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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第10章:季節外れの萌芽
133/208

133.俺だけ場違い

芸術祭も無事に終わり、年内の行事は残すところ期末試験のみになった。

季節は秋も終わり、そろそろ冬の様相を呈している。

商店街とか歩くと早くもクリスマスカラーだしな。

帰ったらぼちぼち冬物の服も出さないとな、なんて考えていた所で呼び出しが掛かった。


「村人Aと姫様は放課後、生徒会室に来てください」

「はぁ」

「分かりました」


なんだろう。

俺だけって言うならまた何かやったかなと思ったりもするけど、姫乃もとなると違うだろうな。

姫乃を見れば首を横に振ってるし心当たりはないようだ。

ま、行けば分かるか。


「失礼します」

「おお来たか」


選挙の時以来となる生徒会室に入れば、新生徒会長となった織田先輩を始め、生徒会役員の他にも黒部先輩や光達に上級生と思われる男子が1人、女子が2人居た。

どうやらみんな同じ理由で集められたっぽいんだけど、共通点がないな。

ま、話を聞けばわかるか。

用意されている椅子の数からして俺達が最後みたいだし。


「さて諸君。突然呼び立てて済まない。

と言っても2年生は去年と同じ顔ぶれだから察しは付いているだろう」


織田先輩がそう切り出せば、黒部先輩を始め上級生は頷いていた。

つまりは毎年の恒例行事ってことか。


「ここに集まってもらったのはこの学園でも特に有名な生徒だ。

今年はありがたいことに人材に恵まれていて、副会長の聖騎士を始め何人も優秀なあだ名を持つ生徒が現れてくれた。

お陰で去年とは違って選抜することになってしまった。まったく嬉しい悲鳴というやつだな」


言われてみれば『聖騎士』の聖に『紅の王子』の光、『天使』の天音、『姫様』の姫乃。あと『村人A』の俺か。

って並べると俺だけ違和感が酷いな。

折角だし本題に入る前に確認しておくか。


「あの会長。この錚々たるメンバーの中で村人Aだけ場違いじゃないですか?」


一応そう言ってみたものの、返ってきたのは全員からのジト目だった。

いや、そんな間違った事言ったか?……まあ言ったのか。

会長は仕方のない奴だなと言いながら答えてくれた。


「学園内の知名度で言えば生徒、教師を問わず村人Aの事を知らない者は居ない。

これだけでも十分なのだが、更に能力的な点においても決して他のあだ名持ちに劣っているとも思えない。

試験の成績は悪くないし、運動神経も多少球技が苦手なようだが体幹や反射神経はトップアスリート級だそうだな。

人格面でも学園内外問わず君に助力を貰ったという声が幾つもある。

今年度に入ってから3度ほど学園生の制服を着た男子生徒に助けてもらった、お礼を伝えておいて欲しいと電話があったそうだ。特徴を聞けば恐らく君の事だろう。

更に芸術祭では準備で多数のクラスのヘルプに回り、本番でも見事劇を大成功に導いたんだ。

むしろ村人Aの名は畏敬の象徴と言っても過言ではないね」


会長の言葉に反論は出てこないし、大体みんな同じような意見らしい。

姫乃も俺の隣で嬉しそうにうんうんと頷いている。

でもこの言い草だと王子よりも村人の方が格上に聞こえてくるぞ。


「それ本当に村人ですか?」

「「お前が言うな!!」」


いやそんな口をそろえて言わなくても。


「生徒会でも君のあだ名を変更してはどうかという意見はあったが、有名になり過ぎていまさら変更など出来ないと却下した。

それに変更するにしてもじゃあ何が妥当なあだ名なんだと聞いたら答えられる者が誰も居なくてな。

結果『村人A』というのは君にのみ使われる呼称にすることが正式に決まった。

喜びたまえ。今後100年『村人A』と言えば君だと学園の歴史に刻まれたのだ」


それは……別に嬉しくないな。というかどうでもいい気がする。

ただひとまず村人Aが他のあだ名と比べて貴賤の差はないという事で理解は出来た。

ここに集められたってことはこのメンバーで何かするって事だし、その辺りの不満やしこりがあると面倒だからな。

確認できてよかった。



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