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顕彰式。今回は私を含め討伐騎士団、医師団、学者などが参加することになっている。大広間に整列した騎士団。その私どもと通路を挟み、がちがちに緊張している先生方が並んでいる。ただ、先生方は私たち騎士団と違い体力もないだろうということを考慮されて、見届け人である大臣たちと同じように用意された椅子に着席されている。
「特効薬を開発した医師に我が国の新たな歴史を紐解いた学者の先生方、なんか、俺らの方が場違いだな」
「いや、そんなことはないだろう。私たちとて、王都の危険を防いだのだ。まぁ、先生方が緊張しているのは私たちの受勲もあるからだろうが」
討伐を繰り返す中で親しくなった友人とそんな会話を交わす。こちらが場違いと思っていても彼らは逆に自分達が場違いだと思っていそうだ。
一言二言言葉を交わしているとパッパラーと王族の入場を告げるラッパが鳴り響く。
シンと静まり返る広間。扉が開かれ、殿下方、妃殿下、陛下と入場させる。
久しぶりに見た殿下は相も変わらず美しかった。今日が見納めになるだろうし、しっかりと記憶に焼き付けておかねば。気づかれないように見ていたはずなのにバチリと殿下と目があった気がする。いや、よくある都合のいい考えだ。
「――、この功績を称え、貴殿に此を授与する」
「はっ、ありがたき幸せに存じます」
殿下に目を奪われている間に授受は進んでおり、先生方が終わり、次に騎士団全体の授与が行われる。代表者となるのは勿論騎士団長だ。そして、騎士個々の功績を称えられる。
「レオナール・アレ」
「ハッ」
名を呼ばれ、陛下の前に出ると跪く。私の功績となったのはいち早く魔物の行動を察知して、団長に報告したことだ。そして、その上で団長に素早く王都に戻り、対策を立てるようにした方がいいと進言したことも評価された。そのまま魔物と戦うという選択肢もなかったわけではない。けれど、その時の私たちの状況は戦い続けるには厳しい状況でもあった。そのため、私はそのことも理由にあげ、団長らと話し合い、最終的には王都に戻って対策を立てることにしたのだ。勿論、戻る最中も魔物を狩って少しでも減らす努力はしたとも。中には大型の魔物も含まれていて、少しばかり厄介だったけれど。
「其方は褒賞として領地を望んだのであったな」
「はい」
「生憎と豊かな土地はない。ただ、王都より離れた北に貰い手のない小さな土地がある」
滔々と私の功績について触れた後、陛下はそのようにおっしゃられた。貰い手がないために国が所有することになっているその土地は少々魔物が厄介なのだとか。そのため、褒賞としては相応しくないだろうと陛下は考えられているようだ。そのため、別に望むものがあるかと尋ねられる。むしろ、その土地こそ、望むものだ。魔物討伐に明け暮れれば、殿下のことを思い返すこともないだろうし。
私は喜んでその土地を戴きたいと思いを告げる。その土地に住まうものが魔物に苦労しているだろう。私の力が少しでも役に立つのであれば、望むところであると。
「そうであるか。では、それで話を進めさせてもらおう」
土地を戴けることになり、私は陛下に深く頭を下げた。そして、元の席に戻ろうと顔を上げると、にこりと笑う殿下と目が合った。
「陛下、発言よろしいでしょうか」
殿下の美しい唇が可憐な声を奏でた。
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