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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第9章:芸術の秋。色づく秋。
122/208

122.馬鹿で鈍感で

いつもありがとうございます。

本章では一足飛びに仲が進展しすぎかなという自覚はありつつも暴走を止められない、むしろいいぞもっとやれ~と背中を押してしまいました。


芸術祭に向けて学園内は活気付いて来ました。

教室の後ろには製作された大道具小道具が置かれてますし、聞こえてくる話題と言えば教室でも廊下でも芸術祭に関することばかりです。

そんななか、一会くんが声を掛けられる機会も増えているように見えます。


「村人Aちょっと手伝ってくれ」

「はいよ」

「あ、村基くん。こっちもお願い」

「はいはい」


こうして活動してみて分かったのですが、一会くんってある程度は何でも出来るんです。

勿論その腕前は素人レベルではあるんですけどね。

それでも嫌な顔ひとつせずに引き受けるし、卒なくこなしてくれるのでみんな頼ってしまうみたいです。

生徒会選挙のせいで名前が知られたせいか、なぜか別クラスからもヘルプを頼まれてるみたいですし。


「基本的に村人って言うのは自給自足とお互いに助け合って生活するからな。

出来ない事は断るけど、出来る範囲で手を貸すのは別に特別な事じゃないんだ」


なんて言いながら走り回ってます。

忙しそうですけど、楽しそうだし良いですよね。

そう思ってたところでクラスメイトの女子が気遣わしげに聞いてきました。


「あの、姫様。大丈夫ですか?」

「え、何がですか?」

「いやあのほら。村基君のこと、私達が引っ張り回してるせいで最近あまり話せてないんじゃないかなって」


言われて、確かに今週に入ってから学園では朝の挨拶くらいしかしてない気がします。

お昼だって演劇の練習があってなかなか裏庭に行ってゆっくり食べるって事も出来てないですから。

放課後もバイトがない日は同じです。

その間、一会くんも同じように動いてますし、今もクラスの女子に声を掛けられていますが、以前のようなもやもやはありません。


「先日遊びに連れていって頂いたのが良かったんだと思います。あれでだいぶ気が晴れましたから」

「そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、あの後は何も無かったんだよね?」

「え?……え、ええ」


ARゲームを終えた私達は、その後でみんなでご飯でも行こうかって話もあったのですが、私と一会くんはさすがに疲れたと言って一足先に帰りました。

その帰り道。

方向がだいたい同じ私達は一緒に帰ったのですが、ふと一会くんが私に言いました。


「あー、姫野。俺はその、よく馬鹿で鈍感だってよく言われるんだ」

「はぁ」

「だから気付かない内に色々やらかしてるかもなんだが、そういうのって無自覚だからさ。

何かあれば気兼ね無く言ってくれると助かる。罵倒でも何でも良いからさ。

言われないと治しようもないし」


私のもやもやは、確かに一会くんが原因だったと流石の私でも気付いてますが、じゃあ一会くんが何か良くない事をしてたのかと聞かれるとそうでもないんですよね。


「そうですね。

一会くんが馬鹿で鈍感で唐変木の朴念仁だってことはわかってるんです」

「おいおい」

「ここ最近の私の態度が悪かったのは、ちょっとは私のせいだったんです。ごめんなさい。

でもやっぱり、女の子としては色々察して欲しいっていうのもあるんですよ?

女の子は特別扱いに憧れるものなのです。

だから。ちゃんと私の事を見て気にかけてくださいね」


言いながら一会くんの顔を上目遣いに覗き込めば、一会くんはちょっと顔を赤くしながらそっぽを向いて。

ぽんっと私の頭に手を置きました。


「女心は複雑過ぎて俺には理解しきれないけど、ひとまずこれでどうだ?」


私の頭の上で一会くんの手が優しくぽんぽんと動いて、今度は私が顔を赤らめる事になりました。

どうやらこれが一会くんの考える特別扱いのようです。

悪くないです。悪くないですがちょっと。


「仕方ないですね。これで許してあげます。

でも他の人にやっちゃ駄目ですからね」

「はいはい。姫様の仰せのままに」


おどけて答える一会くんですが、自分がやった事の危険性を理解してるのか不安になります。

これは今後も注意して置かないとと思ったのでした。

それ以来、劇の練習が陽が暮れるまで長引いてしまった日は、男子の練習も同じくらいまでやってるらしくてよく一会くんと一緒になるのですが、その度に一会くんは「おつかれ」って言いながら私の頭にぽんと手を置くようになりました。



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