130.ロミオとジュリエット
いつもありがとうございます。
実はロミオとジュリエットはあのセリフしか知らない作者です。
一応ググって勉強はしましたので本来の話とは大きくかけ離れているのは承知してますが、寛容な心でスルーしてください。
裏庭でひと休みした私達は、午後の演劇の時間までみんなで屋台とかを周ることにしました。
あ、そうそう。
さっき私をからかってくれた兵藤くんには予定通り真子ちゃんから出来立てたこ焼きであーんの刑を執行しました。
その巻き添えを食って阿部くんも謡子ちゃんからあーんしてもらってます。あ、こっちはちゃんと冷ましてあるみたいですね。
更になぜか私の目の前にもたこ焼きが。
「ほい、あーん」
「って、私もですか!?」
「みんなやってるし、仲間外れは良くないだろ」
「いやでも立場が逆のような気が」
「いいからいいから」
私の抵抗も虚しく一会くんからあーんさせられてしまいました。
うぅ~これなかなかに恥ずかしいですね。
屋台のすぐそばでやってるものだから、見てる人も大勢いますし。
ただそうなるとハブられてる人が一人。
「あー仕方ないな。ほら黒部先輩もどうぞ」
「ああ」
一会くんが黒部先輩にあーんをしてます。
すると私達がやってた時よりも周りの反応が凄い事に。
あと先輩が食べたのはまだ熱かったようです。その暴れる様を見てみんな笑ってます。
と、往来で騒ぎ過ぎましたね。
少し早いですが講堂へ向かいましょうか。
無事に前の方の見やすい席を確保した私達は、そのまま開演を待ちました。
そして始まるD組の演劇『ロミオとジュリエット』
ロミオ役は紅の王子と呼ばれる紅玉くん。ジュリエット役は話したことはないですが確か紅玉くんの彼女で天使と呼ばれている天音さん、だったでしょうか。ふたりともまさに美男美女って感じです。
スタートはとある夜会での一幕からです。
そこに訪れていたロミオとジュリエットは初めて顔を合わせ、そしてたちまちに惹かれあったようです。
「僕の名前はロミオ。君の名前を教えて頂けますか?」
「はいロミオ様。私はジュリエットと申します」
「ジュリエット……美しい名だ。どうか僕の妻になっては頂けませんか」
「喜んで」
ちょ、超特急ですね。
一目惚れはともかくその場で結婚を申し込みますか。
ジュリエットも二つ返事で了承してますし。
だけどこのまま一緒になってハッピーエンドでは物語になりません。当然のように邪魔が入ります。
「ちょっとまてい!!」
舞台袖から慌てて出てきた男性がロミオに突っかかります。
あの慌て様は縁起でしょうか。凄い迫真でしたけど。
「彼女は俺が先に見初めたんだ。若造は引っ込んでろ」
「恋愛に順番なんてあるか。そもそも君は誰なんだ」
「えっと、どなたでしょう?」
「なっ」
まさかジュリエットからも誰何されるとは思ってなかったらしい男性は顔を真っ赤にしてうろたえました。
「お、お忘れですか。俺ですよ俺」
「オレオレ詐欺か?」
「違うわ!甥のティボルトだ」
その名乗りを聞いたロミオとジュリエットは再び顔を見合わせます。
そして可愛らしく首をかしげるジュリエットでした。
「知ってるか?」
「そういえば居たような居なかったような……いらなかったような」
「聞いた通りだ脇役。君は眼中にないそうだ。早々に消えたまえ」
「き、さま。度重なる暴言。もう許せん。
者ども。この不届きものを切り捨ててしまえ!」
「「合点。リア充許すまじ!」」
ティボルトの呼びかけに舞台の両サイドからぞろぞろと兵士が集まってきました。
ロミオはそっとジュリエットを壁際に逃がした後、何故か舞台中央に戻って来ました。
そしてお互いに剣を抜き放ち殺陣が始まると共に流れる音楽が変わりました。
なんとあのあばれる将軍様で有名なあの時代劇のテーマ曲です。
西洋の物語のはずなのに一気に和風になりましたね。
(これってもしかして昨日の私達の劇が影響与えてます?)
(あ、そうかも。だって昨日の武闘会から借金取りを撃退する部分、凄く盛り上がってたからね~)
そしてこれが止めとばかりにロミオが懐から家紋を取り出しました。
だけどそれが良くなかったようです。
「お前達。この家紋が目に入らぬか!」
「それはまさか、モンタギュー家の!!
って。てめぇモンタギュー家の者か。こっちはキャピュレット家だぞ」
「なんだって~。あのライバル貴族のキャピュレット家か!?」
そう、止めを刺そうとしたはずなのに自ら弱点をさらけ出してしまったロミオはその場に崩れ落ちました。
そして連れ去られるジュリエット。
「ロミオ様、ロミオ様~」
「ジュリエット、くっ」
助けを求めるジュリエットに、しかしロミオは両家のしがらみが邪魔をして動けなかったのでした。