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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第10章:季節外れの萌芽
145/208

145.あっという間に

向井さんからの講義は続く。


「さて、急に人生の目的を決めろと言われても簡単に決まる人や既に決まってる人は中々居ないでしょう。

そこでまずは簡単なワークから始めましょう。手元のプリントの1枚目を見てください」


最初に配られたプリントだ。

それをみた俺達は揃って首を傾げることになった。

なぜならば。


「あの、白紙なんですけど」

「ええ。言ってしまえば1枚目はノートの代わりだと思ってください。

最初のワークは何をするかというと心理テストのようなものだと思ってください。

やり方は簡単なので始めましょう。

まずお配りしたペンでそのプリントにマルを1つ描いてください。

描き終わりましたか?

では続いてバツを1つ描いてください」


これに一体何の意味があるのかは分からないけど、反発しても話が進まないだけなので黙って言われた通りにプリントに〇と×を書き込んだ。


「出来た結果を隣近所の人と見比べてみましょうか」


見比べるも何もただ〇と×を描いただけなんだけどな。

そう思いつつ隣の姫乃とプリントを見せあってみた。

すると。


「……意外と違うものだな」

「はい。びっくりです」


俺はと言えばプリントの中央やや上寄りに大きめの〇と、その中に納まるように×を描いていた。

対する姫乃はといえばプリントの左上に小さめな〇と、その隣に同じ大きさの×を描いていた。


「黒部先輩のそれは?」

「我と言えばこれだろう」


前の席に座っていた黒部先輩のを見せてもらえば、そこには真っ黒に塗り潰した●とその上に大きな×が描かれていた。×の方が大きくなければ分からなかったな。

確かに言われてみれば、単純にマルとバツを描けと言われただけで塗り潰してはいけないなんて言われていない。サイズも位置も指定されてない。


「ちなみに過去の受講生の中にはそれぞれ漢字で書いたりバツをプリントの外に書いた人も居ましたね」

「良いんですか、それは」

「マルはプリントにと指定しましたがバツに付いてはただ書いて下さいとしか言ってませんからね。

では今のワークから気が付いたことを近くの人と話し合ってみましょうか」


どうやら向井さんの研修は、向井さんからの指導、俺達のワーク、そしてそこからの気付き学びのシェアの3つからなるようだ。

この○×を皮切りにして俺達は幾つかのワークを行っていく。


「一方的に教えられるよりも自分達で考えて自分なりの答えを導き出すトレーニングなんだな」

「学校だと先生が教科書に沿って授業をするのが基本だから新鮮で面白いです」


俺を始め、みんな概ね好評なようだ。

そうして気が付けばあっという間に19時を回っていた。


「皆さんお疲れ様でした。

これで今日の講義は終了です。

ただし、皆さんには明日までの宿題があります」

「えぇ~」

「はいはい、そんな嫌そうな顔をしないで下さい。

宿題と言っても難しいものではありませんから。

残っている最後のプリントを埋めてくること。

これが宿題です」


残っているプリントといえば、これか。

そこにはこう書かれていた。


『欲しいもの、やりたいこと、なりたい状態を10個以上挙げて下さい』

『あなたの人生に大きく影響を与えた人、尊敬する人を挙げ、その人の良い所を挙げて下さい』


1つ目はどこかで聞いたことがある。

夢リストとか呼ぶやつだ。

その時は『100個出せ。簡単には出なくなって絞り出したものが実はあなたが本当に叶えたいものだ』なんて言ってた気がする。

これに関しては寝る前にのんびり書き出してみよう。

もうひとつの方は。


「それでは夕食にしましょう」


向井さんの声に思考を中断し食堂へと移動する。

その移動中や食事の最中にする会話と言えば、その大半がさっきまで受けていた研修の内容についてだ。

簡単な脳トレみたいなのもあったけど、自分たちの価値観を再確認するようなものもあったし、みんな色々と得るものがあったみたいだ。



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