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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第8章:トップの条件
110/208

110.結果は最初から分かっている

放送ブースから出ると放送を手伝ってくれていた放送部の面々が労いの声を掛けてくれた。


「「お疲れ様でした~」」

「えっと、あんな感じで良かったんでしょうか」

「さあ。私らとしては途中噛むこともなく堂々と話してるなって安心して見てられたけどね」


いや聞きたかったのはそこじゃなくて話の内容の方だったんだけど。

でもこの様子なら少なくとも放送部の人達の顰蹙は買っていないようだ。

それに彼らもずっとここに居てくれたし放送室の外の様子までは分からないのだろう。


「じゃあ俺は教室に戻ります。ありがとうございました」

「は~い。頑張ってください」


ん、頑張って?って何を?選挙の事かな。

ともかく廊下に出て左右の安全を確認。

よし、誰も居ない。ってなんで?

放送室って一般の教室からそれほど離れてない場所にあって、今は昼休みだから普通に廊下を歩いてる生徒は居てもおかしくないんだけど。


「はっ、まさか俺の放送なんて聞いてられるかって皆でボイコット?」


でもないか。

教室の中からは普通に人の気配はするし。

たまたまかな。

自分の教室の扉を開けて中に入れば、不思議とみんな何かを考え込むようにしていた。

いつも通りなのは姫乃を始めとしたいつものメンバーだけか。

3人共俺の席の近くに陣取って俺の帰りを待っててくれたみたいだ。


「ただいま」

「おかえりなさい。一会くん」


姫乃の笑顔にほっと息を吐く。

この様子なら俺の放送はそんなに問題は無かったようだ。

ただそれならこの教室の様子は何だろうか。


「えっと、みんなの様子がおかしいけどなんでだ?」

「あぁあれね。みんな一会くんの言葉を聞いて考えてるみたい。

自分のあだ名はなんだろうって。それか、それを名乗るべきなんだろうかって」

「そっか」


どうやら問題なかったどころか俺が想像していた以上の効果を生み出していたようだ。

なら無理して生徒会長候補を辞退しない選択をしたのは間違いじゃなかったな。

あとはこれでどれだけ変化が生まれるかだけど。

と考えていたら姫乃が楽しそうに口を開いた。


「この調子ならもしかしたら本当に一会くんが生徒会長に選ばれてしまうかもしれないね」


それに対し俺は首を横に振る。


「残念だけどほぼ確実にそれはないよ」

「どうしてですか?」

「みんなこんなに考えこむほど影響を受けてるんだ。

そのきっかけを与えた一会が次期リーダーに相応しいと考えるのは普通にあり得ると思うんだが」

「多分ほとんどの人が明日には忘れてるから」

「「えっ」」


姫乃と庸一が俺の回答に驚く。

ハルだけは流石に俺の言いたい事は分かってるみたいだな。


「人は時間が経てばいつもの自分に戻ろうとする性質がありますからね」

「そういう事だ。今は俺の言葉を受けて考えてくれてるみたいだけど、たった1回で変われるほど単純でもない。

15年以上かけて培ってきた自分って安住の地から飛び出せる人なんて人握りだろう。教師なら更にだな」


変化っていうのはいつだって期待と不安がワンセットだ。

それは今も昔も変わらない。

夢で見るあの世界は失敗イコール死だったから、それに比べれば今の俺達は失敗しても幾らでも挽回出来るんだから楽なもんだ。

変化するのはきっと今を本気で変えたいって願ってる人だけだ。

そしてそんな人がこの学園にどれだけいるかと言えばそんなに居ないだろうなぁ。

なにせ今までもこの学園や学園生活が嫌だって話は全然聞かないから。

不満が無いんだから変化を望まない。

だから次期生徒会長も俺ではなく一番安定している副会長の織田先輩が選ばれる可能性が高いだろう。


「え、じゃあ一会くんはどうしてこんなことを?」

「変化は起こせなくても、みんなの心に波紋を起こすくらいは出来るかなって思ったからな」


すぐにそんな急な変化は期待していない。

だけど今後何かあった時に今日の事が影響を与えるかもしれない。

これからやってくるだろう人生の分岐点に立った時に、そういえば以前こんな話を聞いたなって思い出してくれたら、また違った道を歩むことがあるかもしれない。

あとこれで村人Aに対する評価がちょっと上がってくれるといいなっていう打算もあることにはあるけど。

ま、やるべき事はやったから後は皆次第だ。





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