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【前章】第二話 ホームシック

1


「おら皇太子なんて嫌だぁ〜!おらこんな国嫌だぁ〜!前世に帰るだ〜♪」


こんなふざけた替え歌を日本語(どうせ他人に聞こえても内容を理解されないので)で歌うことにハマるほど、私はホームシックに陥っていた。

まさか未来にノスタルジアを抱く将来が訪れるだなんて、いったい誰が予想できたであろうか。


この国では、未だに初等教育過程に対応する教育機関が整備されていない。

上流階級の子弟の教育も、専業の家庭教師を雇ってホームティーチングを施すことが主流だ。よって通うべき学校がない。お城でぼっち。友達いない。鬱。

せいぜい侍女をバカにしてカタルシスに浸るくらいしか暇つぶしがない限界おじさんになりつつある。まぁまだ8歳なんだけどね。


前世にいた頃の悪友たちが懐かしい。

よく校舎裏で隠れて煙草吸ったなぁ〜。中坊5人だけで北海道に旅行しに行ったなぁ〜。あいつらは今どうしてるんだろう。


しかしそれ以上に不満なのが、お世辞にも食い物が美味いとは言えないことだ。

無論私には宮中専属の料理人が、腕によりをかけて毎晩ご馳走をふるってくれる。

しかしそれでも、パンは硬いし、スープはシャビシャビだし、味付けも微妙。何より食材の鮮度が悪い。


嗚呼、味噌汁が飲みたい.....カツ丼を食いたい.....炭焼き秋刀魚を.....


果たしてこの国の臣民は、どれだけ酷いものを食べているのだろう。昨今は遠い地方の火山の噴火で農作物が不況であるという。腹が食っては戦が出来ぬと言うが、腹が減るどころではなく餓死寸前なのではなかろうか?

ゲーテ曰く「希望は飢えたるもののパンである」という文章があるが、これは「飢えたるものの希望こそ美味しいパンである」に改変すべきだと思う。


2


この国には学者が多くて助かる。おかげで読む本に関しては絶えることがない。しかし前世と大して変わらない内容の本も多く、読むとがっかりしてしまうこともある。

しかもこの頭だと、読むのにやたらと時間がかかってしまう。理解するスピードが遅すぎるのだ。


一方で、たまに村上龍みたいな放蕩な小説を読みたくなったら困る。そういう本は現世では批判の対象であり、出せばたちまち総スカン。最悪筆を折らざるを得なくなる。


嗚呼自分の本棚が恋しいよ。皇太子なんて地位も名誉もいらないから、元の世界に戻してください。お願いします。



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