144.目標を決める
いつもありがとうございます。
元々がっつり研修の話を書いて行こうかなと思ったりもしましたが、作品の趣旨が違う事に気が付いたのでサラッと流します。
そのせいでスカスカ感は否めませんが頑張って本筋は外さない様にします。
向井さんとサポートの職員の方によって俺達のまえには数枚のプリントとペンが配られた。
全員に行きわたったところで向井さんが話始める。
「さて、みなさんはかの有名な英伝学園の生徒の中でも特に優秀な選ばれた方だと聞いています。
それは容姿であったり血統や学力、体力など様々な分野に及ぶことでしょう。
今回の研修ではそんな皆さんが人生において成功する為には何が必要か、という事を考えて行って欲しいと思います」
ふむ、人生においての成功、か。難しいテーマだな。
これが例えば一流大学に入る為にはどうすればよいか、とか、バスの中で話していた会社や街を発展させるためにはどうすればよいか、という話であればまだ分かりやすい。
何故ならそれには明確な基準やゴールがあるからだ。
「人生における成功。言い換えると、皆さんが将来幸せになるにはどうすればよいかとも言えます。
今回は具体的な方法論に行く前に、そもそも皆さんにとっての『成功』や『幸せ』とは何かを考えていきます。
多くの場合、人は自分の行動に効果があり、なおかつそこに喜びを感じるときに強い力を発揮します。
逆に全く意味のない行動は苦痛であり、時に発狂してしまう事さえあります。
有名な話では『地面に穴を掘って埋める事を延々と繰り返させる』という拷問がありますね」
あったなぁ。
夢の中でもどこぞの貴族に捕まった時に丸一日やらされたっけ。
俺の場合は穴掘りも鍛錬の一種だと割り切ってせっせとやってたけどな。
あの時は1日で終わったから良かったものの、あれが1週間、1か月と続くようだったらどうなっていたか。
「今日の研修のゴールは皆さんが将来どうなりたいかを決めることです。
より言えば、明確に具体的に。そして肯定的に決めてください。
肯定的にというのはつまり『出来ないかもしれないけど』や『誰にも認められないかもしれないけど』などと言った不安要素は付ける必要は無いという事です」
「あの、人生の目標を決めるというのは随分と壮大な話にも聞こえますが、たった1日やそこらで決まるとも思えないのですが」
光がした質問は多分ここにいる誰もが抱いているものだろう。
例えばこれが小学生に対して「将来の夢は?」と問いかけて「宇宙飛行士です」と答えるのとは訳が違う。
16,7歳という、多少なりとも現実が見えて来て、自分に出来る事出来ないことが分かってしまうがゆえに子供のように無邪気に何でもは言えない。
だけどまだ社会に出ても居ない俺達がやっても居ない事に対して才能があるとか無いとか言うのは10年どころか20年早いと言われるだろう。
向井さんは光の質問に頷きつつ話を進めた。
「勘違いをしないで頂きたいのは、今日決めた事が絶対で永遠不滅、撤回不可能なものではないという事です。
人によっては自分が一度決めたことをおいそれと変えてはいけないと考えている人も居ますが、残念ながら人という生き物はそこまで固い信念を持ってはいません。
身近な例で言えば離婚や不倫、皆さんで言うなら浮気と言った方が分かりやすいですね。
昨日は『君だけを愛している』と言っていた人が明日には別の人に同じ言葉を言っているかもしれません。
『死がふたりを分かつまで』と誓い合った夫婦が2カ月経たずに喧嘩別れすることは残念ながら稀ではありません。
それと同じではありませんが、将来の夢や目標も今と3年後では変化しているでしょう。
進学、就職、事故で五体不満足になったり大切な人を亡くしたりと様々な要因で少しずつ、時に劇的に変わります。そういうものです。
大切な事は今の時点での目標を決めることです。
目標、つまりゴールを決める。それと同時に今の自分、つまりスタート地点を確認する。
この2つがあって初めて皆さんは"前"へと進むことが出来るのです」
なるほどね。
今決めたゴールは人生全体で言えばほんの通過地点かもしれない。
それでもどこに向かうかを決めるからこそ、そこに向かって真っすぐ進めるようになる訳だ。
行き先不明のバスに乗るのはバラエティ番組だけで十分だよな。