表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第1章:姫様と村人A
15/208

15.バイトの面接

入学式を終えた後は教室で明日からの授業に関する連絡や教科書類の購入方法についての説明があり、それが終われば今日は終わりです。

私の隣の席では村基くんが他の男子2人と話をしていました。


「おう一会。まったく初日だってのに随分飛ばしてるみたいだな」

「ん?何かやったっけ?」

「まあ一会君にとっては意識するほどの事でもなかったんでしょうね」

「ん、まぁハルがそう言うなら大した事じゃなかったんじゃないか?」

「ま、そう言う事にしておこう。それよりこの後は?」

「あ~悪いな。午前中で終わると聞いてたから昼から予定入れちまった」

「そっか。まあ仕方ないな」

「頑張ってきてください」

「ああ、ありがと」


ふむふむ。

随分親し気な様子からして以前からのご友人と言ったところでしょうね。

話の流れからして学校が終わったからご飯か遊びに行こうって誘ったけど村基くんに予定があった感じでしょうか。

その証拠に村基くんはさっさと荷物を纏めて教室を出て行きました。

っと、私も行かないと。

実はこの後、喫茶店のアルバイトの面接の予定が入ってるんです。

約束の時間は昼の忙しい時間が過ぎた頃なのでまだ余裕はありますが、折角なのでまずはお客としてお店の様子を窺うのも良いかと思います。


「姫様。あの、良かったらこの後遊びに行きませんか?」

「あ、姫様。それならカラオケ行こうぜ!」

「スポッチャで身体動かすのも楽しいですよ」


席を立ったところでクラスの皆が私の周りに集まって色々と誘ってくれるのはありがたいのですが、私は予定があるので断るしかありません。


「お誘いは嬉しいのですけどその、この後用事がありまして。すみません」

「え、ああ。いいのいいの」

「(ばっかお前。姫様なんだから習い事の2つや3つやってるって)」

「あははー。こっちこそ急に誘ってごめんね」

「いえ。では失礼します」


なにか誤解されたようですけど、別に訂正する必要もないでしょう。

私は教室を後にするとそのまま駅へと向かい、そこでふと思いました。

学園での私に対する反応って外だとどうなるんでしょうか。

ゼロになる?

うーん、ならない気がします。

それにアルバイト先は学園から快速で2駅しか離れてませんので、当然学園の生徒も利用する可能性は高く、見つかって変に噂されるとお店に迷惑が掛かるかもしれません。

ならどうすれば良いでしょうか。

あ、そうだ。

気合いを入れて変装、もとい中学時代の格好に戻ってみましょう。

髪は両サイドで三つ編みにして、コンタクトからメガネに交換。肌艶までは何ともならないですがそこまでじっと見てくる人も居ないでしょう。


「……よし」


駅のお手洗いの鏡で確認すれば、ばっちり中学時代の私です。

私の通っていた中学校はここからかなり離れているので、当時の知り合いに見付かることもないのでこれで大丈夫でしょう。

……本当に大丈夫でしょうか。

改めて見るとまるで子供の頃に見た魔法少女アニメ並の変化で「なんでバレないの?」って突っ込みを入れたくなるレベルですけど。

でもバレたらそれはそれで学園で姫様呼びされなくなるだけ……あれ?むしろバレた方が今後の学園生活が平和だったりしないでしょうか。

まぁ噂がどう転ぶか分からないですから賭けに出るのは最後にしましょう。


「……でさぁ。うちのクラスの姫様がチョー綺麗でね……」

「うわぁ。同じ女としてちょっと嫉妬しちゃうかも」

「……」

「……?」

「どしたの?」

「いやなんか、あっちにいた野暮ったい子と目があっちゃって」

「偶然っしょ」


おっとと。

ちょうどクラスで見た気がする女子と目があったけど、全く気付かれませんでした。

う~ん、でもこの格好、そんなに野暮ったいのかぁ。

私的には結構お気に入りなんですけど。

ともかく私はアルバイト先へと行き、まずは普通にランチを食べながら店内の様子を窺ってみました。


(……うん。良いお店ですね)


普通に店員さんの練度が高い。

動きに無駄がないし、全員が店内にしっかり目を向けてるし、それでいてお客様に気取られないようにそっと動いている。笑顔も自然です。

店員同士も仲は良さそうだしこのお店は当たりですね。


「はい、じゃあ採用決定ね」

「え?」


時間を置いて面接を受けに来たと伝え、事務所で履歴書を渡しながら名前を伝えたところで何故か店長さんから即採用のお言葉を頂きました。

驚く私にクスクスと笑う店長さん。


「採用の理由が知りたい?」

「えっと、出来れば」

「簡単よ。あなたさっきランチを食べに来てくれたでしょ。

もうその時の姿をみればあなたの人柄に問題ない事は分かったわ。

『善き経営者は同時に善き顧客である』って言うでしょ」

「そう、なんですね」


そうか。

下見に来たはずが見られていたのは私の方だったのか。


「やっぱり変なお客様も来るんですか?」

「来ないとは言えないわね。

昼間から酔ってたり金払わない馬鹿とか暴力振るう輩とか、そして盗撮やセクハラしてくる奴は死ねばいいと思うのよ。

もしそういう客に遭ったら、迷わず私や古参の先輩を呼んでね」

「はい!」


こうして私はまずは週に3日アルバイトをすることになりました。

それと、やっぱり学園の生徒もちょくちょく来るのですが今のところ私の身元はバレてないみたいです。


(あいつがそんなことをするはずがないって思ってるとな。実際に目の前でやってても見間違いで済ませるのが人間ってやつだ)


お姫様が喫茶店でバイトってそんなに変でしょうか。

それとも変装が上手く行きすぎてますか?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ