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英雄が通う学園に、村人Aが征く  作者: たてみん
第8章:トップの条件
108/208

108.村人Aの宣言

所信表明演説も3日目。

遂に俺の番だ。


「頑張ってください」

「いっちょブチかましてきてくれ」

「一会君らしいのを期待してます」


みんなの応援を受けながら俺は教室を出て放送室へと向かった。

放送ブースはその性質上、外の音は聞こえない。

だから放送を聞いた皆がどう感じているのかとかまるで分からないんだよな。

広場での遊説であれば聴衆に合わせて話す内容を変えるなんて芸当も出来るけど、ここではそれが出来ない。

ま、なら一方的に言いたい事を言わせてもらうか。


『皆さんこんにちは。村人Aです。

俺は1年で特別目立つ行動をしてきた訳でもないので、この放送で初めて俺の存在を知った人もいるでしょう。

改めまして、生徒会長候補の村人A、村基一会です。


俺はこの学園に入ってすぐに村人Aと呼ばれるようになりました。

それと同時に何人かの方からは「村人Aなら村人Aらしくしろ」とご指導頂いたことは感謝しています。

お陰様で理想の村人Aに成れたでしょうか。これでも名前に恥じない行動が出来ていると自負しています。

ただそれとは別に「村人Aの癖に」とか「なんで村人Aが俺より評価されるんだ」みたいな発言を時々聞きます。

今も恐らく何人かは「村人Aの癖になんで生徒会長候補に推薦されてるんだ」と「この俺を差し置いて」と憤っているのではないでしょうか。


そういった方々には朗報です。

もし仮に万が一俺が生徒会長になった場合、最初に行う政策は教師を含めこの学園に通う全ての人にあだ名を付けることです。

そのあだ名は他の人に付けてもらうでも良いし、自分で宣言しても構いません。

人間は生まれた瞬間から他人とは異なる唯一無二の個です。

村人Aと呼ばれる俺ですら同じ存在はいません。

つまりあだ名を付ける事によって皆さんには「その他大勢」から脱却することになります。


それで何が変わるかと言うと、身近な例を挙げればそう、俺を批判しやすくなります。

これまで俺を批判する場合、村人Aだからという絶対座標でしか出来ませんでした。

対して今度は自分と俺の相対座標で批判が出来るようになります。

例えば「俺は村長だ。お前は村人Aなのに村長より目立つとはけしからん!」みたいな感じですね。

ただ同時にこの場合はこちらからも「村長なのに村人Aより目立たないとは情けないぞ」と反撃させてもらいます。

村長だから王だから神だからと偉い訳ではありません。

あくまでお互いに対等な関係です。


日本というのは不思議な国で他国に比べて匿名の人の発言が効力を発揮することがあります。

俺はこれがあまり好きではありません。

匿名で、つまり安全な位置から他人を攻撃したり見下したりせずに正面からぶつかって行きましょう。

あ、もちろん他人を傷つける行為そのものを肯定している訳ではないので勘違いしないでください。

勝負をするなら同じ土俵に立とうと言ってるんです。

自分の言動には責任を持ちましょう。


そして、出来る事なら自分に誇りを持ってほしいと思っています。

人は、少なくともこの学園に入学できるだけの学力と健康な肉体を持っている皆さんが、何も出来ないボンクラであるとは考えられません。

自分では大した事無いと思っているかもしれませんが、間違いなくあなたに出来ること、誇れること、自慢に出来る事はあります。

もし仮にそれが分からないという人が居るなら周りの人や家族に聞いてみましょう。

それでも見つからないのなら、今から創れば良いんです。

生まれてから15年以上生きて来て、好きな事も嫌いな事もやりたい事もやりたくない事も何もない、人生は無であるなんて悟っている人は、それはそれで凄いことだとは思いますが中々居ないでしょう。

であるならばその好きな事を特技に変えてしまえばいい。嫌いな事をしないで済む自分になれば良い。

もちろん言って簡単に出来ないから今があるんだと思います。

でも幸いにしてこの学園には多くの仲間が居ます。

そんな協力してくれる人なんて1人もいないとか、やっぱり考えても何も浮かばないぞって人は昼休みに裏庭に来てください。

俺と俺の個性豊かな友人が晴れた日の昼休みにはよく裏庭で昼食を取っているので一緒に考えましょう。

あ、もしそれで俺達だけじゃ手が回らなくなったら手隙の先輩や教師の方にもご協力頂くかもしれません。

その時はよろしくお願いします。


そうして胸を張って学園を卒業したその先には、きっと自分の望むままをつかみ取れる未来が待っているでしょう。

学園で過ごした3年間は決して無駄ではなかったという確信は、必ず皆さんの背中を支える礎になります。

この学園には村人Aよりももっと才能あふれる人ばかりだと俺は信じています』


そこまで話してマイクを切った。

うーん、途中暴走した気がしなくも無いが大丈夫だろうか。

放送室から出たら暴徒に囲まれたりしないよな?



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