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私は殿下に想い人がいると知った日から配属変更を届け出、希望通りの功績はあげやすいが魔物や盗賊などとのやり取りが多く命の危険が伴う討伐騎士団へと配属と至った。辺境に戻ることも考えた。しかし、そうなると父が婿を連れてきて、結婚をせっつくようになるのが目に見えたのだ。だから、功績をあげ、どこか遠い領地を賜れたらそこに引きこもろうと考えたのだ。王都から離れれば、殿下を見ることが出来なくなる、私にとって辛いものだ。けれど、その代わり彼女が誰かを想う姿を見なくてもいい。見たい、けれど、見たくない。両極端な心に私は引き裂かれそうだった。それを私は魔物などの討伐への力へと変えた。
「昔から皆に筋がいいとは言われてたけど、できるものなのねぇ」
式典の前日にそんなことを母が言う。いや、まぁ、私も思ったには思った。
討伐騎士団に配属された時は酷かったから。女だてら何ができる、体を使って癒してくれるってかなどと侮蔑もあった。私が前に所属していたのは殿下を守るための女性で構成された騎士団だったからそういうことがあるなど予想の範疇だった。辛くないということはない。辛かった、辛かったからこそ、私は父や先輩方に教わった技術を余すことなく利用した。利用し、そうして、褒美を賜ることになった。
父は母から聞かされたのか諦めた様相で、私に伯爵位を譲ると決断。領地をもらうなら地位があった方がいいとのことで、私はそれをありがたく頂戴することにした。
あの時、すでに知っていることとは思うがと前置きをして語った言葉に父は殿下違いだったことに苦笑いを零していた。
「今さら正そうなどとは思わん。お前の好きにするといい」
最初に気づいていたならば対処はしていただろうが今となってはなと父は溜息を零し、言葉を続ける。殿下への思いでこれほどまでの功績を上げてきたのだ、それを今更封じろというのは酷であるし、同時にそれを行なって優秀な騎士を失うのは惜しいと酷く残念そうに父は酒を片手に語っていた。
「その、なんだ、わからないことがあったら、聞きなさい。別に縁を切るわけでもないし、だな」
式典の前、顔を会わせた際、もごもごと口を動かし、辿々しいながらも困ったことがあれば頼ってきなさいとを述べる父。そんな、見たことのない父の姿に笑ってしまった私は悪くないだろう。
「とはいえ、くれぐれも陛下の御前で不作法をしないように頼むぞ」
「承知しております」
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