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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第10章:季節外れの萌芽
138/208

138.いったい何が起きているのでしょうか

~ 藤白Side ~


ちょっと先に教室に戻ってると言って、何事も無かったように立ち去る一会くんの後ろ姿を見送る私達。

あれで誤魔化せてるつもりなのでしょうか。

まあ、一会くんって時々抜けてるのでそう思ってる可能性もありそうです。

一会くんが居なくなった所で早速黒部先輩が気になっている事を聞いてきました。


「あれは大丈夫なのか?」


その質問に私は力なく首を横に振ります。

正直、隣で見てて全然大丈夫そうではないですが、多分聞いても教えてくれない気がしています。


「それが分からなくて。

一会くんは薬の類いに詳しいので、病気なら完治まで行かなくても症状を和らげるくらいはすると思うんですが、段々酷くなってるようで」

「え、結構前からなんですか?!」


私の回答に何故か阿部くんが驚いた声を上げました。

隣にいる兵藤くんも声こそ出してませんが驚いた顔をしてます。


「俺ら、今初めて知ったんだが」

「あの病気とは無縁としか思えない一会君なのに」


どうやら2人ともあんなに分かりやすいのに(と言っても本人は隠してるつもりですが)、気付いてなかったみたいです。

ということはこれまでは上手く隠せていたのか、それとも最近になって発症したかのどちらかですね。


「私が初めて気が付いたのは、芸術祭の準備が始まった頃でしょうか。

朝の挨拶をした時とか一緒に帰ってる時とか、ふと目が合った瞬間にさっきみたいに顔を強張らせて固まるんです。きっと苦しいのを堪えてるんだと思います。

てっきり私が気付かなかっただけでもっと昔からだと思ってたんですけど」

「いや、少なくとも俺達はそんな一会を見たことはない」

「ですね。

それにしても藤白さんと目が合った時ですか。

これが顔を赤くして挙動不審になるって言うなら恋の病かってからかう所なんですけどね」


本当ならその想い人は自分かもしれないと思って赤くなる所かもしれませんが、残念ながら一会くんの様子からしてそんなに甘いものではなさそうです。

そこへ謡子ちゃんが心配そうな顔で言いました。


「あの、一会くんが以前、大失恋をしてたってことはないですか?」


あ、その方向もありました。

確かに過去に女性関係で酷い裏切りに遭ったとかいった事があれば、それがトラウマになってふとした瞬間に苦しくなることはありそうです。

だけどそれに対し阿部くんが首を振りました。


「僕は小学生の頃から一会君を知ってますが、彼が特定の女子と仲良くしていたり目で追っていたりしたことはありません」

「ほっ。そうですか」


それを聞いてちょっと安心してしまった自分にちょっと自己嫌悪です。

一会くんは明らかに何かに苦しんでいるというのに。

でも中学生までは特に何もなかったということは高校生になってからですよね。

それも少なくとも夏休みはほぼ1日中一緒に居る事も多くありましたが何ともありませんでした。

ならやっぱり生徒会選挙の頃かそれ以降という事になります。

その頃に起きた変化と言えば。あっ。


「あの、なら最近はどうなんですか?」

「「最近?」」

「いえあの、生徒会選挙の頃から一会くんって色んな女子に声かけられてますし、実はその中に好きな人が出来てしまったとか」

「「……」」

「先日も上級生の女子とお茶してたみたいですし、時々昼休みや放課後も呼ばれてましたよね。

あれって多分、全部じゃないとは思いますけど告白されたりもしてますよね」

「いや、まぁ。否定はしないが」

「それで本当はその人と付き合いたいんだけど、今までの人間関係も無下には出来なくて仕方なく私達と一緒に居てくれるんだとしたら……」


以前私が拗ねたり困らせたりしたせいで、優しい一会くんは私を突き離せないんじゃないでしょうか。

でも彼女さんの事を考えるなら別の女と一緒に居る事は裏切りに近い行為ですし、芸術祭の時のあれはあくまで演技だったとはいえ、多分その彼女さんも一会くんがシンデレラ役の私に告白している姿を見ていたでしょう。

あの時の反響は凄かったと後から真子ちゃん達から聞きましたし、私がその彼女さんだったら物凄く嫉妬してしまったと思います。

だから一会くんはその彼女さんに申し訳なくて心を痛めているのかもしれません。

もし私の所為で一会くんが苦しんでいるのだとしたら……


「あのぉ。姫乃さん?」

「……」

「ていっ」

「あいたっ」


私がようやく問題の核心に迫れたと思ったところで突然真子ちゃんに頭を叩かれました。

って、よく見れば他の皆も口を閉ざして私をどこか呆れた顔で見てますね。


「なんか盛大に勘違いしてそうだから言っておきますけど。

今の村基さんに気軽に告白しようって子は間違いなく学園内には居ないですよ」

「そんなどうして断言できるんですか?」

「何ででもです!気付いて無いのは姫乃さんと、ついでに村基さんだけです」

「だな」

「ですね」


どうやら全員同意見のようです。

本当にそうなんだろうかと思うものの、恋愛の先輩である謡子ちゃん達も断言してますし信じても良いのかもしれません。

でもそうすると振り出しに戻ります。


「なら一体何が問題なのでしょう」

「ふむ。まあここで考えていても結論は出ないだろう。

幸い近々、研修で村基とは一緒にいる時間が出来る。

その時にでも聞いてみるとしよう」


そっか。確かに研修は2泊3日だと言ってました。

夜はもしかしたら修学旅行みたいなノリで男子で集まって話をする時間があるかもしれません。

その時に黒部先輩から聞いて貰えたら、旅行の雰囲気も相まって一会くんも話してくれるかもしれないですね。



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