ)


向井さんは研究員ということもあって指輪どころかピアスもしていないし、一見おしゃれに興味が無さそうに見えるけどそこはやっぱり女性という事なんだろう。


「さて、その指輪を何歳までに手に入れますか?

2年後というのであれば2年で100万円貯める必要がある訳です。つまり1年で50万円。毎月の給料から4万円を購入資金に回すと考えていくといよいよ叶えられるビジョンが浮かんできたのではないでしょうか。

また自分で購入しなくてもそれを買ってくれるような彼氏を作ればって話もありますが、こんな研究所に篭ってたら出会いなんてありませんしね。

……自分で言っててちょっと鬱になってきました」


はぁぁ~と深いため息を吐く向井さん。

今何歳かは分からないけど、だいぶ深刻そうだ。

でも流石大人というべきかすぐに持ち直して話を続けた。


「気を取り直して今日最初のお題をお伝えします。

今日みなさんに考えて頂きたいのは『ロール』についてです」

「ロール?」

「はい。ロールプレイングゲームのロール、日本語で言えば『役』です。

学生という『役』、教師という『役』、親や子、生徒会長。主役も居れば脇役だって立派な『役』です。

珍しい事に皆さんの学園では『あだ名』という形でその『役』が設定されているようですね」


確かに入学当初はよく「村人Aらしくしろ」なんて言われてたし、あれはその『役』をしっかり演じろって言われたんだと思う。

俺だけじゃなくて姫様や王子なんかもそれらしい立ち居振る舞いを求められていただろう。

そしてあだ名が付いてない人たちはある意味そういう振る舞いを「しないこと」を自ら課していたとも言える。


「私達はこの『役』を通じて社会に様々な影響を与え、逆に受けることになります。

ですので早い段階で自分がどんな『役』になるのかを決めることで昨日もお伝えした自分が将来どうなりたいのかも明確になっていくことでしょう。

人によっては昨日の宿題で考えて頂いた尊敬する人やお世話になった人のような『役』になりたいと考えるかもしれませんね」


お父さんみたいになりたい、先輩や恩師みたいになりたいって考える人は多いだろう。

その逆で、あいつのようにはならないって考えたとしても方向性は絞れることになる。

俺の村人Aだってもしかしたら子供の頃にお世話になっていた祖父のイメージが根底にあるのかもしれない。


「ではこれから実習に移るぞ!」


そう宣言したのは向井さんじゃなくて所長だった。

もう嫌な予感しかしないな。



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